妊娠中には薬を飲んでもいいのだろうか

妊娠中は服用を控えた方がよい薬とは?

薬剤師として30年以上のキャリアを誇るフリードリヒ2世さんが、日常のさまざまなシーンでお世話になっている薬に関する正しい知識を伝える連載「薬を飲む知恵・飲まぬ知恵」。今回は妊娠中の服薬に関するお話です。

「All or Noneの法則」とは

「妊娠に気づかず薬を服用してしまう」「妊娠中・授乳中のお母さんが病気のため薬を飲む必要があり、その薬が赤ちゃんの成長に何か影響するかもしれない」――。これらの状況は、誰にでも起こり得ます。そこで今回の話題は「妊娠と薬」です。これから赤ちゃんを授かりたいと思っているカップルにも役立つ情報になればと願っています。

女性が妊娠前に薬剤を服用していて、受精の前にその薬のせいで精子や卵子が実際にダメージを受けた場合、両者はそもそも結合する能力を失います。そのため、妊娠そのものが成立しにくくなります。

では、受精直後に薬を服用した場合はどうでしょう。受精後2週間以内はまだ受精卵から「胎芽」へ成長する途中なので、傷ついた細胞は他の細胞でまかなえます。市販の風邪薬や頭痛薬、胃腸薬などやごく短期間に飲む薬は、妊娠4週(月経予定日を過ぎているのに月経が来ないころ)までに中止すれば、赤ちゃんに影響することはほとんどないと言えます。

もし仮に受精後2週間以内に薬の影響を受けた場合は、受精卵が着床しないかあるいは流産する、または完全に細胞が修復されて健康な赤ちゃんを出産することになると考えられています。ですから、いま妊娠が順調に経過していれば、赤ちゃんへの影響はなかったと考えてほぼ大丈夫です。

これを「All or None(全部か何もないか)の法則」と呼びます。しかし、薬剤によっては注意を要する器官形成期(妊娠4週~10週くらい)まで体に残留する可能性があり、この法則が働かない場合があるので要注意です。ある薬とその妊娠中の危険性については、薬剤の添付文書をよく読むか医師・薬剤師に確認しておきましょう。

胎児の成長に薬が影響することについて、時系列的に大まかにまとめてみましょう。

妊娠1カ月

薬の影響で流産する可能性はゼロではありませんが、薬の影響はほとんど心配する必要はありません。ただし、ワクチンのような体に長く残る薬を使うと流産の恐れがあります。

妊娠2カ月

「絶対過敏期」などと言われます。薬による障害が体に最も起こりやすい「危ない時期」です。どうしても薬を飲む必要がある場合は、一般用医薬品(OTC)を使うのではなく医師に処方せんを書いてもらうのがよいでしょう。その場合、医師には妊娠中であることを必ず知らせておきましょう。薬剤師に相談するのもよいと思います。

妊娠3~4カ月

薬の影響(危険性)が少しずつ低下します。ただし、ホルモン剤やワルファリン(抗血栓薬)、一部の精神科用薬は危険がありますので要注意です。

妊娠5カ月~出産

胎児の発育に影響することがあります。「安定期」には薬のリスクも低下しますが、アスピリン(鎮痛解熱薬)には注意しましょう。後ほど詳しく説明しますが、この薬を飲んでいると胎児の動脈管が狭くなって、最悪の場合は死に至ることもあるからです。