トイレを洋式に変更するのも介護保険に係る住宅改修の対象になる

トイレを洋式に変更するのも介護保険に係る住宅改修の対象になる

介護保険で住宅が改修できる――。こう聞いても、介護経験のない方は、ピンと来ないかもしれません。ただ、介護が必要な家族がいると、日常生活において切実な問題に必ず直面します。被介護者が自分で行えることの範囲を広げたり、少しでも介護をしやすくしたりするため、住まい改造に着手するケースは実は多いのです。

すでに要介護認定を受けていれば、ケアマネージャーからも情報が得られますので、介護保険を利用して住宅改修を実施している人は少なくありません。今回は住宅改修の観点から、介護保険制度をみてみましょう。

介護保険における住宅改修とは

介護保険は「自宅に手すりを取り付ける」など、要介護者らがより住みやすいよう住宅を改修するにあたり、一定の費用を支給してくれます。必要な書類(住宅改修が必要な理由書など)を添えて申請書を提出し、工事完成後に費用発生の事実がわかる書類(領収書など)を提出すると、実際の住宅改修費の大部分が償還払いで支給されるという仕組みです。

実際に利用するとなった場合、どのような改修が制度の対象となるのか、その詳細を知りたいですよね。以下に具体例をまとめましたので参考にしてください。

(1)手すりの取り付け
(2)段差の解消(※)
(3)滑りの防止および移動の円滑化などのための床または通路面の材料の変更(※)
(4)引き戸などへの扉の取り替え
(5)洋式便器などへの便器の取り替え
(6)その他、それらの住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

※屋内における段差解消、床材の変更および手すりの取り付けなどの工事、玄ポーチの工事、玄関から道路までの(建物と一体ではない)屋外での工事も住宅改修などが対象

高齢になるとどのような配慮が必要となるかを知っておけば、住まいをリフォームしたり、リノベーションしたりするときに参考になります。今は手すりが必要でなくても、壁の下地に手すり用の補強を入れておくだけで、後々より簡単に手すりが取り付けられます。

また、高齢者への配慮は幼い子どもへの配慮にも通じるものがあります。核家族世帯の方も、こういった住宅改修における知識を知っておいて損はありませんよ。

なお、やむを得ない事情がある場合には、上述の(1)から(6)に係る工事が完成した後に住宅改修に関する申請をすることができます。

支給額と申請手順をチェック

住宅改修に係る支給限度基準額は20万円で、一般的には範囲内でかかった費用の1割が自己負担となります。すなわち、最大で18万円が支給される計算になります。

この20万円という金額は「要支援」「要介護」の区分に関わらず定額です。また、「一人につき生涯20万円まで」が原則ですが、要介護状態区分が重くなったとき(3段階上昇時)や転居をした場合は、再度20万円までの支給限度基準額が可能となります。

申請をする手順も確認しておきましょう。

STEP1: 住宅改修についてケアマネージャーなどに相談
STEP2: 申請書類または書類の一部提出・確認
STEP3: 施工
STEP4: 住宅改修費の支給申請・決定

申請をするにあたり必要なのは「支給申請書」「住宅改修が必要な理由書」「工事費見積書」「住宅改修後の完成予定の状態がわかるもの(写真または簡単な図を用いたもの)」となります。

実は、私の実家も介護保険を利用してリフォームしました。築40年程度の古い家だったため、トイレは和式で家の中に手すりもありませんでした。高齢で足腰が弱った父のため、私が設計してケアマネージャーと相談しつつ改修しました。住宅改修におけるケアマネージャーのサポートは助かりますし、頼りになる存在です。

ただ、補助があるとはいえ、税金を活用するわけですので、適正な価格になるようにいくつかの会社から見積もりを取ることをお勧めします。

※写真と本文は関係ありません

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。