「ゲームソフトを借りていった友人が翌日に引っ越しをし、ゲームソフトが戻ってこなかった」――。こういった理不尽な状況に遭遇して沸々とした怒りを覚えた経験を持つ人もいるのではないだろうか。

このケースのように、日々の生活において社会通念上、「モラルに反するのではないか」と感じる出来事に遭遇する機会は意外と少なくない。そして、モラルに欠ける、あるいは反していると思しき行為であればあるだけ、法律に抵触しているリスクも高まる。言い換えれば、私たちは知らず知らずのうちに法律違反をしている可能性があるということだ。

そのような事態を避けるべく、本連載では「人道的にアウト」と思えるような行為が法律に抵触しているかどうかを、法律のプロである弁護士にジャッジしてもらう。今回のテーマは「無断のTwitter拡散」だ。

  • 本人に無断で撮影した写真をSNSで拡散する行為は法律的にセーフ? アウト??

    本人に無断で撮影した写真をTwitterで拡散する行為は法律的にセーフ? アウト??

14歳の男子中学生・F君はつい先日、誕生日に念願のスマートフォンを両親に購入してもらった。周囲の同級生は皆所持しており、疎外感を覚えていただけにずっと欲しかったスマホ。手にしてからは、興味があったアプリをダウンロードしたり、動画配信サイトで好きなアニメを見たりと、今までのうっぷんを晴らすかのように思う存分、スマホを活用していた。

そんなF君が今はまっているのが、自分が面白いと思った人やモノをスマホで撮影する「面白風景撮影」だ。ある日、道端でネクタイをはちまき風に巻いて泥酔していたスーツ姿の男性を撮影し、何の気なしにTwitterにその寝顔を投稿したところ、これまでのどのつぶやきよりも「いいね」が付いた。「皆が面白いと感じるモノをどんどん投稿すれば、もっと多くの人がリアクションして喜んでくれるかもしれない」――。そう思ったF君は、「面白風景撮影」に没頭するようになった。

その日以来、街中でド派手な頭髪をした人や奇抜なファッションをした人、さらには取っ組み合いの喧嘩をしている人たちなどを撮影。「#今日の面白い人」というハッシュタグと一緒に、顔が特定できるような形で連日のようにTwitterに投稿した。ある投稿に「あなたのしていることは肖像権の侵害にあたるからやめたほうがいい」とのコメントがされていたが、肖像権の意味がよくわからなかったし、「投稿された人たちも有名になって嬉しいはずだ」と思い、その後も投稿を続けた。

このようなケースでは、F君の行為は法律違反にあたるのだろうか。安部直子弁護士に聞いてみた。