ホントに「彼女=加害者/彼氏=被害者」なのか

彼女の愛情が重い。よく聞く話ですね。束縛される、詮索される、依存される、いろいろ求められる──。そういう"太い関心の矢印"を向けられたときに心地悪さを感じ、「重いんだよ!」と言ってはねのける彼氏……いるいる、いますね。超いると思います。

こういう話を聞くと、つい「彼女=加害者/彼氏=被害者」という構図のように捉えがちです。求めすぎの彼女、困ってる彼氏。って、不思議とそう見えてしまいます。でも、果たしてホントにそうなのでしょうか?

これを物理的条件に置き換えて考えると、どうでしょう。例えば、誰かが何かを持ったときに「重い」と感じたとします。そこには、「持ったものが実際に重かった」という要素の他に、「持つ側の腕力が弱かった」という要素だってあるはずです。

何だか逆にわかりづらいたとえだったような気もしますが、要するに何が言いたいのかと言うと、彼氏が「重い」と感じたとき、そこには「彼女の愛情が過剰だった」という可能性の他に、「彼氏の受け止める力が弱かった」という可能性だって実はあるわけです。なのに、彼氏はこれを検証もせず完全に棚上げしている。まるで「自分は被害者だ」と言わんばかりに……。ここ、要注意です!

例えば桃山商事の佐藤広報はかつて、つき合っていた彼女に「重い」と言ってしまったことがあります。もっと連絡をマメにしてほしい。私のことをどう思っているのかわからない。この先のことをどう考えているのか? そういうことを彼女に言われ続けた揚げ句、佐藤広報は「重い」と言って投げやりな態度に出てしまったようです。

これだけ聞くと、確かに佐藤広報の気持ちもわかるような気がします。いろいろ言われて大変だったろうな……。そういう同情が集まるかもしれません。しかし、彼女の言い分をよくよく眺めてみると、その根底には「不安」があります。向こうから電話がかかってくることはないし、メールの返信も遅い。イマイチ「好かれている」という実感が持てないし、二人の未来について具体的に考えている様子も見えない。そういう状況に、彼女は不安を抱いていたのだと思います。

「重い」という表現は、"幼稚さ"の表れ?

彼女が佐藤広報にいろいろ質問したり気持ちをぶつけていたりしたのは、おそらくこの不安を解決したいからです。そのために話し合いを求めているのに、彼氏は面倒くさそうにして、ちゃんと向き合おうとしてくれない。それどころか、逆に「重い」といって非難してくる始末……え? これって私が悪いわけ?

不安を発生させている原因は彼氏側にもあります。つまりこれは「二人の問題」なわけです。それを彼氏はすべて彼女のせいにして、自分を被害者の側に位置づけた。どうでしょう、これってダサくないですか?

相手の不安を理解し、連絡に関する意識を改める。自分が相手のことをどう思っているのか、気持ちをちゃんと伝える。この先どうしていくか、逃げずに向き合って話し合う。彼氏は、そういうことをすればよかったわけですよね? なのに「重い」と言って彼女を責めた。なぜこんなことをしたのかといえば、つまるところ「面倒くさい」&「悪者になりたくない」からです。

彼女は不安や疑惑を押しつけたいわけじゃなく、二人の関係をよくするためにコミュニケーションを取りたかったのだと思います。それなのに、彼氏は「怒られてる!」と受け取り、自分を正当化するために相手を責めた。これってもう、親に小言を言われたとき、「うるせぇなババァ!」って言い返す中学生の息子と同じレベルですよね?

精神のキャパシティに余裕がないし、自分の気持ちを言語化する力がないし、相手の気持ちに対する想像力がない。ずっと愛情を持って見ていてほしいけど、ちょっと干渉されると鬱陶しくなってしまう。でも、「面倒くさい」って言うと自分が悪者になっちゃうから、相手のせいにする……。つまり「重い」という表現は、"幼稚さ"の表れでもあるかもしれないということです。どうでしょう、めっちゃダサくないですか?

相手を縛り続ける"呪いの言葉"

しかし、これだけなら「ダサい」のひと言で片づくかもしれませんが、問題はもっと深刻です。「重い」と言われた彼女たちは、その言葉に囚われ続けてしまうからです。

そりゃそうですよね。こんなヒドい言葉を言われたら、誰だってヘコみます。しかも、具体的に何がどう重かったのかわからないので、無限に気にしてしまう可能性がある。その不安はやがて、「相手との関係において、私にも確かに重いところがあった」という範疇を超え、「私って重い女なのかな?」「私の愛情ってウザいのかな?」「もう恋愛するのが怖い……」というように、自分の自信や尊厳を蝕み始めます。

こうやって誰かに投げかけられた言葉によって言動を縛られてしまうことを"呪い"と呼びますが、「重い」というのはまさに呪いの言葉です。言った側は単に面倒くさいから言っただけで、言ったことすら忘れてしまうこともあったりするわけですが、言われた方はそれを気にし続け、囚われ続けてしまう……。ああ、恐ろしい!

誰かから関心や愛情を向けられることは、基本的にうれしいことであるはずです。ていうか、それを感じ合うことが恋愛の醍醐味であるともいえます。それを鬱陶しがってはねのけるなんて……。男たちはいつも、大事なことに後から気づきます。俺が「重い」と感じていたものは、実はかけがえのない愛だったんだ! 失ってから気づくなんて……俺のバカ!

彼女はもう戻ってはきません。久しぶりを装ってメールしても、返ってくるわけありません。その愛情は、もう他の誰かに向けられていることでしょう。後悔先に立たず。一生孤独に過ごしてください。永遠に過去を懐かしんでいてください。ご愁傷さまでした!

……なんて風になりたくなかったら、「重い」なんて卑怯な言葉を使わず、相手とちゃんと向き合うメンタルを養っていきましょう。その方が絶対イケてるから! ダサい男になってはダメ、ゼッタイ\(^o^)/

今回のマナーポスター「彼女に『重い』って言うな!!」

今回のマナーポスター「彼女に『重い』って言うな!!」(イラスト:清田隆之)

まとめ

・彼女に不安が生じたら、それは二人の問題

・「重い」という言葉は幼稚なメンタルの表れ

・ちゃんと相手と向き合える男の方がイケてる

<著者プロフィール>
清田隆之/桃山商事
1980年、東京生まれ。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける恋愛の総合商社「桃山商事」代表。男女のすれ違いを考える恋バナポッドキャスト『二軍ラジオ』も更新中。「日経ウーマンオンライン」や「messy」でコラムを連載中。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)がある。
Twitter @momoyama_radio

タイトルイラスト: 清田隆之