吉川壽一先生に続いて、今回から3回にわたって年賀状の書き方をご指導いただくのは、書燈社の主宰であり、毎日書道会の理事でもある船本芳雲先生。漢字かな交じりの書「近代詩文書」の第一人者として活躍する高名な書家で、日本語の詩を書にすることで、身近で親しみのある日本的な風情や豊かな叙情性をたたえた表現を得意としている。

ねずみはアタマを小さく可愛く

「漢字はそもそも象形文字からきていますから、絵から入ってみるのも面白いでしょう」と話す船本先生直筆の年賀状を3名様にプレゼント。応募はこちら

まずはじめに、船本先生に年賀状を書くときの心構えをうかがったところ、「年賀状というのは年に一度のご挨拶ですから、その人らしいかどうかが大事です。だから下手でもいいんです」という答えが返ってきた。上手に書こうと気負うのではなく、あくまで自分らしく、思うがまま自由に書くことがいい年賀状を書くコツだという。うまく書くのではなく可愛く書こうというイメージかもしれない。そこで「干支文字で遊んじゃおう!」というタイトルにもかかわらず、なぜか第1回目は干支文字ではなく、筆で絵を描いて平仮名と組み合わせた年賀状に作ることにしよう。

「ねどし」という字は、つなげて美しく

自分らしくて可愛いねずみを描くには筆は細く書けるものを選び、アタマ、カラダ、しっぽの順に描くといい。アタマを大きく描きすぎてしまうとバランスが悪くなるので、なるべく小さめにしておくのがポイントだ。そしてカラダはそれに比べて大きめに書こう。しっぽのカタチも可愛さのポイントとなるのでどんな感じにするのか、しっぽを描く前に全体のバランスからイメージしておきたい。

1.まずアタマの上の部分と耳を描いたら目を入れ、顔の先を残して下の部分を描く。
2.カラダの線を描き、次に後ろ足、前足の順にシンプルな線で描いていく。
3.口先、ひげなど顔の細かい部分を入れ、最後にしっぽを力強く描く。
4.最後に平仮名で「ねずみ」と書く。下にはスペースがあるので、「ね」「ず」と「み」を分け、バランスを取ろう。平仮名は自分らしさをいっぱい出せるよう、形にとらわれずのびやかに書くとよい。

今回の技のポイント

「ね」と「どし」の文字のバランスがポイント。「ね」をはがきいっぱいに書き、「どし」を左下へ小さく入れると、構図として収まりがよく、ユニークさも加わる。

動画
船本先生によるお手本

多少のカスレは気にしない

全体的に絵はシンプルに。できる限りひと筆で描くようにして、顔以外の細かい部分はこだわらずに大胆に省略しよう。そして多少のカスレなどがあっても気にせず、それも味わいと考えるようにしたい。失敗した線の上をなぞるようなことはしないように。道具は手元にあるものでOKだ。必要なものだけ買い足せばよい。墨は墨汁でもよく、筆も細い線がかけそうであれば市販で購入できるもので十分だ。できたら最後に空いたスペースに落款を入れるとピタッと決まる。これを機会に自分の落款(らっかん、書画に押印するもの)を作ってみるのもよいだろう。

次回は、船本先生から干支文字を習う。どんな文字が飛び出すのかお楽しみに!