東京2020オリンピック競技大会では、史上最多となる33競技339種目の開催が予定されている。本連載では、イラストを交えながら各競技の見どころとルールをご紹介。今回は「カヌー」にフォーカスする。

スピード勝負のスプリント。激流を制するスラローム。2つの水上の熱いレース

小舟をパドルで漕ぎ、速さを競うスポーツとしての「カヌー」は、19世紀にイギリスで発祥した。カヌーには、流れのない直線コースで一斉にスタートし着順を競う「スプリント」と、激流を下りながら吊されたゲートを順に通過してタイムと技術を競う「スラローム」がある。

川や湖、またそれに似た屋外の人工のコースで競技が行われるので、大自然と一体になる爽快感が最大の魅力だ。風を感じながら水上を疾走する気持ち良さを、観戦者もともに味わうことができる。

競技で使われるカヌーのタイプは2種類ある。ブレード(水かき)が片端だけについているパドルで行うカナディアンと、両端についているパドルで行うカヤック。さらにスプリントはシングル(1人乗り)、ペア(2人乗り)、フォア(4人乗り)の区別があり、距離も200m、500m、1,000mの3種類。

これらを組み合わせて、男女でスプリントが計12種目、スラロームが4種目行われる。リオデジャネイロ2016大会までは、女子はカヤックのみで男子より種目数も少なかったが、東京2020大会では女子にカナディアンが加わり、種目数も男女同数になる。

スプリントは、少し前までフラットウォーターレーシングと呼ばれていた。まさに平らで静かな水面で、8つのレーンが張られ、一斉にスタートしてゴールまでまっすぐ進んでいくレース。ボート競技に似ているが、漕ぎ手の向きがカヌーは前向きで、後ろ向きのボートとは逆だ。

また、ボートを漕ぐ道具のオールと異なり、カヌーの道具のパドルは艇に固定されていないので、細かな操作ができるのも特徴の一つ。距離もボートが2,000メートルであるのに対し、カヌーのスプリントは200メートル~1,000メートル。200メートルは30~50秒で終わってしまう。スプリントの名の通り、短距離を全速力で漕ぎ抜ける競技で、スタートでの素早い飛び出しがポイントとなる。

スタートダッシュの後、水しぶきを上げながら猛スピードで水上を滑るように突き進んでいく様は迫力があり、見ていても爽快だ。選手たちのリズミカルで無駄のない動きも格好がいい。特にペア、フォアの息の合った動きは美しく、見る者を魅了する。最後はスパート力も重要だ。白熱した戦いは、最後まで目を離せない。

カナディアンとカヤックでも注目点は異なる。カナディアンは片側しか漕がないので、普通に右で漕いでいると左方向に傾いてくる。そこで、方向をコントロールする漕ぎ方の技術がものを言うことになる。膝を立てた独特のスタイルとともにカナディアンの見どころだ。

カヤックは両側で漕げるため、カナディアンより速く進む。よりダイナミックなスピード感が醍醐味だ。

一方、スラロームは変化に富んだ流れのある川に、2本のポールをぶら下げたゲートを20前後設け、これに触れないように通過しながら上流から下流へと下るワイルドなタイムレース。

ゲートに触れたり、ゲートを通過しなかったりするとペナルティの点がタイムに加算されていく。人が立っていられないような急流で自由自在に艇を操るテクニックが見どころだ。特にゲートを通過するときはスリリング。横に流されてゲートを通過できないと50秒もタイムが加算されてしまうので、可能な場合は漕ぎ戻って通過する。

ゲートのうち6~7個は、上流に向かって通過しなくてはならないアップストリームゲート。流れに逆らって漕ぐ選手のパワーに注目だ。全体に注意深さとスピードが求められるので、見ていてもドキドキしてくる。選手のパワーやバランス感覚、敏捷性に加え、刻々と変化する川の流れや波の状況を見極める判断力も注目ポイント。

スラロームにもカナディアンとカヤックの2種類がある。カナディアンは、より細かな技術が見どころで、カヤックは、豪快さやスピードが魅力だ。

競技は、タイムとペナルティの加点の合計ポイントが少ない選手が上位となる。

イラスト:けん

出典:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会