モテることより嫌われないこと

初めまして、桃山商事の清田と申します。今回からこちらで「男子が学ぶ恋愛のマナー講座」をコンセプトにした連載を始めさせていただくことになりました。

桃山商事というのは、女性のみなさんからひたすら恋愛の悩みや愚痴を聞かせていただき、それをコラムやラジオで発表している"恋バナ収集ユニット"です。うさんくさくて恐縮です……。

女性から恋バナを聞いていると、しばしば死にたい気分にさせられます。彼女たちが語る彼氏や旦那の愚行には、「もしかしたら自分もやっちまったことがあるかも……」と思わせられるものが少なくありません。話を聞かないとか、ケンカになると黙るとか、毎週フットサルを見学させられてつらいとか……。いかがでしょう、身に覚えはありませんか?(私はあります!)

男性向けの恋愛本や恋愛コラムには、「どうやったらモテるか」ということばかり書いてあります。しかし、長年この活動を続けてきて思うのは、「モテるとか、はっきり言ってどうでもいい!」ということです。恋愛で大切なのは、モテることより「嫌われないこと」だと感じます。そのためには、相手が嫌がることはなるべくしない。これに尽きます。

というわけで当連載では、これまで見聞きしてきた恋バナの中から「女性たちはこんなことに怒っている!」「こんなことで悲しい思いをしている!」というエピソードを参照しながら、恋愛のコミュニケーションにおいて気をつけるべきポイントを紹介していきたいと思います。「嫌われないための恋愛マナー」を身につければ、もっと女性たちと仲良くなれるはずです。モテより仲良し。仲良しが一番!

彼氏の"どや顔"がムカつく

さて、長々と前口上を失礼しましたが、第1回のテーマは「無神経なサプライズをするな!!」です。

サプライズといえば、恋愛を盛りあげる上で欠かせない要素のひとつ。内緒でプレゼントを渡したり、秘密のプランを仕込んでおいたり、基本的には楽しいイベントになるはずですが、実は取扱注意のカードだったりします。というのも、使い方を間違えてしまうと、とんでもない悲劇を巻き起こしてしまうケースがあるからです。

喜ばせようとして行ったサプライズが、逆に相手を怒らせてしまう。それは一体、どういうことなのでしょうか。

女子からよく聞く意見に、「彼氏の"どや顔"がムカつく」というものがあります。確かに彼氏の気持ちを想像すると、渾身のプランだったり、入念な準備の結果だったりで、成功を収めた際、その表情にいくばくかの"どや感"が浮かんでしまうのもわからなくはありませんが……そうは問屋がおろしません。

「うれしいんだけど、『さあ喜べ!』と言われているようで、素直に喜べない」

「サプライズを仕掛けた自分に酔ってる感じがすると、逆にイラッとする」

「普段は怠慢なくせに、ここぞとばかりに頑張られても、『それですべてが帳消しになると思うなよ』って気持ちになってしまう」

このように、どや顔に冷や水を浴びせる意見が意外と多いのも事実です。サプライズは謙虚な気持ちで、なおかつ普段からの行動がともなってこそ。そういうことなのかもしれません。

とはいえ、この程度で済めば、まだマシな方かも。たとえ彼女が少々ムカついていたとしても、プレゼントのうれしさ、イベントの楽しさを前に、気持ちは次第に収まるもの。ケンカなどの事態に発展することはないでしょう。ところが、楽しいはずのサプライズが一転、修羅場と化してしまうケースもあるようです。

"サプライズ・ディズニー"の悲劇

こんな話を聞いたことがあります。彼女の誕生日に、彼氏がサプライズとしてディズニーランドへ連れて行ったというカップルがいました。ところが、入場口に着くやいなや、彼女の表情が突然くもり始めます。そのカノジョは大のディズニー好きで、日頃から"行きたいオーラ"を出しており、彼氏としては満を持してのサプライズだったようです。

しかし、彼女の気持ちはますます沈むばかり……。完全に喜ぶだろう踏んでいた彼氏は混乱し、「何で不機嫌になってんの?」と問いただします。そして、そんな態度がますます火に油を注ぎ、しまいには「もう帰る!」という事態にまで発展。さて、このケンカの原因は何だったのでしょうか。

怒りのポイントは3点あります。ひとつは、普段から出していた"行きたいオーラ"を、彼氏がスルーしていたという点。「並ぶの大変だし……」「人混みが苦手で……」などと言ってはディズニーランドをやんわり避けていたくせに、サプライズというモチベーションが生まれた途端に行く気になった彼氏。これでは「相手のため」ではなく「俺が行きたい」ということにすぎず、彼女がムカつくのも無理はないかもしれません。

ふたつ目は、万全の対策をできなかったという点。彼女にしてみれば、せっかく大好きなディズニーランドに行くのなら、入念な準備をして臨みたいというのが本音でしょう。園内をまわるには歩きやすい靴の方がいいし、長時間並ぶためには楽なファッションの方がいいはず。また、アトラクションを効率よくまわるために、事前にルートを練っておきたかったという思いもあったはず。そういった万全の対策もできずにいきなりディズニーランドへ連れてこられても、喜ぶどころかいい迷惑でしかありません。

さらに、怒りの原因はこれだけに収まりません。もうひとつのポイントは、彼女にとって"事前のわくわく感"が大事なものであることに、彼氏がまったく気づいていなかったという点です。大好きなディズニーランドに行くという楽しいイベントに際しては、そこに至るまでのわくわく感、そして当日の楽しさ、さらには終わった後の余韻まで、すべてをセットで味わいたいというのが彼女の本音だったのに対し、彼氏は「連れて行けば喜ぶだろう」くらいにしか思っていなかった。楽しみの大半を奪われてしまったことが、彼女が落胆した大きな原因のひとつだったそうです。

こういったすれ違いは、もちろんディズニーランドだけに限った話ではありません。富士急ハイランドや高級フレンチレストラン、ホテルのスイートルームや大好きなミュージシャンのコンサートでも、同様の悲劇は起こり得るはず。

その日限りのがっかり感だったらまだ仲直りの余地はあるかもしれませんが、こういったすれ違いをきっかけに、日頃の不満や価値観の相違が一気に表面化してしまう可能性だって十分に考えられます。そうなると、単なるケンカに収まらず、別れ話にだって発展しかねません。

サプライズとは、喜びが大きい分、ミスしたときのダメージも大きくなる──。もし計画する際は、そんな"ハイリスク・ハイリターン"なものであることを理解しておく必要がありそうです。無神経なサプライズはダメ、ゼッタイ。ということでよろしくお願いいたします!

今回のマナーポスター「無神経なサプライズをするな!!」(イラスト:清田隆之)

まとめ

【サプライズで気をつけたいこと】

・"俺のため"という魂胆が見えると冷める

・準備もできずに連れてこられても相手は困る

・わくわく感や余韻の存在を忘れずに

<著者プロフィール>
清田隆之/桃山商事
1980年、東京生まれ。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける恋愛の総合商社「桃山商事」代表。男女のすれ違いを考える恋バナポッドキャスト『二軍ラジオ』も更新中。「日経ウーマンオンライン」や「messy」でコラムを連載中。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)がある。
Twitter @momoyama_radio

タイトルイラスト: 清田隆之