本連載はこれまで、新社会人が考えるべきお金について、基本的な考え方をいろいろな角度から検討してみました。実践的なハウツーものがあふれている昨今ですが、大切なことは「考え方」です。目先の対処方法を学んでも、考え方がしっかり確立していなければ身につきません。

今回はいよいよ実践編です。国を円滑に運営し、先々も見据えた予算組みの大切さは家計に置き換えても同じです。あれも大切、これも大切ではいくらお金があっても足りません。自分のお金を仕分けしてみましょう。

ステップ1 : 自分のミニマムラインを見極めよう!

仕分けに先立って、自分の最低生活ラインを設定します。次のステップで仕分けして増やすことができますので、最低生活ラインを見定めるようにしてください。

最低生活ラインは統計局の家計調査の実態等も参考に、最大限切り詰めたら、どの程度の生活費になるかを設定します。参考までに、統計局が発表している家計調査の結果から単身者、34歳以下の部分を抜粋したものを以下に掲載します。こちらは、平均ですので住居費は少なくなっています。一人暮らしは家賃がもっとかかるでしょう。

この統計局のデータは、居住地別や男女別にもなっていますので、より実態に近い数値を得ることができます。また各項目は、それぞれ詳細な内訳が表示されています。例えば食費の中で外食費は約2万円です。酒、菓子類、肉や野菜の消費もわかりますので、是非詳しくチェックしてみてください。

さて、これらデータを参考に最低生活ラインについて考えます。家賃等は変えることはできません。現在少し贅沢すぎると思う場合は、別途ミニマムラインを定めて、オーバーした家賃分は、仕分けで増やしたものと考えてください。

また、参考に親世代、祖父母世代の生活水準と比較してみてください。今ある生活用品は祖父母世代にはほとんどなかったと思います。あっても昔と比較して現在のものは格段に機能がレベルアップされていると思います。親や祖父母が持っていなかったら、なくても生活できることを意味します。それに時代の変化を加味して考えてください。親世代・祖父母世代が新社会人の時に持っていたかどうかは目安ですので、実際に聞いてみるとよいと思います。項目もあくまでも目安ですので、必要に応じて増やしてください。

ステップ2 : 自分の貯蓄ポイントを探ろう!

「ボーナスがある」「給与が比較的高い」「実家暮らしである」「サイドワークができる」…… など、それぞれ自分の中の有利な部分を考えます。自分が有利な点を見出し、それを安易に消費してしまうのではなく、積極的に資産形成に反映させましょう。貯蓄ポイントが豊富なほど仕分けが有利になり、将来に差がつくはずです。

ステップ3 : 将来必要になる費用を積み立てよう!

思わぬ費用が発生して予定が狂う要因は、いつかは絶対に必要となる買い替え商品等の資金を考えていないことによります。例えば冷蔵庫やPCが使えなくなったら、すぐにでも新しいものを調達しなければならないでしょう。そのための準備がなければローンを組んだり、万一のための貯蓄資金を取り崩したりしなければならなくなり、一向に貯蓄が増えないことになりかねません。表に自分で記入した生活用品等の費用と買い替えサイクルを計算して、毎月準備しておきましょう。その人の生活水準にもよりますが、5,000以上は毎月準備する必要があるでしょう。ステップ2で定めた必要生活用品が贅沢であればあるほど積み立て費用も多くなります。

■参考■

10万円の冷蔵庫を15年で買い換える場合
100,000÷15÷12≒560円/月

10万円のPCを8年で買い換える場合
100,000÷8÷12≒1,050円/月

ステップ4 : 仕分けをしよう!

さていよいよ仕分けです。収入から最低生活費(ミニマムライン)を差し引いた残りをどう配分するかを仕分けします。仕分けしなければならない項目は、人それぞれですが、貯蓄、スキルアップのための費用、趣味の費用や交際費、などへ配分していきます。時間こそ大切と考えて外食費中心に仕分けする場合もあるでしょう。人のつながりこそ財産と考えて交際費に多く配分する人もいれば、将来実益も兼ねたいので趣味へ多く配分する人もいるでしょう。特にまだ案もないのであればひたすら貯蓄というケースもあります。

収入-最低生活費-買い替え商品準備金=仕分けできる金額

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仕分けの精度が自分をステップアップさせるポイントです。次回は仕分けを上手に扱って人生の勝ち組になるにはどうしたらよいかを考えてみましょう。

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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