この事案でCさんは、テイクアウトの料金しか支払っていないのにイートインしています。従来はテイクアウトでもイートインでも料金が同じでしたが、2019年10月からは消費税率が違っているのでCさんは本来の料金より低い金額しか払わないでイートインしてしまったことになります。

このようなCさんの行為は刑法上の「詐欺罪」に該当するでしょうか? Cさん自身「当初はテイクアウトするつもりだったから問題はないはず」と考えており、「だますつもりがなかった」なら詐欺罪にならないとも思えます。

まずは詐欺罪の要件から確認してみましょう。

詐欺罪の要件

詐欺罪の要件は、以下の通りです。

■騙す行為

詐欺罪が成立するには「相手を騙す行為」が必要です。たとえば飲食店などでお金を支払うつもりがないのに注文すると、騙したことになります。

■相手の錯誤

次に「相手が勘違いしたこと」が必要です。たとえば本当はお客さんがお金を払うつもりがないことに気づかず、「払ってくれる」と信じてしまうことなどです。

■処分行為

被害者が騙された結果、財産を処分することが必要です。たとえばお金を払ったり物を渡してしまったりすることです。飲食店の例で言うと、料理を提供してしまうことが処分行為です。

■因果関係

騙した行為と被害者の勘違い、処分行為との間に因果関係が必要です。騙されたこととは無関係にお金を渡したり物を交付したりしても詐欺罪になりません。

■故意

詐欺罪は「故意犯」なので、行為者に故意が必要です。つまり「わざと」「騙してやろう」「財物を取得してやろう」という意思がないと詐欺罪になりません。偶然あるいは結果的に相手を騙した形になってしまった、という場合には詐欺罪は成立しません。

Cさんに詐欺罪は成立しない

以上の詐欺罪の要件をCさんにあてはめるとどうなるでしょうか? Cさんの場合、クレープの購入時には「テイクアウトするつもり」だったので、お店側をだます意思がありません。そこで「騙す行為」や「故意」がないので詐欺罪は成立しません。

仮に監視カメラなどによって後に今回の件が発覚したとしても、Cさんが逮捕されたり刑事罰が適用されたりすることはないでしょう。

購入時からイートインするつもりだった場合はどうなる?

今回、Cさんは「テイクアウトするつもり」でクレープを購入していますが、もしも「始めからイートインするつもり」だった場合には状況が大きく変わってきます。

その場合、Cさんは「本当はイートインするつもり」なのに「テイクアウトします」と言っているため、お店を騙したことになります。またお店は、テイクアウトすると騙されて、「クレープ」という財産を渡しています。お店側が、テイクアウトと発言したCさんが、本当はイートイン予定であることを知り、クレープを渡さなかったのであれば、処分行為と因果関係も認められます。

本件でも、Cさんにはじめから「イートインする意思」があった場合には詐欺罪が成立していた可能性があります。