東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンス! そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「ハンドボール」。競技解説は女子代表チームのスタッフとしても活躍する、大阪大学助教の小笠原一生さんです。

  • ハンドボール

    「ハンドボール」の魅力とは?

ハンドボールの特徴

ハンドボールは縦40m、横20mのコート上で、両端のゴールにボールを投げ入れて得点を競うスポーツです。メンバーは6名のコートプレイヤーと1名のゴールキーパーで構成されます。ハンドボールは「球技の格闘技」といわれるほど激しいスポーツです。選手同士の接触がルールで許されているので、防御選手は相手のシュートを阻むために積極的にボディコンタクトを仕掛けます。そんな防御選手を巧みにかわしつつ、あるいは振り払いながら豪快なシュートが放たれます。近年のハンドボールは展開がとてもスピーディで技術力の高い選手が多くなってきました。1分に1得点入るような目まぐるしいゲームになることもあります。試合時間は前後半それぞれ30分の計60分ですが、一瞬たりとも目が離せない見どころ満載のスポーツです。

ハンドボールを観戦するときのポイント

ハンドボールでは、それぞれのポジションの職人的なプレーが見ものです。コート上でチームを統率するのがセンターバックというポジション。中央でボールを回してチャンスを作ります。センターバックの両脇に位置する左右のバックプレイヤーは、チームの中でも点取り屋のポジションです。防御選手越しの豪快なシュートで相手ゴールを脅かします。小柄ながらもスピード感あふれるポジションが左右のウィングです。コートの端の狭い角度から飛び込んで難しいシュートを狙います。相手防御の中でひとり奮闘するのがラインプレイヤーです。巧みな位置取りで相手防御のスキを作り出し、味方選手のゴールをお膳立てします。そして忘れてはならないのは、ゴールキーパーの活躍です。時速100㎞/hを超えるシュートを防ぐのですから、ボールコースを読む技術や判断能力は素晴らしいものです。また、シューターとの駆け引きの中でわざとシュートコースを空けてシュートを誘い込むようなハイレベルな駆け引きも行います。ベテラン選手が長く活躍できるのもゴールキーパーの特徴。経験値が物を言うポジションならではですね。

観戦するならコート近く、ゴール裏がオススメです。選手同士のぶつかる荒々しい音や、高速でボールが放たれる時のポップ音など、コートサイドでしか味わうことのできない臨場感をぜひお楽しみください。

東京2020でのチームジャパンの展望

男子代表チーム・彗星ジャパンでは、かつて湧永製薬ハンドボールチームで活躍したシグルドソン監督のもと、着実に力をつけてきました。ベテランの信太弘樹選手や久保侑生選手らの安定感に加え、海外経験のある徳田新之介選手、部井久アダム勇樹選手ら若手による爆発力が見ものです。なかでも、センターバック東江雄斗選手による絶妙なパスさばきが大型ヨーロッパチームを翻弄することでしょう。

一方、女子代表チーム・おりひめジャパンでは2019年に主力陣に負傷者が続き、一時は不安視されましたが、ウルリック監督のもと次世代メンバーがしっかりと台頭してきました。大山真奈選手、佐々木春乃選手ら2019年の熊本世界選手権を戦い抜いた若手陣に加え、横島彩選手、原希美選手らリハビリ中のベテラン勢が合流し、一層厚みを増したチームとなって東京2020に臨みます。

遠山健太からの運動子育てアドバイス

私は今までさまざまな球技をしてきたつもりですが、ハンドボールだけはまだやったことがありません。サッカーやバスケットボールのようにパスをまわしながらゴールを狙う競技という意味では、日本人には馴染みやすいスポーツだと思います。昨年のラグビーW杯のように盛り上がれば、一気にメジャーになる可能性もあります。昨今、投げるのが苦手な子どもが増えているというニュースが散見されますが、ハンドボールが普及するにつれて問題解消につながるのではないでしょうか。また、「世界ゆるスポーツ協会」が発案した新スポーツに「ハンドソープボール」(冬はハンドソープの出が悪くなるため『はんギョボール』)というものがあります。文字通り、手にハンドソープをつけて滑りやすくすることで競技力の垣根を取り払い、誰でも楽しくできるというものなので、親子で参加するのもいいかもしれませんね!

競技解説:小笠原一生

大阪大学大学院医学系研究科健康スポーツ科学講座助教、日本代表女子ハンドボールチームおりひめジャパンチームスタッフ、公益財団法人日本ハンドボール協会情報科学委員会、医事委員会委員。大阪大学小笠原研究室(Facebook)