かつての大衆酒場では、牛や豚の生レバー刺身が当たり前のように提供されていました。

その安全性が問題となって法律で提供が禁止されて以来、低温調理で食感を再現する「冷製レバー」や、火を通したレバーをレバ刺し風の味つけで食べる「レバテキ」などのメニューを目にすることが多くなりました。

  • とある酒場のレバテキ的なメニュー

ちなみにレバテキとは「レバーステーキ」の略なので、すべてのお店がレバ刺し風の味つけを意識しているというわけではありません。けれども、そういえばスーパーでレバーを買ってきて、焼肉のタレで食べたり、レバニラなどの炒めものを作ることはあるけれど、レバ刺し風の味つけをして食べたことはない気がする。簡単なのになんでだろう。

あ、さっきから“レバ刺し風の味つけ”を連呼してますが、つまりは「ごま油×塩」のこと。最強ですよね。なんにつけてもうまい。

自宅で低温調理はなかなかにハードルが高いですが、レバテキは、それっぽいものなら作れそう。これ、意外に盲点だったのでは!?

牛乳ブライン液でくさみなくジューシーに

  • 豚レバーを買ってきました

焼肉用のコーナーによく並んでいる、お手頃でありがたい食材ですよね。

ところで今回、このレバーを焼きはじめる前に、下ごしらえに関するひとつの検証をしてみたいと思っています。面倒な方はまぁ、すっ飛ばしちゃってもいいと思いますが、より美味しく食べるため、そして個人的な興味のため、ちょっとだけお付き合いください。

肉類を調理する際、事前に漬け込んでおくことで柔らかくジューシーに仕上がる「ブライン液」というものがあります。作りかたは簡単で、水100mlに、塩5gと砂糖5gを加えてよく混ぜるだけ。分量は肉の大きさによって調整しましょう。

漬け込み時間などの詳細は、ブライン液で検索するとたくさん情報が出てくるので、すいませんここでは割愛させてください。ちなみに今回のような薄切り肉であれば、30分から小一時間もつけておけばじゅうぶんな効果があるでしょう。

で、試してみたいのは以下。まずは流水などで優しく洗ったレバーを、

1)そのまま
2)牛乳に漬ける
3)ブライン液に漬ける
4)ブライン液の水を牛乳に置き換えたものに漬ける

の4種類の方法で下ごしらえし、どれがいちばん美味しくなるかを比較してみようというわけなんです。牛乳に漬けるのもレバーのくさみとりの定番処理ですが、それとブライン液を融合してしたら最強なのでは!? という仮説のもと。

  • こんなふうに準備して

  • シンプルに焼いてみる

写真は上から右回りに、ブライン、牛乳ブライン、そのまま、牛乳だけ。焼きあがったら、塩少々の味つけのみで食べてみましょう。

まずはそのまま。もちろん美味しく食べられますが、レバー独特の香りは強めで、食感も若干硬い。子どものころに、ちょっと苦手かも……と感じたレバーの味を思い出すというか。

牛乳だけに漬けたものは、香りがまろやかになり、食感も柔らかい。ちょっと面倒でもこれだけはやったほうがだんぜん良さそうです。

そしてブライン液。さすが食感がぐんと柔らかくなって、塩と砂糖由来の、強すぎないながらほんのりとした下味もついて、めちゃくちゃ美味しいです。

最後に牛乳ブライン液。おぉ、これは狙いどおり、牛乳とブライン液の相乗効果が生まれてる! 香りからは独特のクセが消え、食感はふわりと柔らかく、なんだか肉の甘みも強まっている気がします。

どれだけ手間をかけるかは気持ちや時間の余裕次第ですが、個人的には牛乳ブライン液漬けがおすすめ!

さて、本題に戻りましょう。

まずは下処理したレバーを、焼肉用のままよりはおつまみ向けになるので、食べやすい大きさにカットしましょう。

  • なるべく重なりがないように

あまり強火で火を通しすぎてしまうとせっかくのレバーが硬くなってしまうので、火加減はいちばん弱火で。

あわてずゆっくり見守っていると、徐々に肉の底から上面にかけて、火が通って色が変わってゆくのがわかるでしょう。そうしたら肉をひとつひとつ裏返します。

  • このくらい

たまに確認し、裏面にも生の部分がなくなればOK。よぶんな油などが出るようであれば、焼きながらキッチンペーパーで拭き取るのも有効かと。

  • 焼きあがり

これで準備完了なんですが、もしもメイラード反応、つまり表面に焼き目があったほうが嬉しいなという方は、ここで強火にして数十秒ほど仕上げ焼きをしてください。肉が硬くなりすぎないように、あくまで手早く(まぁ好みによりますが)。

そうしたら焼けたレバーをどさっとお皿に盛って、全体にごま油と塩をふりかけ、用意しておいた刻みねぎを好きなだけかければ完成。レバーにうっすらと下味がついているので、塩の量は少し控えめがいいかもしれません。あとで足せるし。

  • もううまそう

  • 完成! 「刻みレバテキ」

正直に言えば、焼きとん屋さんの炭火で絶妙に焼きあげられたレバテキには、そりゃあかないません。けれども、柔らかい焼きレバーに、ごま油、塩、ねぎ! そして好みで、にんにく、しょうが、七味! と、組み合わせが完全に大衆酒場のそれなので、自宅にいながらにしてかなりの酒場気分が味わえ、驚くほどにお酒がすすみます。そうか、家でもやって良かったんだ、この味つけ!

  • 薬味をお好みで加えても

ビールやチューハイをはじめ、どんなお酒にも合いますが、あえて瓶のホッピーを買ってきて、自宅でこいつと合わせてみるのも楽しいですよ。

作りかた(ひとりぶん)

【材料】

・豚レバー:好きなだけ
・ねぎ:好きなだけ
・ごま油:適量
・塩:適量
※すべての分量は目安です。お好みで調整してください。

【作りかた】

1.豚レバーを流水などでていねいに洗う。
2.余裕があれば、記事中に書いたお好みの下ごしらえをする。
3.レバーの水気をキッチンペーパーなどで拭き取り、食べやすい大きさにカットする。
4.薄く油をひいたフライパンで、弱火で両面を焼く。
5.その間に、長ねぎを好きなだけ刻んでおく。
6.レバーを皿に盛り、ごま油、塩、刻みねぎをかける。
7.お好みの薬味を添える。