認定調査(基本調査)ではさまざまな項目にチェック形式で回答をしていく

認定調査(基本調査)ではさまざまな項目にチェック形式で回答をしていく

前回の原稿で介護認定の申請の流れを説明しましたが、具体的にはどのような調査が行われるのでしょうか。認定調査員が面談しながら実施する調査ですので、申請者の自己申告やそのときの健康状態によって、かなり差が出そうに思います。今回は介護保険の認定調査について、詳しく見ていきましょう。

認定調査(基本調査)の内容

認定調査(基本調査)は、介護サービスを受けようと思っている人の現状を把握するために行います。「マヒの有無」「歩行状態」「食事状態」「外出頻度」など、全部で74項目を調査し、それをもとにコンピューターで要介護認定基準時間を算出します。通常の状態で調査することが大切ですので、熱があるなどの状態の場合は再調査が必要となります。ただ、各項目を詳細に見ると、申請者や同席者がどう答えるかという主観的な要素に大きく左右されるように思います。

健康維持・予防の重要性

健康維持・予防への注力は、介護だけでなく医療費の削減面からも喫緊の課題と言えるでしょう。国もそのことを認識しており、要支援1・要支援2の人を対象に居宅支援サービスや地域密着型サービスに充てられる「予防給付」を給付しています。要支援状態の人の症状が悪化して要介護へとならないよう(医療費が一層膨らまないよう)、この予防給付をうまく活用してくれることを期待しているというわけです。

私自身も最近、「健康維持・予防の重要性」を痛感する身近な事例を体験しましたので簡単に紹介しましょう。

職場で勤務中に脳溢血で倒れ、左半身不随になった人がいた。病院でリハビリをし、みるみる回復し左半身も動くものの、力は入らず感覚もない。座っていれば違和感はないが、退院後にリハビリはしていても、やはり状態が少し後退していっているように見受けられた。

私の印象では、この方のリハビリの「質」と「量」が不足しているように思えました。本人は必ずしも怠けていたわけではなく、万全とは言えないかもしれませんが、介護サービスも受けられているようで、介護サービスによるリハビリの回数を増やせるように申請もしていました。

ただ、結果としてこの方はその後、足の感覚が全くなくなり、寝たきりになってしまいました。リハビリの段階でもっと力を入れていれば、寝たきりにはならなかったように思います。少なくとも、退院後は1人で電車にも乗ることができていましたので、全体の介護費用を格段に抑えられるチャンスはあったはずです。

要介護認定の更新と変更に関する手続き

ところで、要介護認定には「期限」があることはご存じでしょうか。要介護認定および要支援認定には有効期間が定められており、引き続きサービスを受けたり区分を変更したりする場合は別途、対応をする必要があります。

要介護認定の更新

要介護認定の有効期間は、新規の認定で6カ月です。ここで一度見直しをし、その後の更新は12カ月ごとになります。手続きは期限の60日から30日前までに行います。審査には1カ月程度かかりますので、早めに更新しないとブランク期間ができてしまい、その間サービスが受けられず自費となってしまいます。

介護保険の区分変更の申請

要介護認定の期限内に心身の状態に変化が生じ、必要とする介護の度合いが高くなるといった場合に申請できます。新規の要介護認定と同じ手順で申請します。

不服申請

認定結果に不服がある場合は、認定が下りてから60日以内に、市区町村の介護保険担当課にて不服申し立ての申請をすることができます。ただし審査に数カ月もかかってしまうので、実際は一旦認定を受け入れて、区分変更の申請を提出することの方が多いようです。

自分の介護が必要になったとき、なんとか生活していくだけの介護が受けられるかどうか、大いに不安だと思います。限られたサービス枠を優先度に応じて過不足なくシェアしなければなりません。

今はインターネットで情報や意見を発信できる時代です。介護保険制度をよりよいものにするために、身近に事例が発生した場合などは、制度を精査し、改善点を発信していくようになればと思います。制度をよりよくするためには多くの国民の目が大切です。

※写真と本文は関係ありません

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。