麺と湯気の向こうに、世の中が見える……。連載第8回は、近年ラーメンシーンで存在感を高めている「ちゃん系ラーメン」に注目。その火付け役として知られる「神田ちえちゃんラーメン」が、セブン‐イレブンで初のカップ麺として登場した。今回はその一杯を、井手隊長が実食レポートする。

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ラーメンブームの一角を担う「"ちゃん系"ラーメン」がセブン初カップ麺化!

セブン-イレブンから発売された「マルちゃん ちえちゃんラーメン 中華そば」(267.84円)は、いま首都圏のラーメンシーンで存在感を放つ「ちゃん系」の初カップ麺化として大きな注目を集めている。

  • セブン-イレブンの店頭に並ぶ、「マルちゃん ちえちゃんラーメン 中華そば」(267.84円)

    セブン-イレブンの店頭に並ぶ、「マルちゃん ちえちゃんラーメン 中華そば」(267.84円)

その原点にあるのが、2020年に神田駅のガード下に誕生した「神田ちえちゃんラーメン」だ。赤いテント、どこか昭和の大衆食堂や町中華を思わせるノスタルジックな外観。

  • "ちゃん系"ラーメンの火付け役、「神田ちえちゃんラーメン」。赤い看板が目を引く、圧倒的な存在感の店構え

    "ちゃん系"ラーメンの火付け役、「神田ちえちゃんラーメン」。赤い看板が目を引く、圧倒的な存在感の店構え

しかし実際は令和生まれの新店であり、ここを起点に「〇〇ちゃんラーメン」と名の付く店が首都圏を中心に急増した。こうしたお店は総称して「ちゃん系ラーメン」と呼ばれ、いまのラーメンブームの一角を担う存在となっている。

「ちゃん系」の特徴は明快だ。豚清湯のショッパウマなスープ。やわらかめに茹でた中太麺。そして注文ごとに切り分けるチャーシュー。シンプルな中華そばに見えて、実はエッジの立った一杯なのである。

「マルちゃん ちえちゃんラーメン 中華そば」の再現度とは?

  • 大きめサイズの容器でインパクト抜群の「マルちゃん ちえちゃんラーメン 中華そば」

    大きめサイズの容器でインパクト抜群の「マルちゃん ちえちゃんラーメン 中華そば」

そんな一杯をカップ麺でどう表現するのか。フタを開けてまず驚くのは、チャーシューの量だ。ゴロゴロと入った具材は視覚的インパクト十分。さらに麺量は85gと、一般的な縦型カップよりもしっかり多め。お湯を注いで5分。麺が太めの平打ち仕様のため、やや長めの待ち時間を経て完成する。

  • チャーシューをはじめとした具材がゴロゴロと入った、ボリューム感ある仕上がり

    チャーシューをはじめとした具材がゴロゴロと入った、ボリューム感ある仕上がり

まず大前提としてお伝えしたいのは、このカップ麺はとても美味しく良くできている。その中で、ここではちゃん系の一杯がどれだけ再現できているかを見ていきたい。

まず麺は、ふくよかでやわらかい。コシを前面に出すのではなく、あくまで柔らかめ。これはちゃん系特有のやわらかな太麺を意識した設計だろう。すすったときのほぐれ方や口当たりは本物とは異なる部分は多いものの、雰囲気は感じさせる。

  • ちゃん系特有の麺を意識した、柔らかな太麺

    ちゃん系特有の麺を意識した、柔らかな太麺

一方で、最も難しかったであろうスープ。実店舗の魅力は、豚の旨味の中に貫くしょっぱさで、清湯ならではの抜け感を伴った「ショッパウマ」にある。しかしカップ麺ではそのショッパウマの再現はやはり難しいようだ。豚のニュアンスとノスタルジックな醤油感は感じられるものの、実店舗のようなキレ味はやや控えめ。コク深く醤油が立った味わいに仕上がっており、ちゃん系らしさという点では物足りなさも残る。

また、注文ごとに切り分ける切りたてチャーシューのライブ感は当然ながら再現不可能だ。ただし、その代わりに"量"で勝負に出た構成は見事だ。存在感ある大量のチャーシュー。このボリュームで価格は267.84円。このチャーシューと85gの麺量を考えれば、かなり抑えられた価格設定と言えるだろう。

  • 麺85g、内容量111gと満足感ある一杯

    麺85g、内容量111gと満足感ある一杯

ここにこそ、ちゃん系のマインドが投影されている。安く、腹いっぱいにさせる。肩肘張らず、日常の中で気軽に食べられる一杯。その精神が、カップ麺というフォーマットの中でもしっかり息づいているのだ。

総じて言えば、完全再現とはいかない。しかし、カップ麺としての完成度は非常に高い。味のバランス、ボリューム、満足感はきちんと担保されており、再現の難しさを抱えながらも美味しいところに着地している。

改めて感じるのは、ちゃん系の凄さだ。一見するとシンプルな中華そば。いかにも市販品で再現できそうに見える。しかし実際には、そのショッパウマの塩梅、切りたてチャーシューの美味しさ、やわらか麺との一体感など、細部に宿る設計思想こそが核心であり、そこが容易にコピーできない。

まだちゃん系の店舗は全国に広がり切っているわけではない。だからこそ、実店舗に足を運んだことがない人は、この一杯から"ちゃん系とは何か"に思いを馳せてみてほしい。赤いテントの下、湯気の向こうにあるショッパウマの世界。その入口として、このカップ麺は十分に役割を果たしている。