この6月より、大企業を対象に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称:労働施策総合推進法)、いわゆる「パワハラ防止法」が施行された(中小企業は2022年4月1日から)。

今回のパワハラ防止法では、パワハラの定義を「優先的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」の3つの要件をすべて満たすものとし、さらにパワハラの6類型を定めている。また同法により、企業にはパワハラ防止に努めることが義務付けられる。

  • 職場におけるパワハラ、最も多い加害者は?

    職場におけるパワハラ、最も多い加害者は?

ただ、今までは被害を受けながら、パワハラの定義の曖昧さや、パワハラの存在そのものがあまり一般化されていなかったために声を上げることが叶わなかった、という人も少なからず存在するのではないだろうか。そこで今回はマイナビニュース会員506人にアンケートを実施し、「職場でパワハラを受けたことはあるか」などを聞いた。

  • あなたは職場でパワハラを受けたことはありますか?

    あなたは職場でパワハラを受けたことはありますか?

Q.あなたは職場でパワハラを受けたことはありますか?

「はい」(67.0%)
「いいえ」(33.0%)

  • あなたは職場でパワハラを受けたことはありますか?

    誰からパワハラを受けましたか?

Q.誰からパワハラを受けましたか?

1位「上司」(76.7%)
2位「年上の社員・先輩」(14.7%)
3位「同僚・同世代の社員」(4.1%)
4位「年下の社員・後輩」(3.2%)
5位「部下」(0.6%)
5位「その他」(0.6%)

  • 誰からパワハラを受けましたか?

    どのようなパワハラを受けましたか?

Q.どのようなパワハラを受けましたか?(複数選択可)

1位「精神的な攻撃(皮肉を言う、みんなの前で叱責するなど)」(58.7%)
2位「過大な要求(残業や休日出勤を強要するなど)」(40.1%)
3位「過小な要求(能力とかけ離れた仕事をさせられる、仕事を与えないなど)」(14.7%)
4位「人間関係からの切り離し(無視する、飲み会に誘わないなど)」(14.5%)
5位「個の侵害(プライベートな情報を聞き出す、個人のSNSで接触してくるなど)」(8.0%)
6位「身体的な攻撃(突き飛ばす、殴るなど)」(7.4%)
7位「その他」(3.5%)

Q.具体的にどのようなパワハラをされたか教えてください

■「上司から」

・「自分が休みの日を狙って、会食したり飲みに行ったりしている」(45歳男性/フードビジネス/事務・企画・経営関連)
・「会議やミーティングなど多数の人たちが集まる席で、わざわざ私の失敗談や人格否定とも思える発言を幾度となく繰り返す」(56歳男性/専門商社/事務・企画・経営関連)
・「時間外勤務をすることを叱責し、時間外手当の支給申請をしないように言われた(つまり残業するならサビ残しろと)」(38歳男性/官公庁/公共サービス関連)
・「言葉巧みに嫌みを言う。お昼の休憩時間に弁当を食べていたら、今すぐこれをやれと言われて、お昼を食べられなかった。トイレに行こうとしたら、『逃げるのか』と言われた。とにかくいろいろ」(45歳男性/その他電気・電子関連/メカトロ関連技術職)
・「取引先の決定に際し、問題のある会社を避けるよう提言したところ、上司と癒着のある会社だったため、子どもの具合が悪い時にも帰宅を拒まれたり、電話の仕方が悪いと会議の場でみんなの前で伝えられたりと、嫌がらせを受けた」(58歳女性/官公庁/事務・企画・経営関連)
・「寝ている時もしつこい電話。電話に出ないと社内で1時間近く、部下の前で叱責。上司の上司に、私について嘘の情報を話し、私を孤立させた。『お前は生きている価値がない』とまで言われた。毎日毎日そのようなことが続いた」(39歳男性/サービス/その他・専業主婦等)
・「皆の前では言わない、2人になった時に無茶な業務内容を押し付けてくる。できなければ叱責。コンプライアンス部もあるので、皆の前では言わないのでしょう。あとはグループLINEなどでも証拠になるようなパワハラはしない。その上司は、上長には部下の業績は自分の手柄のように話し、自分の出世の手段に使う。本当にやり切れない、早く異動してほしい。私はボイスレコーダーを買いました」(46歳女性/サービス/事務・企画・経営関連)

■「年上の社員・先輩から」

・「悪口を言ったり、仲の良い同期たちから引き離そうとしたり、喧嘩ごしの口調で返事したり、等々」(24歳女性/繊維・アパレル/事務・企画・経営関連)
・「社員の退職による担当業務引き継ぎの際に、先輩社員が『自分は今の担当分で手いっぱいだから、これ以上業務は増やせない』と言い始め、業務の引き継ぎを拒否して全部押し付けられそうになりました」(53歳女性/サービス/その他・専業主婦等)
・「お局様からで、部署にお気に入りと嫌いな人とを決める。嫌いな人はだいたい新人。階段は狭いのに、無理矢理追い抜く。噂を流す。態度がキツい。弱い人は耐えられない」(46歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「年上の先輩に、仕事のやり方をわざと間違う方法で指示され、失敗。上司から注意され先輩がバックアップし、自分の株を上げてみんなから注目された」(52歳男性/輸送用機器/営業関連)
・「泥酔して深夜残業中に数十回殴打されたり、社内のPCにウイルスを仕込んでいると噂を流されたり」(57歳男性/医療・福祉・介護サービス/専門サービス関連)
・「年齢は一つ年下だったけど、先輩社員でした。同じ高校出身ということで最初の3日間だけは普通でしたけど、『コイツ使えない奴だ』と彼自身で判断すると無視するようになり。独り言で聞こえるように嫌みを言い出したり、機嫌が悪いと顔を真っ赤にして怒鳴ってきたりしました。俺だけでなく『使えない奴だ』となると、彼より立場が下の人には異常な言動をします」(44歳男性/その他/技能工・運輸・設備関連)

■「同僚・同世代の社員から」

・「上司に告げ口されたと勘違いして、無視された」(69歳男性/サービス/事務・企画・経営関連)
・「仕事の成果が上がらないことに文句を言うばかりで、協力する気持ちがない」(44歳男性/ソフトウェア・情報処理/IT関連技術職)
・「仕事ができない同期から、同類扱いされたこと。いつもその人の仕事が遅いせいで、仕事が私のところに舞い込んでくるので困っているのに。少しは自分の能力のなさに気づいてくれないものかと、頭を抱えています」(43歳女性/百貨店/販売・サービス関連)

■「年下の社員・後輩から」

・「罵倒まではいかないが、仕事に関係ないこともネチネチ言われた」(40歳男性/食品/営業関連)
・「ここに書けないような言葉の暴力を受けたことがある」(57歳男性/専門商社/営業関連)

■「その他」

・「取引先から: メールによる執拗な批判、嫌がらせ」(55歳男性/サービス/IT関連技術職)
・「客から: 自分が悪いのに私のせいにして、坊主にして土下座しに来いと言われた」(50歳男性/ソフトウェア・情報処理/IT関連技術職)

■総評

調査の結果、職場でパワハラを受けたことがある人は全体の67.0%と、3人に2人はパワハラ経験があることがわかった。ここで男女別に見てみると、男性ではパワハラ経験者が63.1%だったのに対して、女性では76.9%と8割近い数字となった。女性の方が、よりパワハラ被害に遭いやすい傾向が見て取れる。

誰からパワハラを受けたかを聞くと、76.7%を集めた「上司」が圧倒的多数で1位となった。以下、2位「年上の社員・先輩」(14.7%)、3位「同僚・同世代の社員」(4.1%)、4位「年下の社員・後輩」(3.2%)、5位「部下」「その他」(各0.6%)と続く。パワハラという行為の特性上、やはり「上司」からの仕打ちが主流であることが確認できる。

次に、どのようなパワハラを受けたかを尋ねた(複数選択可)。なお、ここでの選択肢は、パワハラ防止法におけるパワハラの6つの類型に準拠している。結果は、トップが6割近くの人が挙げた「精神的な攻撃」(58.7%)、続いて2位が「過大な要求」(40.1%)となり、この2つが突出して多い。以下、3位「過小な要求」(14.7%)、4位「人間関係からの切り離し」(14.5%)、5位「個の侵害」(8.0%)と続くが、突き飛ばす、殴るなどの「身体的な攻撃」(7.4%)にも一定数の被害者がいる結果となり、ここは気になるところだ。

具体的にどのようなパワハラをされたかについては、実に様々な報告が寄せられている。詳しくは本文で紹介している個々のエピソードに譲るが、一口に"パワハラ"といっても実に多様な手法・やり口があることがわかる。

また今回、綴られたコメントがとても長文かつ詳細ものが多く、そこに込められた思いの熱量の大きさを感じさせられる。理不尽なパワハラに遭い、耐え、苦しみもがいてきた経験を吐露する内容に、パワハラの実態の深刻さを思わずにはいられない。また、これまでは「パワハラ」と「業務の適正な範囲」との区別が曖昧で、大きな声が上げづらかったということも大きな要因となっているのだろう。

冒頭で触れたように、"パワハラ防止法"ではパワーハラスメントの定義や要件が整理され、類型の提示もなされた。曖昧だった"職場におけるパワハラ"の概念がより明確になり、事前にトラブルを回避したり、様々なパワハラ被害に対処したりしやすくなる。経営者・労働者共に同法への理解を深め、効果的に運用されることを期待したい。

調査時期: 2020年6月13日
調査対象: マイナビニュース会員
調査数: 506人
調査方法: インターネットログイン式アンケート

※写真と本文は関係ありません