病は突然やってくるもの。元気な時はドラッグストアで簡単に薬が買えますが、体調が悪い時や外出が難しい時に備えて、薬箱を見直し、適切な常備薬をストックしましょう。

  • 薬箱の中身を見直してみませんか?

災害を想定し薬箱もアップデート

薬箱の中に、いつ買ったか覚えていないような薬が眠っていませんか? 「捨てるのはもったいないから」「まだ効くはず」はダメ。使用期限が過ぎている薬は服用してはいけません。医師・医学博士の木村至信氏(キムシノ氏)に、詳しく聞きました。

「薬の使用期限は、適切な環境下で保管されることが条件です。保管の原則は、薬の大敵である『高温』『湿気』『直射日光』を避けること。専用の救急箱や缶などに入れて、涼しい場所に保管します。よく目にする冷暗所とは、文字通り冷えて暗い場所。1~15℃が最適な温度とされ、冷暗所での保管指定のある薬剤は、夏の暑い時期なら冷蔵庫での保管が理想的です」。

そろえておきたい基本の常備薬

最近はさまざまな市販薬があり、何を選ぶべきか迷ってしまいます。キムシノ氏は、「なんでもあればいいのではなく、早く処置すると早く治る病気に備えた内容にするべきです」と指摘します。これに沿って、「元気な時にそろえておくべき常備薬」を教わり、以下にまとめました。

風邪薬

のど、鼻など、ピンポイントで症状を緩和させるタイプではなく、家族で使える総合感冒薬を一つ常備。ただし、子どものいる家庭では、アスピリンやイブプロフェンなど、子どもが服用できない成分に注意して選ぶ。

解熱鎮痛剤

大人用と小児用では成分が異なる。アスピリン喘息やピリンアレルギーを患う人が服用できない薬もあるので、成分をよく確認する。

抗アレルギー剤

花粉症や鼻炎、皮膚のアレルギー症状を緩和する薬。こうした症状を患っている人が家族にいなくても、かゆみやじんましんの発症に備え、準備しておくとよい。

整腸剤

便秘、軟便のどちらにも対応できる。主な成分である善玉菌は、種類ごとに特徴もさまざまなので、気になることを薬剤師に聞き、納得できるものを購入する。

塗り薬

常備薬としては、ステロイドが入っていないものがお勧め。かゆみ止めと、切り傷用2種類欲しいところ。

湿布

温タイプ、冷タイプ、伸縮性が強いものなど、種類は豊富。いわゆる「白くてスーッとする」、最も一般的な「シップ(パップ剤)」タイプは、急性症状に働きかけてくれるため、常備薬に適する。

経口補水液

子どもや高齢者のいる家庭に必須。

マキロン(消毒薬)

市販の中で一番消毒能力がある。

絆創膏

何度も貼り替えることで、傷口を早くきれいに治す。サイズ違いで、たくさん準備しておこう。

包帯

サポーターの代わりになるような、きつく巻けるものが良い。

目薬

目を洗浄できるように、防腐剤の入っていない1回使い切りのもの。

睡眠補助剤

どうしても眠れない時のために用意しておく。

意外と出番があるもの

・一回使い切りの滅菌ガーゼとそれを貼るテープ
・体温計、血圧計、パルスオキシメーター
・ピンセット

いらないもの

下痢止め

下痢止めはなくて良い。下痢は細菌やウイルスが腸内にいる証拠。便で出してしまうことが大切。下痢止めにより感染性腸炎が悪化することもある。下痢がひどければ病院や救急病院へ行くほうが大切。

二日酔い薬や胃薬

即効性はなく、ただスーッとさせるだけ。それなら、水分を多くとることで代用可能。胃が弱い人は、胃薬に加え胃粘膜保護剤も用意し、胃が痛くなる前に予防的に飲む。

「常備薬のメリットは、有事の際に役立つことです。災害が発生してライフラインに不便が生じれば、疾病も発生しやすくなります。時々ドラッグストアをのぞいて、薬を入れ替えたり、追加したりして、中身をアップデートしていきましょう。薬箱自体もおしゃれなもの、インテリアになじむものなど、種類も豊富です」(キムシノ氏)。

2011年3月の東日本大震災から10年。薬箱の中身を見直し、今後も時々チェックする習慣をつけましょう。

取材協力:木村至信(きむら・しのぶ)

横浜市の馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・産業医・医学博士。テレビやラジオのレギュラー番組を持つタレントでもあり、「木村至信BAND」でメジャーデビューする女医シンガーの一面も。