お金の収支を全部つけるのは、けっこう気合いが必要ですね。気になるワンテーマだけなら気軽に始められ、これが意外と節約に効くのです。おひとりさまなら、まずは、ここから。


気になる項目だけ支出をつけてみる

「もしかして使い過ぎかも」と思う項目はありませんか? 例えば、洋服代、毎日のランチ代、趣味のスポーツのウエアや仲間との交際費など。気になるなら、1カ月ほど、その支出だけ記録を取ってみよう。

手帳やノートに書き留めてもいいけれど、合計額を出すために電卓を叩くのは面倒だから、パソコンでエクセルにつけるのがおすすめだ。合計が出るように設定しておけば、使った都度、数字を入力するだけで合計額がわかる。仕事でエクセルを使っている人なら、簡単にできるはずだ。エクセルが使えない人は、この際、エクセルの使い方を覚えてしまえば、今後のお金の計算に役立つ。

もちろんエクセル以外でも、スマホやケータイの機能などを使い、数字を入れるだけで合計額が出る環境を作っておくと、気負わずに続けられる。

入力作業が振り返りにもなり、すでに入力の段階で、使い過ぎ! に気付くこともあるだろう。できればきちんと1カ月続けて、月当たりの金額を出したい。いくらになっただろうか? 月額を具体的な数字で把握するのがポイントだ。今月はだいぶ使ったから来月は引き締めようなどと思えるなら、しめたもの。

生活に合わせて3項目程度を確認したい

一人住まい、実家に同居、外出が多い、家にいるのが好き…。ひと口に「おひとりさま」といっても、その生活は様々だ。とはいえ、家族がいる人に比べると、子どもの教育費などがない分、支出の項目は少なくなる。一番、気になる項目の支出を確認したあとは、生活に合わせて、できればあと2項目程度も同様に確認してほしい。

節約に結びつきやすいのは、食費(外食やコンビニでのおやつのちょこちょこ買い、飲み代などを含む)、おしゃれな人なら衣類やカバン・靴類、趣味の費用など。支出が多そうな3項目を確認すれば、収支改善に役立つはずだ。1項目1カ月つけるとすると、3カ月で3項目確認できる。面倒な人は、とりあえず1項目だけでもOK。使い過ぎていると思ったら節約する方法を考えたい。

中には、確かにかなりお金を使っているけど、これだけは譲れない! という支出もあるだろう。そんな場合は、その支出を維持するために、もっと優先順位の低い支出がないかを考えて、そちらから削ることを検討したい。

「チマチマ派」か、「バッサリ派」か、節約法は性格に合わせて

例えば食費をもっと減らそうと考えたとき。方法は大まかにふたつある。ひとつめは、これまでよりも、ちょっとずつ値段の安いものを買うことを心がけて合計額を減らす方法。いわばチマチマ節約。もうひとつはバッサリ節約。飲み会を一回断る、外食を1回やめるなど。性格によっても、友達との関係などによっても、できる場合とできない場合があると思われるが、節約する場合は、具体的な金額を決めておくと効果が出やすい。

目標の立て方は、現在の月あたりの食費が3万5000円で、これを3000円節約して3万2000円にすると決めるなど。ただし、実は、これ案外むずかしい。簡単に節約できるなら、みんな苦労はしない。私の経験から言えば、まずはチマチマ節約に挑戦してみること。これがなかなか大変なので(こっちが合っている人もいるかもしれないが、私の場合はダメ)、バッサリな方が一度で効果が大きいことを実感し、外食、洋服、欲しい靴など、一回の支払いが数千円~数万円の支出の誘惑に勝てるようになる(はず)。しかも、バッサリ節約なら、節約した金額が、その時点で明確にわかり(○○○円、使わなかったぞ!)、目標額と照らし合わせやすい上、精神的な満足感がある(私の場合はそう)。

そして、あれこれ試行錯誤しているうちに気が付くのは、「買わない」という選択肢の効果は、「安いものを買う」よりも大きいことだ。

そもそも必要なのか。買うのか、買わないのか。買うならどんなものを買うのか。サァーと頭の中をそんな思考が駆け巡ると、合計額で支出を減らすことが、ずいぶんと楽になる。

収入に対する割合を出してみよう

その項目の月あたりの合計額が分かったら、ちょっと上級者向けかもしれないが、次のステップとして、手取り収入に対する割合を出してみたい。

例えば、趣味の費用に毎月5万円くらい使っている、なんて人もいるかもしれない。手取りの給与に対する割合はどれくらいになるだろうか? 手取りが毎月28万円なら、5万円の支出は約18%にもなる。これは、いちいちエクセルを使わなくても、電卓かケータイの電卓機能でも計算できる。

1人暮らしをしている人の家賃は別として、手取りに対して20%を超える支出があるなら、これはかなり使っているということだ。10%~20%も、かなり大きめの支出と言える。先ほどの食費3万5000円は、手取りが月28万円なら12.5%だ。

1項目で、手取りの10%以上を使っているものがあれば、お金の使い方を一度、考えてみたい。もちろん、必要で、納得して使っているのなら問題ないが、そのために貯金ができないとか、赤字になっているなら、自分のお金の使い方に冷静に向き合ってみよう。

季節的な要因で、毎月一定額とはいかない支出もある。年末年始は外食代が多くなるとか、ゴールデンウィークに趣味の費用が増えるなど。これらは、その原因と金額が把握できれば、お金を使う必要がない月に、しっかり引き締めて帳尻を合わせる。

頑張って全部をつけなくても、このような方法で収支改善は可能だ。いったんペースがつかめたら、もうつけなくてもいい。生活環境などが変わり、確認したい項目があれば、またその時に1カ月ほどつけてみる。お金を貯めたいけど、家計簿をつけるのはどうも…という人、ワンテーマ記録を活用してみては。

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 坂本綾子

20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。