元々は鉄道の主役であった貨物輸送。時代が変わり扱いは小さくなったものの健在で、今ではエコな輸送手段として新たな注目を集めています。被写体としても、機関車の力強さ、貨車の多様さなど、旅客列車とは違う風情があります。今回は、いわゆる"ネタガマ"を中心に、貨物列車の撮影について解説します。

ある朝の出勤途中、テツヤくんは、踏切にたくさんの鉄ちゃんがいるのを見ました。しかし、皆が撮影していたのはただの貨物列車。何でこんなに人が集まったのかひとりの鉄ちゃんに質問してみると「"ネタガマ"ですよ」と一言。「さっきの貨物列車の機関車は、つい先日引退した寝台特急を牽引していた機関車なんですよ。貨物用の機関車とはラインが違うでしょ」と、うれしそうです。撮影はおろか、まともに機関車を見ていなかったテツヤくんは、もう一度見たいと思い、次はいつ来るのか尋ねてみましたが、「さぁ、もう来ないんじゃないですか? 」と、軽く流されてしまいました。

ネタガマというのは、撮影のネタになるような特別なカマ(機関車)ということです。珍しい塗装、仕様を施された機関車や、稀少な存在の機関車など、話題性のある機関車全般を指します。例をあげると、お召し列車に充当された経歴のある機関車や、国鉄時代の古い塗色をした機関車はとても人気がある"ネタガマ"です。また、甲種回送(第30回参照)のときにだけ登場する珍しい機関車も人気の"ネタガマ"になります。いずれも、興味がなければ見過ごしてしまう存在ですが、機関車好きにはたまらないのです。

"ネタガマ"を撮影するチャンスは限られているため、場の雰囲気は非常にアツくなります。鉄道用地内に入らないのはもちろんのこと、譲り合って平常心で撮影したいものです。

にわかに"ネタガマ"の撮影をしたくなったテツヤくん。でも、貨物列車の情報は少ないです。何から調べたらいいかわからず、そのうちだんだんどうでもよくなってきてしまいました。

これは、初心者鉄ちゃんにとっては敷居の高い調べもの。大前提として、貨物列車の情報収集の基本を知っておかなければ話になりません。まず押さえておきたい情報源は、時刻については年1回発行される『貨物時刻表』、機関車の運用については、鉄道雑誌の貨物列車情報特集号です。そして、"ネタガマ"の情報は、Webサイトや掲示板で探すのが一般的です。専門的な話題になりますので、記事を読み解くにはある程度の用語等の知識が必要になります。

貨車は、機関車以上に多様で、珍しいものや古くて味のあるものは人気があります。機関車よりはマイナーな存在になりますが、こちらの情報も、Webサイトや鉄道雑誌をこまめにチェックすることが基本です。国鉄型の機関車や貨車は、現在、少しずつ新型への置き換えが進み、"ネタガマ"になりつつあります。なじみの勇姿をしっかりと記録しておきたいですね。

ミニ情報
夜の主役、貨物列車

先日、最後のブルートレインが廃止され、夜行快速も臨時になってしまった東海道本線、山陽本線ですが、夜汽車がなくなったわけではありません。多くの貨物列車が、夜通し働いているのです。だんだん夜が短くなるこれからの時期、早起きして貨物列車の撮影にチャレンジするのはいかがでしょうか。