トヨタ自動車を代表する乗用車のひとつ「カローラ」が、モデルチェンジで12代目に進化した。ボディ全幅が広がって3ナンバーになったことが話題だが、その中でカローラらしい扱いやすさをキープすべく、トヨタは2つの秘策を用意してきた。デザインを中心に見ていくことにしよう。

  • トヨタの新型「カローラ」

    ボディサイズが3ナンバー化した新型「カローラ」

ついにカローラも3ナンバーに

通算12代目となるトヨタ自動車のカローラで、何よりも特筆すべきことは2つある。まず、ボディ全幅が1,700mmを超えて3ナンバーとなったこと。もう1つは、マニュアルトランスミッション専用の1.2リッター直列4気筒ターボエンジンを除くと、ハイブリッド車もガソリン車も排気量が1.8リッターとなって、自動車税が安くなる1.5リッター以内に収まらなくなったことだ。

  • トヨタの新型「カローラ」

    新型「カローラ」の全幅は1,745mm。パワートレインは直列4気筒の1.2リッターガソリンターボエンジン、1.8リッターガソリンエンジン、1.8リッターハイブリッドの3種類だ

日本のこのクラスの乗用車は、かつては5ナンバーサイズ、1.5リッターエンジンが当たり前だった。しかし、輸出比率が高いマツダとスバルは、「アクセラ」(現マツダ3)と「インプレッサ」を3ナンバーボディに大型化し、インプレッサの方は、ベースモデルの排気量が1.5リッターから1.6リッターへとアップした。

長年、カローラのライバルだった日産自動車の「サニー」は「ラティオ」にスイッチしたが、2016年に国内販売を終了。国内外のラリーでインプレッサの好敵手だった三菱自動車「ランサー」は翌年、生産を終えた。ボディサイズやエンジンの排気量を含め、カローラの好敵手といえるのはホンダの「グレイス」のみとなっていた。

ホンダでカローラのライバルといえば、かつては「シビック」だった。現行シビックは、エンジンこそターボ付きとはいえ1.5リッターにおさめているものの、全幅はフォルクスワーゲン「ゴルフ」と同じ1,800mmにまで成長している。

  • ホンダの現行「シビック」

    ホンダの「シビック」は横幅が1,800mmに達している

実はカローラも、2世代前の10代目からは、国内向けと国外向けで設計を変えており、後者については全幅が1,700mmを超えていた。一方の国内向けは、セダンについては「アクシオ」というサブネームを加え(ワゴンの「フィールダー」は9代目から登場)、11代目では1クラス下の「ヴィッツ」のプラットフォームを流用した。おかげで、5ナンバー枠内の全幅は守られた。

  • トヨタの「カローラ アクシオ」

    10代目「カローラ」のセダン「カローラ アクシオ」

トヨタが仕掛けた2つの秘策

一方の新型カローラは、2018年に日本でも発売されたハッチバックの「カローラ スポーツ」と基本設計を共有しており、「プリウス」や「C-HR」にも使われている「TNGA」プラットフォームを導入した。

  • トヨタの「カローラ スポーツ」

    トヨタの「カローラ スポーツ」

カローラは現在、世界150カ国以上で年間150万台以上が売れるグローバルカーであり、世界中でレベルの高い販売競争をしている。そんな中、新型の第1弾としてトヨタが送り出したのがカローラ スポーツであり、国内向けと海外向けは基本的に同じ仕様だ。ゆえに全幅は1,790mmに達しており、エンジンの排気量はガソリン車が1.2リッターターボ、ハイブリッド車が1.8リッターとなっている。

とはいえ、日本は国土も道路も狭い。そのための5ナンバーであり、1.5リッターだった。しかも、カローラは昔から大衆車として認識されてきた上に、近年はユーザーの平均年齢がセダンで70代(!)、ワゴンで60代に達するほど、高齢化が進んでいた。こうしたユーザーに対する配慮も必要だ。そのためにトヨタは2つの策を採った。

ひとつは、新型カローラ登場後も先代モデルである「アクシオ」および「フィールダー」の販売を続けることだ。もちろん、全幅は5ナンバー枠内に収まっており、エンジンの排気量はガソリン車・ハイブリッド車ともに1.5リッターである。

  • トヨタの「カローラ フィールダー」

    11代目「カローラ」のステーションワゴン「カローラ フィールダー」

トヨタが新旧車種を併売したことは何度かある。最近では、プリウスが3代目へと進化した際、ハイブリッドシステムのエンジン排気量が1.8リッターになったことから、1.5リッターの2代目を「プリウスEX」として残し、装備を簡略化して廉価版に位置づけた経緯がある。

もうひとつの策は、新型カローラの横幅だ。このクルマ、2018年11月に中国の広州国際モーターショーで世界初披露したグローバルモデルそのものではなく、日本向けの独自設計になっている。デザインは似ているが、ボディサイズは全長が4,640mmから4,495mm、全幅が1,780mmから1,745mm、ホイールベースが2,700mmから2,640mmと、1,435mmの全高を除きダウンサイジングしている。

ちなみに、カローラスポーツのホイールベースは2,640mmであり、C-HRと同じだ。一方、プリウスのそれは2,700mmである。その結果、新型カローラの最小回転半径は5.0mで、旧型から0.1mしか拡大しておらず、ドアミラー格納時の車幅が車体中心から5mmしか広がっていないなど、日本の道路事情や使用環境に合わせている。

カローラの原点に立ち返る

先に発表されたグローバルモデルの写真と新型を比べると、確かに前後のオーバーハングやリアドアは短く、フェンダーの張り出しは控えめになっている。フェンダーの違いは、発表会場に展示してあったカローラスポーツとの比較でも明らかだった。しかしながら、スタイリングのバランスは取れている。デザイナーはさぞかし苦労したことだろう。

そのスタイリングは、スポーツをベースにセダンやワゴンに仕立てたもので、フロントマスクやサイドウインドーまわりなど、カローラファミリーとしての統一感が伝わってくる。インテリアも、シートのデザインやステッチの色などで差別化を図っているものの、インパネの造形などはスポーツと同じだ。

実車を見て感じたのは、前後のフードをスロープさせたセダンのプロポーションが、初代カローラに似ていることだ。発表会場には歴代カローラがずらっと並んでいた。カローラのセダンというと箱型というイメージを持っている人が多いかもしれないが、初代から3代目までは、かなりスマートな形だったのである。

  • トヨタの初代「カローラ」

    初代「カローラ」

  • トヨタの2代目「カローラ」
  • トヨタの3代目「カローラ」
  • 2代目「カローラ」(左)と3代目「カローラ」

初代カローラは、ライバルとなるサニーの発売から半年後に登場した。開発中にサニーが1リッターエンジンを積むという情報を得たトヨタが急遽、カローラの排気量を1.1リッターに拡大し、「プラス100ccの余裕」とアピールして大ヒットにつなげたエピソードは有名だ。

デザインも、機能重視だったサニーに対し、カローラはスマートなプロポーションやボリューム感のあるサイドパネル、クロームメッキを多用したフロントグリルなどで、ユーザーの期待値を上回る価値を提供した。これが、2019年8月までで世界累計販売台数4,765万台という圧倒的な数字につながったのだろう。

新型カローラの発表会に登壇したトヨタ副社長の吉田守孝氏は、このクルマを開発するにあたり、カローラの原点に立ち返って、ユーザーの期待を超えるクルマを目指したと語った。日本の道でも使いやすいサイズに仕立て、TNGAプラットフォームやスタイリッシュなデザインでクルマと共にある生活を豊かにしたい。そんな気持ちが新型カローラから伝わってきた。

著者情報:森口将之(モリグチ・マサユキ)

1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。