「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 100点取った子どもを"ほめない方がいい"って本当?

    100点取った子どもを"ほめない方がいい"って本当?

子どもの自己肯定感を育てるための言葉かけはとても大切です。でも、ほめ方を間違えると逆効果になりかねません。「認めることば」と「ほめることば」はどう違うのか、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

子どもがテストで100点をとった時、つい「すごいね! きみは天才だね!」とほめたくなりますね。でもこれが逆効果だとしたら……? ドキッとしますが安心してください。理由がわかれば、うまくことばをかけてお子さんの力を伸ばせます。

前回考えたように、ほめ方を間違えると、子ども自身が考えて行動する力を弱めてしまうおそれがあります。だから、認める言葉をかけて、自己肯定感を育てていきましょう。

"結果"ではなく"努力"を認めることで子どもは伸びる

子どもがせっかく頑張って100点をとったとき、「ほめなくていいの? ほめてはいけないの?」という疑問が出てきますよね。では、なんて言葉をかけたらいいのでしょうか。

「100点、嬉しいねー! すごく頑張っていたの知ってるよ!」など、子どもが頑張って努力したことを知っているお母さんお父さんだからこそ、その努力を認める言葉をかけることが大切です。

実際のところ、アメリカの研究で「結果をほめられた子」と「行動をほめられた子」とでは、その後の伸びに差が出ることがわかっています。この場合は、「100点取って天才だね」と結果をほめられた子どもたちは、自分は天才だから大丈夫だと勘違いして努力を怠り、その後成績は伸び悩みました。一方、「努力できたことが素晴らしいね」と行動を認められた子どもたちは、もっと努力を重ねて、さらに成績が伸びました。

親としては、せっかく褒めたのに、逆効果となってしまっては残念です。我が子が100点をとるのはとても嬉しいですが、点数よりも、それをとるために努力したことをちゃんと認められる親でありたいなと思います。

さらに、「100点とってすごいね」は、100点をとれなかった時に、子どもが自分はダメな子だと自己を否定することへ繋がってしまいます。100点取っても取れなくても、努力した自分が素晴らしいんだということを子どもが自覚できる言葉をかけたいですね。

「ほめる親」より「一緒に喜ぶ親」になる

子どもが頑張って目標を達成した時、「お母さんもすごく嬉しいよ!」「お父さんもすごく誇らしいよ!」と一緒に喜んでくれたら、絶対に嬉しいですよね。ときどき、頑張り屋のお子さんが、96点だった時に落ち込んでいて、親として何て言葉をかけたらいいのか、と(贅沢な?)ご相談を受けます。

お子さんが悔しがっていたら、どうぞ一緒に悔しがってください。落ち込んでいたら、一緒に落ち込んでください。そして、喜んでいたら、一緒に喜んでください。そのままのお子さんを認める、"共感"することが大切なのです。

親としては、「頑張ったんだから96点でも十分よ」と慰めたり、4点取れなかったことをアドバイスしたくなったりしますが、決めるのは"子ども"です。親は全力で寄り添いたいですね。

YOU(あなたは)ではなくI(わたしは)で伝える

「認めることば」か「ほめることば」か、ごちゃごちゃしてしまうと思ったら、良い方法があります。

・あなた(YOU)は天才ね、ではなく、お母さんお父さん(I)も嬉しいよ
・あなた(YOU)はこうすべき、ではなく、お母さんお父さん(I)も悔しいよ

つまり、「YOUではなく、Iで話し始める」とうまくいきます。子どもを決めつけた言い方にならず、子どもの行動を認める言葉になりやすいためです。

では、頑張って50点だった時にはどのような言葉をかければ良いでしょうか。そういう時は結果だけを見て叱らずに、まずはお子さんが頑張って正解した部分をまずは言葉にしましょう。「この問題を解けたのは、勉強したからだね」「努力したから解けたね」「授業をよく聞いてたからだね」などなど。そして、解けなかった問題も、努力すれば解けるようになることを一緒に考えられるといいですね。

他の子ではなく「過去の子ども自身」と比べる

親はついつい点数(結果)を見て、ほめたり叱ったりしたくなりますが、効果がないことはご存知の通りです。子どもは、知らなかったことがわかるようになった時に喜びを感じ、解けなかった問題が解けるようになった時に喜びを感じます。大人と同じです。

他の子と比べて、結果だけ見て叱ったりほめたりすることはもうやめましょう。数日(週間)前のお子さんと比べて、成長したことをことばにして伝えられると、子どもはどんどん伸びていきます。「昨日できなかったことが、今日はできたね!」「去年と比べて、とてもカッコよくなったね。おにいさんになったね」などなど。

成長の速度には個人差や年齢差もありますが、必ずお子さんは成長しているはずだからです。そして、それを知っているのは、世界中でお父さんとお母さんだけです。

子どもは自分が成長していることに案外気づいていないものです。だからこそ、それに気づいて、子どもに教えてあげられる親になりたいですね。子どもをよく見て認めるところを探し出し、子ども自身の成長を発見してことばにできる親でありたいと思います。