東急電鉄とプロサッカークラブの川崎フロンターレは、2013年から「川崎の車窓から ~東急グループフェスタ~」を開催している。試合開始前のイベントとして、川崎フロンターレの本拠地、等々力陸上競技場の場外イベントスペースで実施する。サッカーと鉄道はどちらも熱いファン層を持つとはいえ、異業種だし関連性は薄いと思われる。しかし、6年も続いているというから人気の催しといえそうだ。
7月30日、今年のイベント内容が川崎フロンターレの公式サイトで発表された。開催日はサガン鳥栖戦が行われる8月15日。メインイベントは上田電鉄を引退した7200系の展示で、この日のために長野県から搬送される。7200系は元東急電鉄の電車だ。この機会に古巣に里帰りかと思ったけれども、東急電鉄によるとイベント終了後に東急電鉄に残るという話ではないそうだ。
東急電鉄7200系は1967~1972年にかけて製造された。「ダイヤモンドカット」と呼ばれた先頭車の形状が特徴で、車体長18mクラスのオールステンレス車両となる。東横線の急行をはじめ、田園都市線、大井町線、目蒲線(当時)、池上線などでも活躍した。東急電鉄から引退後は豊橋鉄道、十和田観光電鉄、上田交通(現・上田電鉄)に譲渡された。
上田電鉄に聞いたところ、イベント終了後も上田電鉄に返却されないという。7200系は5月のラストラン後に廃車されており、今回の搬出はジェイアール貨物・北陸ロジスティクスへの譲渡とのこと。7200系の今後については、現在も同型車を運行する豊橋鉄道への譲渡、あるいは解体と噂されているけれども、鉄道会社への譲渡ではなく、輸送会社への譲渡となると廃車解体が濃厚か。いずれにしても、上田電鉄7200系の姿としては「川崎の車窓から~東急グループフェスタ~」が最後のお披露目になりそうだ。
「川崎の車窓から ~東急グループフェスタ~」は、サッカーと電車・バスという珍しいコラボレーションのイベントだ。東急グループは川崎フロンターレのオフィシャルスポンサーでもあり、地元密着型クラブとして活動する川崎フロンターレと沿線の活性化をめざす東急電鉄が、ともに川崎を盛り上げようと開催している。
東急電鉄のプレスリリースをたどってみると、両者のコラボレーションの始まりは2012年12月だった。東横線武蔵小杉駅・新丸子駅の発車メロディに川崎フロンターレの応援歌が採用された。そして翌年、2013年から「川崎の車窓から ~東急グループフェスタ~」を開催している。
イベント会場はサッカーの試合が行われる等々力陸上競技場で、最寄り駅は東急東横線の新丸子駅・武蔵小杉駅、JR南武線の武蔵小杉駅・武蔵中原駅。東急田園都市線の高津駅・溝の口駅、JR南武線の武蔵溝ノ口駅からバスでも行ける。ちなみに、東急大井町線の等々力駅は最寄り駅ではないから要注意。
サッカー競技のイベントとはいえ、サッカーが主、鉄道が従という内容ではない。むしろ東急電鉄が開催するイベントとしてはかなり大きな規模といえる。2018年のイベントでは、7200系の展示の他に上田電鉄の勤務経験を持つ東急電鉄社員による電車の構造講座、7200系の陸送を追ったドキュメント映像の上映、「東急バス×川崎フロンターレ」のラッピングバス完成披露、プラレールプレイランドとプラレールジオラマ、電車運転シミュレーター操作体験、東急線大ジオラマNゲージ運転体験など、21もの企画が用意されている。グッズ販売ではプラレール車両「ザ・ロイヤルエクスプレス」を販売する。
なお、電車の見学やトークイベントなどは、当日の試合観戦チケットが必要だったり、川崎フロンターレ後援会の会員限定だったりする。この機会に鉄道ファンはサッカーファンに、サッカーファンは鉄道ファンになってほしいという期待も込められているようだ。もともと「どちらも好き」という人にとっては幸福な1日になるだろう。
2013年に初めて開催されたときは、2012年に引退した軌道検測車を展示していた。この車両も7200系を改造した電車だった。また、イベント開催を記念して5080系をラッピングした「東急電鉄×川崎フロンターレ 東急フェスタ記念号」が登場。元住吉車庫から乗車し、埼玉スタジアムの最寄駅である浦和美園駅(埼玉高速鉄道)まで「川崎フロンターレ応援ツアー」号が走った。
2014年は電車中古部品の即売会。2015年は「長津田車両工場見学」が当たる抽選会の他はグッズ販売が中心だった。2016年は鉄道好き芸能人によるトークライブ、田園都市線50周年記念写真展、大ジオラマNゲージ運転体験、運転シミュレーター体験など。2017年は長津田車庫から元住吉車庫までの臨時列車貸切ツアー、ラッピングバス製作体験、前年に引き続き大ジオラマNゲージ運転体験、運転シミュレーター体験などが行われた。
2018年の上田電鉄7200系の展示は、2013年の軌道計測車以来、6年ぶり2度目の電車実物展示となる。年々と規模が拡大し、実物の電車も登場する。この調子で発展すると、2019年以降はどんな規模になるだろう。異色の鉄道イベントとして、今後の展開が楽しみだ。