「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 「宿題しなさい」と言わなくてもできる子になるためには

今回は、「指示されるまで動かない子ではなくて、自ら宿題をする子になるにはどうしたらいいの? 」という新たなお悩みに、親子コミュニケーションアドバイザーとしてお答えします。

宿題しない我が子の認め方を間違えないで

「◯○しなさい」と指示してやらせても、子ども自身の成長にあまり意味がないことを第3回で考えました。指示してやらせる前に、「いいよ」と認めることばをかけて、「子どもの器=自己肯定感」を育てることが大切です。

でも、子どもの言うことやすることをそのままを認めるって難しいですよね。 ましてや、"宿題"をしない我が子をどう認めればいいのでしょうか。あなたなら、なんて言いますか?

子どもがしていることを認める

「宿題をしなくて、いいよ」は、やはり変ですよね。子どもは嘘を見破りますから、お父さんお母さんは、いつも自分の本音をことばにすることが大事です。

では、お子さんは宿題をしないで何をしているのでしょうか。この質問をすると、みなさんハッとして、「あ、読書しています」「うちは、ずっとゲームしています」などと答えます。

では、それを認めることばをかけているでしょうか? 多くの方はこう言います。「読書ならいいか、と思って何も声かけていませんでした」「ゲームを少しならやらせてあげようと思って、何も言ってません」と。

これはとてももったいないことです。「読書、いいね。そんな難しい本を読めるようになったんだね」「何のゲームしているの。すごい集中力だね」など、まずはお子さんがやっていることを認めることばをかけてあげましょう。

宿題をするかしないかという視点で、子どもを見ていることが間違いなのです。子どもの立場になって子どもが何をしているのか、また、それについて声に出して伝えることが大切です。なぜなら子どもは、自分が夢中になってしていることを認めてもらったとき、初めて相手の立場にたって物事を考えられるようになるからです。

今回の場合は、読書やゲームをしている自分を認めてもらったので、次に、宿題をすべき、という社会のルールを考えられるようになります。子どもがしていることを認めたあとで、「宿題は何時からやる? 」とことばを添えましょう。私たち大人と同様に、1回でできるようになることはなかなかありません。でも繰り返しすることで、自分で考えてできるように必ずなります。

「黙認」ではなく「認めることば」が大切

アンケートの中には、子どもを認めることを実践しようと、「ゲームを黙って30分もやらせてあげたのに、全く宿題をやらないのでイライラし、最後には『ゲームばっかりやってないで、宿題やりなさい! 』と怒りを爆発させてしまった」というお声もありました。しかし、これは「黙認」です。黙認は認めたことにはならないので要注意。声に出して認めることばが大切なのです。

なかには「宿題をしなくてもいいよ」を、認めることばだと勘違いしてしまう場合がありますが、これも間違いです。なぜなら、宿題をするしないを決めるのは親ではないからです。子ども自身が考えて決めて行動できるようにすることが目的だということを忘れないようにしたいですね。

認めるとは「相手の立場に立つ」こと

「うちの子、何もしないでソファーでゴロゴロしています。どう認めたらいいでしょうか」といった、こんな悲しい質問もあります。あなたなら、なんて認めることばをかけますか? 一度、自分に置き換えてみましょう。

今日も1日仕事や子育て、家事を頑張ってトラブルも解決した。大急ぎで買い物して、帰宅してからは洗濯物を取り入れた。朝から働き続け疲れたからちょっと一休みしようとソファーにやっと腰掛けたタイミングで、夫(妻)が帰宅して、「なんで、ソファーでゴロゴロしてるの? 夕食は作ったの? こっちは疲れてるんだよ」と言われたらどうでしょうか。泣けそうです。「私だって1日大変だったんだよ」と思いますよね。

でも、もし「君も1日大変だったよね。ぼくも大変だったから、二人でソファーでちょっと休んでから、一緒に夕食作ろう」って言ってもらえたら、「うん、がんばろう」って、夕食を作る気力も湧いてくるってもんですよね。

子どもも同じです。きっと今日1日、お母さんやお父さんの見ていないところで、園や学校でいろんなことがあったはずです。お友達に言われたことばにへこんだり、反省したり、自問自答して、明日どんな顔でなんてことばをかけようかな、なんて考えながら、やっと安心してリラックスできるソファーで1日の緊張をとかしているのかもしれません。

そんな時に、「なんでソファーでゴロゴロしてるの? 宿題やったの? ママ(パパ)は疲れてるんだから何度も言わせないで!」と言われたら、泣けそうです。

だから、「○○も1日学校、がんばったね。ママ(パパ)も1日大変だったから、二人でソファーでゴロゴロ休憩しよう! そのあとでママ(パパ)はおいしい夕食作るから、○○もそれまでに宿題終わらせちゃおう」そんな風に認めてもらったら、宿題も、明日の学校もがんばれるのではないでしょうか。

特別な何かをするのではなく、日常生活の中で、「子どもの立場に立って認めることばをかけること」、これが子どものやる気を引き出すことにつながるのだと思います。