東京2020オリンピック競技大会では、史上最多となる33競技339種目の開催が予定されている。本連載では、イラストを交えながら各競技の見どころとルールをご紹介。今回は「バスケットボール」にフォーカスする。

新種目「3x3 バスケットボール」の、よりスピーディーな試合展開にも注目

1チーム5人ずつで、手を使ってパスやドリブルなどでつないだボールを相手コートのリングに投げ入れる競技。男子では平均身長が2mに迫る選手たちが、屋内28m×15mのコートの中で、まるで火花が散るようにスピーディーな接近戦を繰り広げる。不可能とも思える体勢からここしかないと思うポイントに打つ針の穴を通すようなショットや、相手を翻弄するようなトリックプレーがゴールに結びつくシーンは痛快そのものだ。

1891年に、アメリカ・マサチューセッツ州の国際YMCAトレーニングスクールに在籍していたカナダ出身のジェームズ・ネイスミス博士が考案し、体育の授業に取り入れたことから広がったというバスケットボール。オリンピックでは、セントルイス1904大会でデモンストレーション競技として実施され、ベルリン1936大会より正式競技となっている。競技人口は4億5千万人といわれ、国際競技連盟(FIBA)加盟国はサッカー(FIFA)を上回る213カ国にのぼる。

アマチュア規定撤廃後のバルセロナ1992大会では、NBAのスター選手たちが集結した「ドリームチーム」と呼ばれるアメリカ代表が格の違いを見せつけて金メダルを獲得し、大会に大きな華を添えた。以来、アメリカ代表チームは歴代NBAの花形選手を集め世界中のスポーツファンの注目の的になっている。

なお、女子種目はモントリオール1976大会からオリンピック正式種目となった。また、東京2020大会では、新たに1チーム3人同士で得点を競う「3x3 バスケットボール(スリー・エックス・スリー)」が正式種目に採用され、5人制、3人制、それぞれ男女合わせて4種目が実施される。

バスケットボールの攻防は、全員攻撃・全員守備。プロスポーツとして発展してきただけあって、観客を楽しませるためのルールが多く存在する。

ボールの扱いや接触プレーには細かく反則が設けられており、反則を避けながらオフェンス(攻撃)側はいかに相手ディフェンス(守備)をかいくぐってゴールにシュートを決めるか、またディフェンス側はいかに相手の攻撃にプレッシャーをかけてオフェンスからボールを奪い取ったり、シュートミスを誘ったりして自分たちの攻撃に転じるか、という攻防が展開される。オフェンスになったチームは一定時間以内にショットを放たなければならないというルールも、試合をスピーディーで魅力的なものとしている。

ポイント数は、ショットが放たれた位置によって異なる。3ポイントラインよりも外側からショットすれば3ポイント、それよりも内側からショットすれば2ポイント。反則などで一度プレーが切られ、ディフェンスのない状態で決められた場所からショットする「フリースロー」は1ポイント。

4ピリオド、合計40分間で2桁、3桁まで得点が争われるが、接戦の終盤にはショットの一つ一つが、打つ手の指が震えるほどプレッシャーのかかるものとなる。特にそれが見えやすいのは、ショットを打つ選手以外の動きがないフリースローの場面だ。ショットが得意とされている選手がプレッシャーからショットミスをしたり、逆に1つのショットをきっかけに勢いづいた選手が神がかったように連続ポイントをしたりと、アスリートの精神状態が手に取るように伝わってくる。

攻撃のカギを握るポジションの一つは、技術と俊敏性と戦術眼を高レベルで必要とされる「ポイントガード」。このポイントガードの選手に注目してみると、いかに広い視野で戦況を見極め、コートの至るところに顔を出し、指示を飛ばし、攻守の切り替えや鋭いアシストなどでゲームメイクしているかがわかるはずだ。ただ、世界のトップには多くのポジションをカバーするハイレベルな選手が多い。

3x3 バスケットボールは、主にストリートシーンで発展してきたスポーツ。バスケットボールの歴史の中では新しい形式だが、全世界での競技人口はすでに40万人を超え、世界大会には180以上の国と地域が参加する人気スポーツだ。通常のバスケットボールコート(縦28m×横15m)の約半分(縦11m×横15m)を使用し、3人で試合に臨む。

コイントスで攻撃側・守備側を決め、ゲーム開始。10分一本勝負で、通常のバスケットボールの3ポイントラインが2ポイントラインとなり、その外側からであれば2点、内側が1点(フリースローも1点)となる。

どちらかのチームが21点先取した場合は、その時点でゲームが終了。5人制よりもさらにスピーディーな攻防が繰り広げられるため、スリリングで目の離せない観戦体験になる。また、試合を盛り上げるMCや音楽など、エンターテイメントの要素がより強いのが特徴。

イラスト:けん

出典:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会