新型コロナウイルスとの長い戦いの中で、ステイホーム(うちにいよう)から新しい日常(新しい生活様式)へ、社会は移行しつつあります。

テレワーク、オンライン会議、オンライン授業、デリバリーなどが、期せずして危機管理の観点から急速に拡大しました。これは、本来目指すべきデジタルトランスフォーメーション(DX)が一気呵成に進んだとも言えます。この危機を「禍を転じて福となす」と考え、お一人おひとりが困難に打ち勝ってほしいと思います。

私のどん底は取材中の小型飛行機墜落事故で夫が亡くなったことです。その時、6歳の長男と生後11ケ月の次男が遺され、とにかく、この息子たちを、生き抜く力を持った「自立した人間」に育てることを目標に、これまでやってきました。

結果として、2人とも東大に現役合格し、さらに、それぞれの道を極めてくれていますが、そのベースは、10歳までに、「自ら学ぶ子ども」に導くことができたからです。その子育てのポイントをお伝えします。

  • 子どもが自発的に学ぶコツは?

子どもが得意としているものを見極め、伸ばす

コロナ禍の中、お子さんと向き合う時間が圧倒的に増えました。子どもの好きなこと、集中できること、得意なこと、を発見できる大きなチャンスです。この時間を大切に、いろいろなことを一緒にトライして、子どもの能力を最大限に引き出し、伸ばしてあげて下さい。

保育園や幼稚園や学校に通えず、不安になるお子さんも多いかと思います。だからこそ、そばにいる親が、笑顔で包容力を持って、子どもにじっくり関わってください。

毎日、最低10分でもかまいません。「この時間は子どもに集中する」と決めたら、とにかく子どもだけに集中して一緒に遊びながら、学びの機会を創出してください。絵本を読み聞かせたり、一緒にブロックを組み立てたり、お絵描きをしながら、「この子が一番興味を抱いているものは何だろう?」と真剣に観察してほしいのです。

子育ては一生続くものではありません。子どもが成長すれば、親としての関わり方も変わります。大事なのは「子どもが自分で判断・選択できるようになるまでの期間、親がどれだけ全力で向きあえるか」なのです。多少前後しますが、子どもが10歳になるまでを目安に全力で向きあうように心がけましょう。

もちろん、夢中になるべきことは勉強だけとは限りません。絵を描く、工作をする、体操をする、歌う、踊る、料理をつくる、片付けをする、簡単なプログラミングをする、eスポーツをする、ゲームをする、など、お子さんが自ら考え、行動することが大事。

親が忍耐強く、子どもが得意なことを見つけられるように、できる限り環境を整えてあげ、そして上手にできたことをたくさん褒めてください。親に褒められた、認められた、愛されたという記憶が、ストレス耐性が強く、自己管理ができ、柔軟で人間力の高い人格を形成します。

東大合格が目標ではない

東大合格が、始めからの目標でなくて大丈夫です。「自らやるべきことに集中でき、学び考えることができる」そういう基礎能力を幼い頃から身に付けさせることが重要です。その積み重ねが、のちに偏差値の高い大学を受験突破する力になります。

我が家の場合、外で元気よく走り回るというよりは家でじっと本や図鑑を見たりするのが好きな子どもたちでした。「国旗の絵本」では、すぐに全ての国の国旗を覚え、「折り紙の本」では難しい折り方をクリアし、戦隊シリーズのロボットの玩具も設計図どおり組み立てることができました。

そうしたことで、私は「この子は、"何かを学ぶことが好き"で、なかでも、"何かを読み解くことを得意"としているのではないか」と思ったことがスタートでした。

そこからは多くの本やレゴブロックを用意するなど、子どもたちが好きなことである、"学べる環境"をできる限り整えるようにし、その後の学校選び、お稽古選び、塾選びなども真剣に取り組みました。

飽きずにずっと絵を描き続けている子には、画用紙やいろいろな種類の色鉛筆などを与える。いつでも歌って踊っているような子には「落ち着きなさい」と言ったりせずに、「上手だね、もっと歌ってみせて」と表現の場を与える。ゲームが好きで、どんなゲームでも周りを負かしてしまうような子であれば「ゲームをしたらダメ」と言ったりせずに、どんどんやらせてみる。

これから先、ますます「学力がすべて」という社会ではなくなってくるでしょう。成功というロールモデルも多様化しています。

大切なのは、その子の能力が一番発揮される「何か」を親が見つけてあげ、その能力が伸ばせるような環境づくりを行うこと。そうすると、子どもは「自ら学ぶ」ことを楽しいと思い、自立した人間に成長していくのです。

また、本人の好きなこと、得意なことをある程度極めた子どもは、自己肯定感が強く、他の領域、例えば大学受験などに挑戦する際にも集中力を高めて良い結果を出します。

今後、オンライン学習が増加し、9月入学なども検討され、教育システムには大きな変革が起こりますが、どんな状況や条件でも「自ら学ぶ子ども」は即応性があって、強く、伸びていきます。

親と始めるオンライン学習は成長するチャンス

新型コロナウィルス対策として、全国の学校が休校を余儀なくされたことを受けで、パソコン1人1台やオンライン学習の著作権利用が許諾なしで使用できるという政策が進み、教育ICT化が加速化しました。東京都も学習用パソコン等が家庭にない児童・生徒に向けて緊急で端末を貸し出し、通信料などを支援します。

ある小学校低学年のお母さんからは、学校から動画のURLとパスワードが送られてきても、子どもだけでは何もできないからつきっきりになって手間がかかる、との感想がありましたが、発想の転換をお願いしたいです。

デジタルテクノロジーを自然に使いこなせる子どもに育てることはこれからの時代の当たり前。最初はオンライン学習のやり方が分からない子どもも、親が丁寧に対話しながら教えれば、すぐに親以上に上手に対応できるようになります。

さらに、デジタルの世界に大きな興味を持って、集中して課題を仕上げる子どもも多いです。導入時に親がしっかりと向き合い、教え、褒め、子どもの好きなこと、集中できること、得意なことのひとつにしてあげましょう。

変化はチャンスです。ポジティブにとらえ、子どもも親も笑顔で対話を重ね前へ前へ進んで下さい。