便秘と下痢をくり返すのはなぜ?

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まずは大腸がんにスポットをあてます。大腸がんと便秘の関係は理解できても、下痢が起こる理由は少し想像しにくいのではないでしょうか。

便の通りが悪くなるために、便秘にもなり下痢にもなる

がんができて大腸の内腔が狭くなると、当然、便が通過しにくくなります。そのため便秘がちになります。その一方、便通が滞り溜まっている便の量が増えてくると、なんとか便を通過させようとする物理的な力が強くなってきます。その結果、便に含まれている水分だけが先に通過して下痢状の便となり、排泄されます。これが、大腸がんで便秘と下痢を繰り返すという症状が現れることのある理由です。

腸の動きが不安定になることで起こる

また、がんのために大腸全体の働きが低下してくることも、便秘や下痢を起こしやすくなる原因として挙げられます。加えて、便通の不調が大腸がんによるものだとわかっていない段階では、ご自身の判断で便秘薬や下痢止めを服用し、その作用と副作用が入り交ざって、便秘と下痢を繰り返すようなこともあるようです。

大腸がんで起こることがある変化

大腸がんでは、便秘や下痢などの便通異常のほかにも、次のような症状が現れることがあります。いずれも日ごろから起こりやすい症状なので、これらの有無のみで大腸がんか否かを見分けることは難しいですが、一つ言えることは、これらの症状が一時的なものでなく慢性的に続いている場合には、何らかの病気が起きているサインと考えて行動したほうが良いということです。

排便やお腹に関する症状

お腹が張る、ガスが溜まる、違和感や不快感、お腹が痛む、排便後にすっきりしない(残便感がある)、便が細くなる、排便の回数や便の状態が変化した、便に血が混ざることがあるなどは、大腸がんを含む何かしらの異常が起きている可能性があります。

その他の症状

貧血、食欲低下、吐き気、体重減少なども、大腸がんの進行とともに現れてくることがあります。なお、貧血の症状としては、立ちくらみ、めまい、動悸、倦怠感などが挙げられます。

過敏性腸症候群との違い

ここまで、大腸がんを前提として便通異常の話を進めてきました。しかしもちろんのこと、大腸がん以外にも、下痢や便秘を繰り返す病気があり、その代表的なものとして、「過敏性腸症候群」という病気があります。

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群は「機能性消化管疾患」と呼ばれる病気の一つです。「機能性」とは、組織に器質的な異常はない(一般的な検査で原因を特定できない)にもかかわらず、機能(働き)が乱れるという意味の医学用語です。つまり過敏性腸症候群は、検査では異常が特定できない腸の働きの乱れが起きている状態で、ストレスが病状に関係していることが多いようです。

具体的な症状として下痢や便秘を繰り返すことが多く、大腸がんで見られることのある症状と重なります。ただ、大腸がんが加齢とともに増加するのに対して、過敏性腸症候群は比較的若い人に多いことが、相違点として挙げられます。

過敏性腸症候群の下痢・便秘と大腸がんに伴う便秘・下痢

過敏性腸症候群での便通の症状はストレスの状態などによって、調子の良い日と悪い日の差が割とはっきりしています。それに対して大腸がんの便通症状はそのような変動が比較的少なく、がんの進行とともに徐々に悪化していくことが多いようです。また、他の疾患を合併しない限り過敏性腸症候群のみで血便がでることは通常ありません。

しかし、過敏性腸症候群の患者さんにも当然ながら、大腸がんが発生することがあります。過敏性腸症候群のために下痢や便秘と長年つきあっている人でも、もし排便習慣が変化してきたら大腸がんを疑ってみる必要があります。

「様子見していいケース」と「注意が必要なケース」これはどっち?

下痢や便秘が大腸がんのサインの可能性があるといっても、下痢も便秘もよく起こる症状なので、いちいち心配していたら気疲れしてしまいます。そこで、大腸がんの可能性が高いのかそうでないのかを見分ける目安となりそうな情報を紹介します。

短期間で回復した場合

下痢や便秘が起きても短期間で治った場合は一時的な体調不良の可能性があります。頻繁に繰り返したりしない限り、過度の心配はないでしょう。

長期間続いたり、変化したりする場合

一方、下痢または便秘が長期間続く場合は要注意。また、便が細くなったり、血液が混ざったりといった変化や、お腹の張り、腹痛なども起きている場合も、やはり要注意。医療機関を受診してきちんと原因を確認してもらってください。

便通の変化以外に気になることがある場合

大腸がんでは便通の異常やお腹の症状のほかに、貧血や体重減少などが現れることがあります。また、血縁者に大腸がんになった人がいる人や、大腸がんの検診を最近受けていない人なども、下痢や便秘などの症状をやや慎重に考えたほうがよいでしょう。

便通の乱れを“体質のせい”と片付けない

下痢がちな人や便秘がちな人は、少なからずいらっしゃいます。そのような人の中には、便通の乱れを「体質のせい」だと思い込んで、正常と異常の違いに気づきにくくなってしまっていることがあるようです。今回お話ししたことが思い当たるのであれば、「次の検診まで待とう」とか「時間に余裕ができたら考えよう」などと言わずに、医療機関受診をToDoリストの上位に入れてください。

大腸がんの初期症状について、消化器科の専門医に聞いてみました。

大腸の主な役割は内容物から水分を吸収して便を作り体外へ排出させることで、便が肛門に近づくにつれ徐々に固まってきます。大腸がんにより大腸の内腔が狭くなると、固まった便は通過しにくくなり便秘になります。

その一方で、なんとか便を通過させようと腸の動きが亢進し、その結果便に含まれている水分だけが先に通過して下痢状の便となり排泄されます。これが、大腸がんで便秘と下痢を繰り返すという症状が現れることのある理由です。大腸がんでも、便が固まってきた左側の大腸、特にS状結腸や直腸のがんで認められることが多い症状です。

同様の症状を示す病気に過敏性腸症候群があります。その原因は多岐にわたり、腸が敏感になったり、脳と腸の連絡の乱れ、腸の動きや腸内細菌のバランスの崩れで発症すると考えられています。特徴は大腸内視鏡などの検査で明らかな異常がないことです。よって、腸の粘膜が傷つくことで便に血液が混入するので、過敏性腸症候群では原則便に血液が混じることはありません。

便秘と下痢を繰り返す症状が長く持続する場合、あるいは血便や体重減少、貧血症状などが同時に認められる場合には早めに医療機関を受診して検査を受けてください。

東 玲治(ひがし れいじ)先生

一宮西病院 消化器内科部長、消化器内視鏡センター長
資格:日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医