クレジットカードは、「一般」「ゴールド」「プラチナ」といったランク分けがされているが、同じランクでも年会費はバラバラだ。例えばゴールドカードは年会費1万円が標準的とされるが、2,000円で持てるものもあれば、3万円を超えるものもあり、サービス内容も大きく異なる。ランクによってある程度の目安こそあるものの、ゴールドやプラチナといった呼び名を鵜呑みにして、サービス内容をあまり調べずに申し込むと、期待はずれに終わってしまうこともある。

  • 現在持っているカードや、これから申し込もうと思っているカードの年会費は、果たして適切なものだろうか?

では、どんなサービスが付帯していれば適切な年会費といえるのだろうか。基本的にサービス内容は年会費に比例するので、今回は年会費別の標準的なスペックと主な特徴を紹介しよう。あくまで一般的な例なので実際には例外もあるが、申し込みを検討しているカードが標準的スペックを下回っている場合は、他にもっといい選択肢がある可能性が高い。逆に、標準的スペックを上回っている場合でも、目立たないところでサービスが削られていることもある。カード選びで失敗しないためには、年会費の根拠を理解しておくことが大切だ。

年会費無料

年会費完全無料のカードには、1%以上の高いポイント還元率で使えるものもあるが、旅行傷害保険やショッピング保険は付帯していない場合がほとんど。逆に保険を付帯したカードの場合、ポイント還元率は低くなることが多い。

そのなかでも「楽天カード」「リクルートカード」「REX CARD(レックスカード)」などは、ポイント還元率と付帯保険を高い次元で両立している優良カードだといえる。年会費無料のカードを検討する際は、これらのカードと比較して選ぶといいだろう。

年会費1,000円前後

大手カード会社の一般カードは、ほとんどが年会費1,000円前後。ただし、WEB明細や年間利用額などの条件を満たすと、年会費無料になる場合も多い。ポイント還元率は0.5%が基本で、年間利用額に応じて1.5~2倍程度までポイント還元率がアップ。旅行傷害保険は海外最高2,000万円、国内最高1,000万円、ショッピング保険は年間最高50〜100万円を補償というスペックが標準的だ。

しかし、この価格帯のカードは、年会費無料カードと比べると見劣りする場合が多い。標準的スペック以外の部分で、年会費無料カードにはない特典を見つけられないのであれば、あえて持つ必要性は低いだろう。

年会費3,000円前後

年会費3,000円前後の一般カードは、年会費1,000円前後のものとスペック的には変わらないが、何か+αの機能を持っている場合が多い。その+αが年会費に相応しいか見極めることが大切だ。

一方でこの価格帯は、格安系のゴールドカードも多い。格安系ゴールドは、年会費1万円前後の標準的なゴールドと比べて、何かの機能が大きく削られていることが特徴。例えば、利用できる空港ラウンジの数が少なかったり、付帯保険の内容が一般カードと大差なかったりなどが挙げられる。ゴールドカードのなかでも特定の機能さえ使えればいいという人や、標準的なゴールドカードの機能を使いこなす自信がない人などは、この価格帯から選ぶといいだろう。

年会費5,000円前後

年会費4,000〜7,000円あたりもゴールドカードが多く発行されている価格帯だが、こちらは年会費1万円前後のゴールドと比べて、まんべんなくスペックが見劣りするものが多い。旅行傷害保険は最高3,000〜5,000万円程度、ショッピング保険は年間最高100〜200万円程度の補償で、ラウンジが利用できる空港の数は20前後が目安となる。

ひと通りゴールドカードの機能は使いたいが、少しでも年会費は安く抑えたいと考えている人は、この価格帯から探すといい。年会費1万円のゴールドと比べるとコスパにすぐれたカードも多く、「エポスゴールドカード」や「NTTグループカードゴールド」など、条件を満たせば年会費無料で持てるカードもある。

年会費1万円前後

ゴールドカードの多くは、年会費が税別1万円に設定されている。標準的なスペックとしては、旅行傷害保険は最高5,000万〜1億円が補償され、家族特約付き。ショッピング保険は最高200〜500万円を補償。国内28空港のラウンジが利用でき、カードによってはハワイや韓国の空港ラウンジも利用可能となる。家族カードも1枚は年会費無料になる場合が多い。

これに加えて独自のサービスが使えるカードも多いが、これ以外に何も特徴がないにもかかわらず、年会費が1万円に設定されているカードも少なくない。この価格帯のゴールドカードを選ぶ際は、標準的スペックを満たしていることは当然として、さらにどんな特典があるのかを比較基準として考えるべきだ。

年会費1万5,000円前後

年会費が1万5,000円前後のゴールドカードは、年会費1万円前後のゴールドとスペックは大差ないものの、何か特徴的なサービスが利用できる場合が多い。前述した年会費1,000円前後と3,000円前後の一般カードの関係に近いものがあるが、そのサービスが差額分の年会費に相応しいか見極めてから申し込もう。

年会費2万円前後

年会費2万円前後は、格安系プラチナカードの価格帯となる。旅行傷害保険は最高1億円、ショッピング保険は最高300〜500万円を補償。24時間年中無休のコンシェルジュや、国内外の主要空港でラウンジが使えるサービス、対象のレストランを2名以上で利用すると1名分が無料になる優待などが利用できる。

年会費3万円前後

年会費3万円前後のプラチナカードは、スペックとしては前述した格安系プラチナと大差ないが、さらに独自の特典を利用できる場合が多い。ただし、独自の特典は必ずしも気軽に使えるものばかりではないため、利用機会がないのであれば、おとなしく年会費2万円前後のプラチナを選んだほうが無難だろう。

年会費5万円以上

年会費5万円以上のカードは数えるほどしか発行されておらず、招待制となっているものも多い。こちらもスペック自体は格安系プラチナと大差ないが、独自の優待や特典が数多く用意されており、ステータス性も高いことが特徴。特にコンシェルジュサービスは格安系と比べて質が高いと言われているが、人対人のサービスで相性もあるため好みは分かれるだろう。

年会費5万円台のゾーンでは、「JCB ザ・クラス」「三井住友プラチナカード」「LUXURY CARD Mastercard Titanium Card(ラグジュアリーカード マスターカード チタニウムカード)」などが代表的で、「ダイナースクラブ プレミアムカード」やアメリカン・エキスプレスの「プラチナ・カード」などは年会費10万円以上。さらにその上には、“ブラックカード”として知られるアメリカン・エキスプレスの「センチュリオン・カード」が発行されている。

以上、大雑把な分類ではあるが、これを基準にすれば、なぜその金額に年会費が設定されているのか、理由が見えてくるだろう。自分が持っているカード、これから申し込もうと思っているカードが、年会費に見合ったサービスを備えているかの参考にしてほしい。

(※クレジットカードの用語などは以下を参照)

『シーンで選ぶクレジットカード活用術 (1) 最低限知っておいてほしい基礎知識』

※本記事で紹介したサービス内容は、消費税率8%を前提とした更新日時点の情報です。ポイント価値は編集部にて算出。利用方法によって上下する場合があります。また、各サービスには一部対象外となるケースがあります。ご利用の際は公式サイトなどで最新の情報をご確認ください。

■ 筆者プロフィール: タナカヒロシ(ライター・編集者)

普段は音楽やエンタメ関係の仕事が多いが、過去に勤めていた会社の都合でクレジットカード本を作ったことをきっかけに、クレジットカード、電子マネー、ポイントなどに詳しくなる。以降、定期的にクレジットカードのムック本を編集・執筆。3月8日発売の『最強クレジットカードガイド2017 本当にトクするカードの選び方・使い方=写真=』(角川SSCムック)では、編集統括および記事の大部分を執筆している。