前回のようにシンプルライフを目指して節約が身に着いたら、今度は貯蓄して資産形成の段階です。自分で自分の人生を作り上げていくためには、自分がどうしたいかが最も大切ですが、何をするにもお金は必要です。思うような人生を送れるように資産形成の第1歩をスタートしましょう。

資産形成に成功するには人生設計(ライフプランニング)を行うのがベスト

アメリカでビックグビジネスに成功した人の大半は、自室に目標を張っていたそうです。貯蓄にも目的意識があるのとないのとは、結果に大きな違いが生じます。人生の目標を立て、それを実現するためのベストの方法をライフプランニングシートで検証してみましょう。

本稿で紹介するライフプランニングシートは、これからの人生の収支の予測を立て、希望する生活が行えるか、いつどのような問題が発生しそうか、自分たちの計画の弱点はどこか、それに対してどのような準備をしておけばよいかを見極める表です。おおむね平均余命程度まで算出します。毎年見直すことが大切ですが、現状で考えられる範囲で物価上昇率も加味することができます。希望の金額をグレーのセルに入れれば、白い枠に自動計算されます。エクセルで簡単にプログラムできます。

若年者向けに作られている部分は運用率の項目です。毎年節約できた金額を、どのように運用するかをシュミレーションするためのものです。『新社会人がやっておくべき「お金に関するアレコレ」 社会の仕組み編』で述べた「貯金の3分割」で区分した金額をここに振り分けます。現在のような低金利が続くとは限らず、若い方々にとっては、長期的な視点での投資も必要です。短期的に見れば損失が発生する場合もあるかもしれませんが長い目で見て資産形成ができるような投資のスキルも身につける必要があります。自分がどれだけ投資に配分できるか、あるいはベストの配分はどれくらいかなどを検証できます。

※ 参照:第1回 貯金の3分割

・使う目的が明確なもの → 欲しい家電製品や近々購入の住まい取得の頭金など
・不測の事態に備えるもの → 病気やけがの治療費、働けない時の生活費など
・将来に備えるもの → 老後の生活費や先々の使用目的のもの(子供の学費・起業するときの開業資金

社会人たる者、不測の事態にも自力で対処したいものです。まずは6か月間から1年間程度生活できる資金を確保しましょう。どの程度の期間の生活費のストックが必要かは、会社の規模や安定度、正社員や契約社員などでも違います。不安定であればあるほど確保すべき金額は多くなります。その資金が貯まるまではモノは買わずひたすら我慢です。次のステップは近い将来必要となるものの費用を貯金します。それが確保できて初めて将来のための投資や貯蓄がスタートできます。いきなり投資に向かうのは感心しません。

上手に貯蓄する方法

ライフプランニングで目標と問題点がわかったら、いよいよ資産形成の貯蓄スタートです。あとは日々こまごまと工夫してみましょう。

・資産管理の通帳を別にして、カードを作らない

つまり通帳と印鑑がないと引き出せません。先々明確に使う予定のもの、病気やケガに備えるものなどは、専用の通帳をカードなしで作ることをお勧めします。同時に定期預金等は総合通帳にすると、普通預金が不足すると自動的に定期預金からの借り入れができてしまいますので、専用の定期預金通帳を作ることをお勧めします。

・ボーナスはあっても使わない

ボーナスを常にあてにするようでは生活が広がっていると考えざるを得ません。とは言ってもいろいろ使いたいのが人情でしょう。私は手取りの額の10万円以下の端数だけをボーナスとして楽しんでいました。9万円の時もあれば1万円に満たない時もあります。ボーナスがある方は、これで一気に貯蓄額が増えます。ボーナスがない場合は、それに見合う金額や残業代などを使わない方法もあります。

・節約できた金額を明確にする

前回たばこやペットボトルの節約による資産形成を考えてみましたが、東日本大震災の際に、電力消費を抑えるために各家庭それぞれ電気代を節約したと思います。我が家でも電気をこまめに消したり、パソコンの電源を落としたり、いろいろ工夫しました。結果、びっくりするほど電気代が少なくなり、本当に驚きました。こうした積み重ねをしっかり数値にして、自分のご褒美にすることも大切です。私は住宅メーカーで営業の仕事をしていたことがあります。営業担当個人にも多少の額の値引きの権限がありましたが、ある時、この値引きをやめれば、自分の営業報酬がどれほどアップするかを数値化したことがあります。それなりに売っていた私は驚くほどの金額になり、以後値引きしないセールススタイルを作り上げたことがあります。数値化は効果的なのです。

・シンプルな生活のイメージを作る

若手の社員を見ているとデスクが散らかっているケースはあまり仕事ができるタイプではないケースが多いです。次第に仕事を覚えていくと、不思議とデスクが片付いていきます。シンプルで美しい生活を実現している自分をイメージしていくと、モノの呪文から逃れられるように思います。

・欲しいものがあれば一旦先送りしてみる

ヨーロッパの女性のワードローブの中の衣服の量は日本人の1/3と聞いて、当時若かった私は衝撃を受けたことがあります。少ない洋服をスカーフや組み合わせで変化を持たせて着回しの工夫をしているのに対して、自分自身がブランド品などにはまったく興味がなくても、やはり工夫が足りないと自覚したのです。いったん時間をおけば、本当に必要なものか考える時間ができます。

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ファイナンシャルプランナーの資格取得の勉強をしていた時に、仲間と上記のような30歳程度のサラリーマンのライフプランニングシートのモデルプランを作ったことがあります。日々のほんの些細な節約が、将来の収支を劇的に変えるのを体験して、一同衝撃を受けました。前回の「たばこを節約したら65歳でいくらになる?」で試算した金額の違いだけでなく、老後破たんするか、安心できる暮らしになるかの違いも生まれる可能性があるのです。ライフプランニングシートは是非試してみて下さい。

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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