マレーシアは国の宗教をイスラム教としているため、フラッグキャリアであるマレーシア航空では当然のことながら、イスラム教の戒律を守っている。フライトの前にはモニターにアッラーの神への祈りの言葉が映し出され、旅の安全を祈ってくれるし、食事はイスラム教徒も安心していただくことができるハラルフードだ。
ハラルフードってどんなもの?
イスラム教では豚肉、そしてラードなどの豚由来のもの、アルコール類はNG。そうした材料を一切使用しておらず、同じキッチンで豚肉が調理されてもいない、「イスラム教徒も食べてOK! 」という認証を与えられた食べ物をハラルフードという。マレーシア航空では、一般のキッチンとハラルのキッチンをきっちり分けているケータリング会社に機内食づくりを発注しており、機内で出る食べ物は全てハラルフードである。
と、聞くと、ケバブとかフムスとか中東の料理が頭をよぎるが、そこはさすが日本路線。成田=クアラルンプール線では和食もちゃんとある。今回紹介するのはエコノミークラスで提供されたものだ。
ビールもあるのでご心配なく!
内容は前菜に梅風味のそうめん、押し寿司とふきと豆の煮もの、メインには白身魚のあんかけにごはん。「普通に和食じゃん! 」とツッコミをかけたくなるが、材料に豚肉が使われていないだけでなく、煮ものもみりんで味付けてはいないはずだ。見た目も味も普通の和食なのに、ちゃんとハラルなのである。
さらに、さすが多民族国家で多様性を重んじる国・マレーシア。ドリンクにはアルコール類をチョイスすることができ、イスラム教徒でない人だって、快く食事を楽しむことができる配慮はばっちりだ。
洋食はベジタリアンにも満足
帰路のクアラルンプール=成田線では洋食をチョイス。こちらのメインディッシュは牛肉で、色的にも一見するとマディラソース(マディラ酒を加えて煮込んだソース)かな、と思うのだが、どうやらトマトの煮込みのようだ。徹底してアルコールを使わない料理であるものの、ビーフのコクとトマトの酸味がナイスに絡んだ一品に仕上がっている。「お酒がなくてもこれだけ作れるんだな」と、ちょっと感心。
前菜のポテトサラダが酸味強めの好みの味だったこともあり、なかなかおいしくいただいた。付け合わせの野菜は若干柔らかめだったものの、ちゃんと食感が残っている。マッシュポテトはクリーミー、かつ味つけは意外とあっさりしているところが良かった。
着陸前のスナックは本当に軽いもので、パイ生地で具を巻いたもの。この時のチョイスはなく、ベジタブルのみだったが、サクサクとしたパイ生地に包まれたとろりと煮た温かい野菜が、乾燥した機内では特にうれしく、ぺろりとたいらげてしまった。
思うに、マレーシアの人はハラルはもちろん、ベジタリアンとか雑食とか、いろいろな人に慣れているのだろう。その誰にもマッチするメニューが考えられているのが、マレーシア航空の機内食なのだろうな、という感銘を受けたのであった。
※記事中の機内食は、2017年2月の成田=クアラルンプール線で提供されたもの