華麗な跳躍、力強い投てき

陸上競技でトラックの内側や外側で行われる競技をフィールド競技と呼ぶ。フィールド競技は、「跳躍」と「投てき」の2つに分けられる。

「跳躍」は、走高跳・棒高跳・走幅跳・三段跳の4種目で、跳ぶ高さや距離を競う。「投てき」も、砲丸投・円盤投・ハンマー投・やり投の4種目で、こちらは手で投てき用具を遠くへ投げ、その距離を競う。フィールド競技はトラック競技のように何人もの選手が同時に競うことはない。1人ずつ試技を行い、その記録で順位が決まる。

跳び越えるバーの高さを競う走高跳。かつて、はさみ跳び、ベリーロールなどさまざまなスタイルで行われてきた走高跳は、メキシコシティー1968大会でディック・フォスベリー(アメリカ)が背面跳びを用いて優勝して以来、ほとんどの選手が背面跳びを行うようになった。

男子は2m40台、女子は2m前後の戦いが繰り広げられる。自分の身長を超える高さを舞うように跳び越える美しいフォームにも注目しよう。走高跳は、パスを除いて3回続けて失敗すると敗退となる。助走のスピード、踏み切るタイミング、きれいな空中姿勢が好記録を生むポイントだ。

棒高跳は、ポールを使用してバーを跳び越え、その高さを競う。かつては木製や竹製のポールが使われていたが、東京1964大会でグラスファイバー製のポールが使われるようになり、記録は大幅に伸びた。現在では、より大きくしなり復元力が強いガラス繊維や炭素繊維を用いた強化プラスチック製のポールが使用され、さらに記録を伸ばしている。

トップクラスの棒高跳選手は、ある程度の高さになるまではパスをして体力を温存し、より高いバーにチャレンジすることがある。だが最初の高さで3回続けて失敗すると記録が残らず、どの色のメダルにも届かなくなる。リスクをかけてチャレンジするか、体力を消耗しながらも確実に記録を残すか、各選手の戦略に注目したい。

前方へ跳ぶ距離を競う走幅跳。選手は、空中で脚を回転させるはさみ跳びか、空中で体を大きくそらせてから前へかがむそり跳びで跳ぶことが多い。踏み切る時に足が踏み切り板を越えるとファウルになり、3回のファウルで記録なしになる。踏み切り板を越えないようにしながら可能な限り前方で踏み切ると記録が伸びるのだが、ファウルも怖い。踏み切り板ばかり気にしていると大きなジャンプができない。そうした選手の葛藤が見もの。

走高跳も同様だが、自分を盛り上げ集中するように助走の際、観客に手拍子を要求する選手のパフォーマンスにも注目したい。助走スピードが跳躍距離に影響するため、短距離のトップ選手が走幅跳でも活躍するケースが多い。

ホップ・ステップ・ジャンプと3回跳び、その距離を競う三段跳。1歩目と2歩目を同じ側の足で踏み切り、最後のジャンプを反対側の足で踏み切る。走幅跳と比べて競技テクニックが必要になる種目。助走スピードやジャンプ力ももちろん必要だが、3回のジャンプをスムーズに行う調整力も必要になる。そのため、経験豊富なベテラン勢が活躍することも多い。この三段跳と走幅跳は、オリンピックの決勝では6回の跳躍チャンスが与えられるが、4回目以降に進めるのは上位8人だけである。

砲丸投は男子7.26kg、女子4kgの金属の球を投げ、その距離を競う。片手で押すように投げなくてはならず、野球のピッチャーのような投げ方はファウルになる。巨体から繰り出されるダイナミックな投てきでは、重い金属球を20m以上飛ばす。その迫力に注目だ。

円盤投では、直径2.5mのサークル内で選手が回転し、遠心力を利用して円盤を投げ、その距離を競う。円盤の重さは男子2kg、女子1kg。距離を伸ばすためには筋力だけでなく、回転エネルギーを円盤が前方に飛び出すための力に変えるテクニックが重要だ。風の影響を強く受けやすいのも円盤投の特徴。選手が風をつかむタイミングも見ていきたい。

ワイヤーの先に砲丸がついたハンマーを投げ、飛んだ距離を競うハンマー投。グリップ、ワイヤー、砲丸を合わせたハンマー全体の重さは、男子7.26kg、女子4kg。これは砲丸投の砲丸と同じ重量である。選手は直径2.135mのサークル内で3~4回転し、遠心力を利用して投げる。雄叫びとともに重いハンマーを80mも飛ばす選手の気迫に満ちた投てきには、凄みがある。

砲丸投、円盤投、ハンマー投がサークル内から投げるのに対して、やり投は投てきの中で唯一、助走をつけて投げる。回転投法は認められていない。やりの重さは、男子800g、女子600gで、長さは、男子2.6~2.7m、女子2.2~2.3m。男子は90m台、女子は70m台の勝負となる。まっすぐ走りまっすぐ投げるという、他の投てき種目にない直線的なスピード感が魅力だ。

投てき種目はすべて予選通過標準記録に達した選手が決勝に進む。決勝では3回の試技で上位8番目までの記録の選手が残ってさらに3回の試技を行い、合計6回の試技の中での最高記録によって順位が決まる。

跳躍、投てきともに、上位にくる選手は力強いだけでなく、動作も美しい。流れるようなフォーム、迫力あるアクションもフィールド競技の見どころのひとつだ。