健康診断、受けていますか。受けたものの二次検査の指示を放置していたり、「まだ元気だし」と現実逃避していたりしている人、いるのでは。

クリニック院長でありながら、産業医としても活動する木村至信氏(以下、キムシノ氏)に話を伺いました。

  • 健康を過信していませんか?

45歳を超えたら高血圧などに注意

「自分はまだ若い」と思っていても、体の細胞は日々衰え、老化は確実に訪れます。30代半ばぐらいから、「手や足の指が痛い」「ビールはプリン体があるからちょっと……」などと言い始める人が増えます。「風が吹いても痛む」と言われるところからその名がある、痛風です。

――先生、痛風とはどんな病気ですか。また、男性の方が多いようですが、女性はなりにくいのですか?

キムシノ氏 「過剰となった尿酸が血液に溶けきれず結晶化し、関節に沈着します。白血球がこれを異物として攻撃し、炎症が起きる病気が痛風です。手足の指やひざなどに痛みが起きることで発症に気付く方が多いです。放置すれば、ひざの激痛や足の甲の変形などを起こしかねません。投薬治療で改善しますが、内服をやめると急に悪くなったり、内服開始時に痛んだりすることもあり、専門医にかかって頂きたい疾患です。

男性の方が、女性より圧倒的に痛風になりやすく、近年は発症が若年化し、30代、40代の男性に増えています。原因は、アルコールの過剰摂取や魚卵の食べすぎ、ストレス、肥満などです」。

――男性ホルモン、女性ホルモンのせいでしょうが、生活習慣の影響もありそうですね。女性の方が比較的食事に気を使い、健康的なイメージがありますがどうでしょう。

キムシノ氏 「45歳を超えたら男性も女性も、これまで以上に健康管理を強く意識しなければなりません。働き盛りの熟年は高血圧を放置して、心筋梗塞や脳梗塞など循環器疾患を突然発症する例があります」。

健診で重篤な生活習慣病を避ける

健康診断の結果を受けて二次健診を勧められたとしても、拘束力はありません。とはいえ、重篤な生活習慣病は早期に発見し、治療するべく、熟年層は必ず二次健診に行きましょう。キムシノ氏が、ちょっと怖いエピソードを教えてくれました。

キムシノ氏 「私が以前担当した中で、若干の高血圧で二次健診に行き、『たまに頭が痛い』という雑談から、では念のためとたまたま撮った脳のCTで、脳動脈瘤が見つかった方がいらっしゃいました。脳、胸やお腹の動脈瘤は、このように偶然見つかることがほとんどです。その方の健康診断の内容は、高血圧、脂質代謝異常、飲酒歴に指摘が入ったぐらいで、それぞれ程度は重いものではありません。症状が出たときには、命に関わることも多いのです。自宅で吐血して死亡したケースもあります」。

CTやMRIの画像診断を習慣に

会社に常駐の産業医がいるなら、日常的に軽い相談などができ、病気の早期発見が期待できます。また、健康なうちから、病気予防や食事についてアドバイスをもらうことができます。産業医がいないなら、自分で決めた時期に毎年健康診断を受け、自分の身体を定期的に点検しましょう。そして、必要ならば、すぐに二次健診へ。

キムシノ氏は次のように言います。

「二次健診を受けることになったら、脳や肺などのCTやMRIの画像診断も受けることをお勧めします。脳のCTは、一年に一回撮るのが理想的です。二次健診を申し込む時に、『脳や肺などのCTやMRIの画像診断希望』と伝えればやってもらえます。検査料はマチマチですが、だいたい1万円以下で済むでしょう。

MRIといえば、長いトンネル状の狭い装置に入る検査です。装置は強力な磁石でできていて、狭くて暗くて怖いですよね。閉所恐怖症などのためMRIに恐怖感があるなら、事前に精神安定剤を飲んでから臨むという方法もあります」。

取材協力:木村至信(きむら・しのぶ)

横浜市の馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・産業医・医学博士。テレビやラジオのレギュラー番組を持つタレントでもあり、「木村至信BAND」でメジャーデビューする女医シンガーの一面も。