「お仕事なにされているんですか?」
この質問をされたことがない社会人はいないだろう。きっとこの記事を読んでいる読者の方もされたことがあるはずだ。
「会社員」「フリーランス」と大きく括ってしまえば簡単だが、日本国内にはさまざまな職種が存在する。
その中でも記者として身近な職種の一つが、取材のサポートをしてくれる各社の「広報部」だ。
この連載では「広報部」の仕事に着目。普段は取材の裏方として活躍しているさまざまな企業の広報担当者に話を聞く。
第3回目となる今回はお茶をはじめとしたさまざまな飲料を展開する清涼飲料水の大手メーカー「伊藤園」。伊藤園 広報部 広報課の山本怜奈さんに「広報の仕事」について聞いた。
紙とWeb、2つの社内報を使い分ける伊藤園の社内広報
山本さんが所属する伊藤園の広報部には「広報課」と「IR課」があり、広報課ではニュースリリース作成やメディア対応などの社外広報、社内報の運営を中心とした社内広報、コーポレートサイトやSNSなどのオウンドメディア運営などを担当している。
広報課は7人で構成され、社外広報、社内広報、オウンドメディアなどに分かれて、それぞれ対応している。山本さんは、社内広報にあたる紙とWebの2種類の媒体の社内報の運用を主軸にしながら、複数の領域を横断して業務を行っているという。
紙媒体の冊子版社内報は現在、年2回発行されており、会社として大きく伝えたいテーマを特集として取り上げ、「じっくり味わう社内報」として位置付けられている。一方のWeb社内報では、速報性を重視し、社内で起きている出来事や各部署・拠点から寄せられた情報などを随時発信しているという。
「紙媒体の社内報は時間をかけて読んでもらう媒体として、Webの社内報は『一緒にお茶する』感覚で情報に触れてもらう媒体として使い分けています」(山本さん)
社内報の記事の作成については、企画から取材、質問内容の作成、撮影したいシーンの検討まで山本さん自らが担当。直近では、1976年から取り組んでいる茶産地育成事業が2026年で50周年を迎えるため、静岡県や奈良県の茶農家まで取材に行ったそうで、日本茶市場を取り巻く環境や現場の声を紹介しながら、伊藤園がこれまで行ってきた取り組みと今後を伝える企画を担当しているという。
Web社内報をリニューアル 閲覧数・訪問者数が約2倍に
山本さんが広報部へ異動してから特に印象に残っている仕事の1つが、2026年5月に実施したWeb社内報のリニューアルだ。
伊藤園では2022年からWeb社内報を開始した。それまで紙中心だった社内報にWebを加え、数年をかけて閲覧数や訪問者数を伸ばしてきたが、一定の利用が定着したことから、次の段階として、特に若手社員を中心としたインターナルコミュニケーションの活性化を目的にリニューアルが行われた。
山本さんはリニューアルにあたり、事前の社内周知、新コンテンツの企画、新コーナーの立ち上げなどを担当した。
「リニューアルにあたっては『広報側が発信したいもの』だけを考えるのではなく、『社員はどんな情報を必要としているのか』『どうすれば社員同士のコミュニケーションが生まれるのか』という社員目線を重視しました」(山本さん)
その結果、デザインや記事への導線を刷新したほか、社員自身が参加できる企画も新設した。リニューアル後には「見やすくなった」「社内情報を身近に感じられるようになった」といった声が寄せられ、記事へのコメントも増加。閲覧数と訪問者数は、リニューアル前後の1カ月間を比較して約2倍になったという。
社内報の名称も、従来の「Communi tea」から「Communi tea Cafe」へ変更。憩いの場である「カフェ」のように社員が集まり、コミュニケーションの中心となる“社内の交流拠点”にしたいという思いを込めて名付けられた。
特に新設した「Cafe Talk」では、所属部署を問わず社員が自ら取り組みなどを投稿できる。さらに意見を寄せられる仕組みも設け、広報部が社内のハブとなって関連部署へつなぐ。リニューアル後には、他部署から「社内報を通じて情報を発信したい」といった相談も寄せられるようになったという。
理系出身、営業事務から広報へ「文章を書くことに最初は苦労した」
山本さんは現在、伊藤園入社4年目。新入社員時は静岡県にある営業拠点の沼津支店に配属され、約2年半にわたって営業事務を担当していた。
顧客からの電話対応や請求書業務、勤怠・経費管理、売上計上データのチェックなどを行い、営業担当者が円滑に業務を進められるようサポートしていたが、その後、広報部へと異動して仕事内容は大きく変わったという。
「学生時代は土壌肥料学を専攻した理系出身で、文章を書く経験はほとんどありませんでした。広報部へ異動した当初は、言葉の使い分けや言い回しなどに苦労し、広報に関する書籍や参考書を読みながら知識を身につけてきました」(山本さん)
一方で、大学時代の専門知識が現在の仕事につながる場面もある。「茶農家を取材する際には、植物の生育や土壌に関する話を理解する上で、学生時代の経験が役立っています」と教えてくれた。
山本さんは伊藤園の広報部の特徴として「メンバー全員が営業現場を経験している点」を挙げる。
伊藤園の広報担当者は、山本さん以外のメンバーも全員が営業現場を経験している社員。営業現場で顧客や販売店と向き合い、商品がどのように消費者へ届くのかを知った上で広報を担当することで、現場の想いや伊藤園らしさを理解した情報発信ができることを強みとしている。
「社員が参加したくなる社内報」を目指して
そんな山本さんが今後、社内広報で目指しているのは「社員がより参加したくなる媒体」をつくることだ。
社内報を一方向の情報発信の場として終わらせるのではなく、社員同士だけでなくグループ会社同士のつながりも生み出し、組織としての一体感の醸成につながるきっかけにしていきたいという。
「広報部への異動は当初、私にとって予想外の部分もありました。しかし、振り返ってみるとこの仕事に出会えたことが自分を成長させる大きな転機になったと思います。広報部に来たことは、今思えば偶然ではなく必然だったのではないかと感じているので、これからも広報の仕事を通じて多くのステークホルダーの方々と関わり、もっとたくさん勉強して、知識をつけ、活躍していきたいです」(山本さん)
社内の情報を社員へ届けるだけでなく、社員同士をつなぎ、さらに会社と社外をつなぐ。山本さんが手掛ける社内報を通じて、これからもさまざまな人のつながりが生まれていくに違いない。




