体にいいイメージがあるおかゆだが、実は……

日本人の常食である「米」。ダイエット時に最初に「制限する食べ物」のターゲットにされることの多いご飯ですが、食事制限時に減らすことが最もつらいという方々もいるかと思います。今回はこのお米の秘密に迫ってみましょう。

食事制限の標的となる米

米のカロリーは、それに含まれる脂質やタンパク質、でんぷん類(炭水化物)の量から算出されたものです。100g当たりで350kcalとかなりの高カロリー食品になるので、食事制限の矛先が真っ先に向くというのも納得でしょう。

しかし実は、お米のカロリーというのは品種はもちろん、炊き方や温度によって変化するという事実はご存じでしたか? それを知らずしてダイエットをするなんてもってのほか! ですよね。では、"ダイエットに適している米"を学んでいきましょう。

品種で変わるカロリー

まずは品種によってカロリーが変わる仕組みです。米は日本だけでなく、世界中で生産されている主要穀物です。当然、さまざまな土地に適した品種が生み出されてきています。最近はアフリカの干ばつ地帯にさえ適応する米も品種改良で生み出されています。それだけ種類があるということは、味にも差があり、味に差があるということは、栄養価も異なると言うことです。

例えばカルフォルニア米として知られる「Calrose76」は、アミロースでの分解率が78%です。それに対して、現在日本で最もおいしい品種と言われている「ミルキークイーン」は91%と、実に1割以上も分解率が違います。体内のデンプン分解酵素による分解のしやすさが違うということは、でんぷんが糖になりやすいということなので、同じ重さのデンプンでも摂取カロリーは変わるということです。

これに伴い、GI値(グリセミック・インデックス)も全く変わってきています。GI値とは食後血糖値の上昇度を示す指標のことで、食品に含まれる糖質の吸収度合いを意味します。このGI値が高いほど一気に血糖値が上昇し、脂肪合成を高めるインスリンが多く分泌されます。

そのため、GI値が低い「低GI食品」は、メタボリックシンドロームの予防・改善につながるとされています。分解率が高いほどGI値も高くなるため、同量のご飯を毎日食べるにあたって、高級米「ミルキークイーン」のほうが「太りやすい米」と言えそうです。

さらにこのGI値は、新米より古米のほうが低く、炊きたてよりも冷えたご飯のほうがさらに低くなることが知られています。ただこれを突き詰めると、「安い輸入米の古米を冷まして食べる」という極めて味気のないご飯になってしまいますが……。

おかゆに近いほど高カロリー?

炊き方によってもカロリーは変わります。これは炊くときに水分が少ないほど、米に含まれるデンプンが難消化性デキストリンに変わることで、消化に時間がかかる要素を作り出し、食物繊維分としても働くためと言えます。病気などで体が弱っている人は消化能力が衰えており、食欲がわかないというケースも多いでしょうから、おかゆのような状態で効率よくカロリーを摂取することは理にかなっているわけです。

体質で変わるカロリー変換能力

さらに近年、炭水化物の代謝は腸内細菌のバランスによって、大きく変わることが分かっています。つまり、体質によって炭水化物をどれくらいカロリーに変換するかが違うということです。特に肥満家系の場合は、炭水化物の消化能力に優れ、体の隅々までカロリーとして吸収してしまう傾向が強いようです。

これらを踏まえて、ご飯は調理法や品種を考えた上で、日頃の体重変化と照らし合わせて「自分の最適値」を見つけることが、「ダイエット道」における近道なのです。

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筆者プロフィール : くられ

『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)などがあり、2014年7月17日に新たに「薬局で買うべき薬、買ってはいけない薬 よく効く! 得する! 市販薬早わかりガイド」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓した。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」ツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。