今年の春はコロナ禍と花粉症の季節。加えて、新生活のストレスにより、「やる気が出ない」「頭痛がする」などの不調を感じている人もいるかもしれません。今知れば、毎年春に役立つ健康知識を医師・医学博士の木村至信氏(以下、キムシノ氏)に健康管理のためのポイントを聞きました。

  • 新生活での健康管理は大丈夫ですか?

春の「やる気が出ない」に要注意

健康を保つ、病気を防ぐための鍵を握るのが自律神経。自律神経は、交感神経と副交感神経という2つの神経から構成され、これらがバランスを取りながら身体の働きを調節します。この働きをまとめると、以下のようになります。

交感神経

・主に日中、活動している時や緊張している時、ストレスを感じている時に働く。
・心身を活発にする神経である。

副交感神経

・主に夜、眠っている時やリラックスしている時に働く。
・心身を休め回復させる、身体のメンテナンスを担う神経である。

理想は、交感神経と副交感神経が、ほどよいバランスを保ち整っていること。1日ごと、日中内での寒暖差や気圧変動が大きい季節は自律神経の乱れが起きやすくなるため、食事や睡眠、運動などにいつも以上の注意を向けましょう。

花粉症だけじゃない、春の要注意ポイント

激しい寒暖差

寒暖差に対応するため、交感神経が活発に働く。そのため、たくさんのエネルギーが消耗され、疲れやだるさを感じやすくなる。

めまぐるしい気圧の変化

低気圧と高気圧の入れ替わりが頻繁に起こるため、自律神経の切り替えがうまくいかなくなる。低気圧の影響で血液中の酸素濃度が下がり、日中の眠気や身体のだるさを感じやすくなる。

日照時間の変化

日照時間が長くなるため、朝早く目が覚めること、夜ふかしをしてしまうことが増え、生活リズムが崩れやすくなる。

生活環境の変化

自分自身や家族の生活が大きく変化する季節のため、緊張感やストレスを感じ、自律神経のバランスが乱れやすくなる。

花粉症

花粉症は、花粉から身体を守ろうとする防衛反応が過剰になっている状態。免疫機能も過剰は良くない。体力が低下し、眠気やだるさを感じやすくなることも。

春に流行しやすい新型コロナ以外の感染症

新型コロナウイルス感染症流行以来、手洗いやうがい、マスクなどの徹底により、インフルエンザ感染者が激ったという説もあります。とはいえ、春に流行しやすい感染症はあるので、予習しておきましょう。

麻疹(はしか)

発熱、鼻汁、くしゃみといった風邪とよく似た症状から始まる。口の中に小さな白い斑点(コプリック斑)が現れ、数日後体全体に発疹が出てくる。免疫がつくので、一度かかると大人になるまで感染しにくい。子どもがかかりやすかった病気だったが、近年では成人感染者が増加している。

風疹(ふうしん)

「三日ばしか」とも呼ばれる。通常耳の後ろのリンパ節が腫れ、顔や耳の後ろに発疹が現れ身体にも広がる。発熱することもあり、発疹が消える頃にかゆくなる。大人になってからかかると発熱、発疹が出ている期間が長く、関節痛がひどくなる。妊娠初期の女性が感染すると胎児に影響が出ることも。

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

耳、あごの下、頬の後ろあたりに腫れの症状が出る。発熱することが多く、腫れの痛みが強く出ることも。感染力は弱めで一度かかれば、以降は感染しない。

紹介した麻疹、風疹、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は主に子どもの間で流行するが、大人がかかると重症化することもあるので要注意です。

いつも以上に食事や睡眠などの基本を意識

注意すべき点の多い春ですが、対策は明確。栄養バランスの整った食事や十分な睡眠は何よりも大切。ストレスを溜めないよう心がけ、規則正しい生活を意識しましょう。

食事は間食を控え、バランスよく

食事をとると、消化のために副交感神経が活発に働き、身体はリラックスモードになる。間食すると交感神経が働いたままになり、自律神経のバランスが乱れる。偏った食事を避け、バランスの良い食事をとるように。

こまめに身体を動かす

運動をすると、自律神経のバランスを整えるセロトニンが分泌される。ウォーキングやサイクリング、水泳などの有酸素運動が効果的。歩幅を広げる、きれいな姿勢を意識して過ごす、こまめに動く、階段を使うなど、日常生活を変えるだけでも効果がある。

入浴時は湯船に浸かる

シャワーだけで済まさず、湯船に浸かる。38~40℃のお湯に10~20分間入浴すると、副交感神経が働き、自律神経のバランスが整う。炭酸ガス入りの入浴剤もお勧め。

睡眠をしっかり取る

スムーズで深い眠りを誘うためには副交感神経を働かせ、心身をリラックスさせることが重要です。就寝前に目元や首元を40℃くらいの蒸しタオルやアイマスクなどで温めると、睡眠の質が向上する。

衣服で温度調節

朝晩と日中の寒暖差が大きくなり、温度変化に身体を適応させるため、衣類による温度調節が必要不可欠。マフラーやカーディガンなどを活用しよう。

花粉症対策

外出時には眼鏡やマスク、帽子などを着用して花粉にできるだけ触れないように。花粉症の症状がひどい人は、花粉が飛び始める2週間前から薬を服用することで症状を軽減できる。

取材協力:木村至信(きむら・しのぶ)

横浜市の馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・産業医・医学博士。テレビやラジオのレギュラー番組を持つタレントでもあり、「木村至信BAND」でメジャーデビューする女医シンガーの一面も。