海外でクレジットカード払いをすると、どのように日本円に換算されるかご存知だろうか? 実はこの1年ほどで、レート換算時に発生する海外事務手数料を値上げするカード会社が続出している。

今回は各社の海外事務手数料をまとめたので、この夏に海外旅行を予定している人などは、ぜひ参考にしてほしい。

  • 各カード会社の海外事務手数料を把握しておこう

基準レートに海外事務手数料が加算される

まずはレート換算の方法についておさらいしておきたい。海外でカード払いをした際は、VisaやMastercardなど各国際ブランドが定める基準レートに対して、カード発行会社が定める海外事務手数料を加算した金額が実際の支払い額となる。この海外事務手数料はカード会社によって名称が異なり、事務処理コスト、外貨取扱手数料などと呼ばれることもあるが、どれも同種のものである。

例えば、利用した国際ブランドが定めるレートが1米ドル=100円で、海外事務手数料が2%だった場合、100米ドルの買物は日本円で1万200円の支払いとなる。多くの場合、これに対してポイントが貯まるため、例えばポイント還元率が1%のカードであれば、102円相当のポイントが貯まる。つまり実質的な支払い額は1万98円と考えていいだろう。

なお、為替レートは日々変動している。レート換算が行われるタイミングは、各国際ブランドの決済センターで支払い処理が行われた日となるため、必ずしもカードを利用した日のレートが適用されるとは限らない。

最近では免税店などを中心に、その場でレートが確定して日本円で支払えるDCC(Dynamic Currency Conversion)決済を選べる場合も増えているが、現地通貨で支払った場合より割高になる可能性もある。DCCを利用する際は、現地通貨払いと比較できる状態にしておいたほうがいいだろう。

実質的な支払い額は3つの要素で決まる

上記の通り、海外でカード払いをした際の実質的な支払い額は、「基準レート」「海外事務手数料」「ポイント還元率」の3つの要素で決まる。基準レートは国際ブランドごとに算出方法が異なり、Mastercardが得な日もあれば、JCBが得な日もあるなど、どの国際ブランドがいいと一概に言えるものではない。ただし、アメリカン・エキスプレスとダイナースクラブに関しては、レートは公開されていないため、実際に使用しなければわからない。

試しに数日間、Visa、Mastercard、JCB、銀聯(ぎんれん)の米ドルのレートを確認してみたが、国際ブランド間の差は最大でも1米ドルあたり0.2円程度だった。つまり100ドルの買物をしても、20円しか違わないということである。この差は時期によって、さらに通貨によっても違うが、利用者がコントロールできるものではないので、あまり気にしないほうがいいだろう。

それよりも明確に違いが出るのが、海外事務手数料とポイント還元率だ。海外事務手数料は各カード会社が国際ブランドごとに一律で設定している。そのため同じ国際ブランドであれば、カード会社の違いで明確に差が出る。以下に主要なカード会社の海外事務手数料をまとめたので、これと手持ちのカードのポイント還元率を合計して、海外で利用するカードを選ぶといいだろう。

  • 主なカード会社の海外事務手数料
    ※2019年7月1日時点、消費税8%を含む
    ※キャッシング利用、デビットカードやプリペイドカードは除く

キャッシング利用に関しては、基本的に海外事務手数料は不要となるが、別途金利やATM利用料などが発生する。これに関しては説明が複雑になるので、今回はショッピング利用についてのみ言及する。

表を見てわかる通り、VisaとMastercardに関しては、ほとんどのカード会社が海外事務手数料を1.6〜2.2%の間に設定している。少し前までは各社とも1.6%程度となっていたが、近年値上げが続出していることもあり、現在1.6%程度になっているカード会社も今後値上げとなる可能性は高いと言わざるを得ない。特に消費増税のタイミングで改定を行う会社もあると考えられるので、しばらくは注視しておいたほうがいいだろう。

海外事務手数料は低いほど好ましいが、前述したように実質的な支払い額は、ポイント還元率も大きく関係してくる。例えば海外事務手数料が1.63%でポイント還元率が0.5%のカードよりも、海外事務手数料が2.16%でもポイント還元率が1.5%のカードを選んだほうが、同じ国際ブランドであれば確実に得をする。最近は海外利用でポイント2倍などの特典を持ったカードも多いので、頻繁に海外に行く機会があるなら、国内用と海外用でカードを使い分けることも考えよう。

また、上表はあくまでクレジットカードの場合だが、最近はデビットカードやプリペイドカードでも海外で使えるものが多数ある。これらは海外事務手数料が3〜4%程度に設定されていることが多いが、外貨預金をしている場合は事務手数料不要で直接現地通貨払いできるデビットカードや、チャージした時点でレートを確定できるプリペイドカードもある。目的に応じて利用するカードを選ぼう。

(※クレジットカードの用語などは以下を参照)

『シーンで選ぶクレジットカード活用術 (1) 最低限知っておいてほしい基礎知識』

※本記事で紹介したサービス内容は、消費税率8%を前提とした更新日時点の情報です。ポイント価値は編集部にて算出。利用方法によって上下する場合があります。また、各サービスには一部対象外となるケースがあります。ご利用の際は公式サイトなどで最新の情報をご確認ください。

■ 筆者プロフィール: タナカヒロシ(ライター・編集者)

普段は音楽やエンタメ関係の仕事が多いが、過去に勤めていた会社の都合でクレジットカード本を作ったことをきっかけに、クレジットカード、電子マネー、ポイントなどに詳しくなる。以降、定期的にクレジットカードのムック本を編集・執筆。3月8日発売の『最強クレジットカードガイド2017 本当にトクするカードの選び方・使い方=写真=』(角川SSCムック)では、編集統括および記事の大部分を執筆している。