「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 妻が夫に言われて「うれしい言葉」とは?


在宅ワークも増えて家にいる時間が長くなったことで、今まで以上に子育てに向き合うお父さんが増えてきている気がします。

コロナが流行する前は、お父さんからのご相談で多かったのは、「自分が帰宅すると、妻が子どもを叱っていて、どうして妻はあんなに子どもにイライラしているのでしょうか」という悩みでしたが、今は「妻とどのように向き合ったらいいのでしょうか」という少し前向きなご相談に変わってきています。

仕事で家にいないと子育ての実態がなかなか見えづらく、その大変さゆえに妻がイライラしていることが理解できていなかったようですが、家にいる時間が増えて夫婦で少しずつ共有できてきている気がします。

今回は、夫婦の仲が一層深まるよう、「妻とのコミュニケーションで自分にできること、気をつけることを教えてください」というご相談に親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

夫の注意すべき言動とは

第18回で、妻は子どもにイライラしているのではなく、何もしない夫にイライラしていることを理解して行動しましょうと書きました。子どもの行いは怒りのきっかけに過ぎず、たいていは夫が家にいても子育てや家事もせずに、スマホやゲーム、テレビを見ていることに腹を立てているからです。

その証拠に、夫がいない間は母子で案外仲良くしているようですので、お子さんを過度に心配する必要はないと思います。それよりも、夫は自分の言動を見直した方が、解決には早道です。

例えば、妻をイライラさせる言動として、こんな言葉をかけていませんか?

×夫「子どもにそんなに怒らなくてもいいと思うよ」
→(え、私が悪いの?)と、妻のイライラをより助長させてしまいます。

×夫「そうだ、お前が悪い!」と妻の味方をして、一緒に子どもを叱る
→子どもの逃げ場がなくなりますので気をつけましょう。

×夫(怒りの嵐が通り過ぎるまで、気配を消してスマホをする)
→(何もしない夫は自分の時間があっていいわね!)と妻の不満が募り逆効果です。

×夫(見なくて済むように、帰宅時間を遅らせる)
→これを続けると、夫は自分の居場所がなくなってしまう可能性があります。

どれも根本的な解決には至っておらず、見直す必要があるでしょう。ではこんな時、妻が言われてうれしい言葉とはなんでしょうか。

それは、「僕が代わりに家事(具体的に、洗い物・夕食の準備・買い物)をしておくね」です。

「家事はやらなくてもいいから、少し寝たら?」「掃除がそんなに大変なら、やめたらいいのに」「無駄な家事は、少しは手を抜けばいいよ」といった発言はNGです。夫は家事の大変さがわかって、良かれと思って解決策や優しい言葉をかけたつもりになってしまっても妻はよりイライラしてしまいます。

なぜなら、「私の家事は、価値がないと思われている」や「片付かないし、家事が先送りにされるだけ」と感じてしまうからです。

こういった理由から、かける言葉は「僕が代わりに○○しておくからね」がベストと言えるでしょう。妻は、自分の大変さを理解して一緒に取り組んでくれてうれしくなるはずです。

夫婦両者の配慮が大切

一方、妻側にも配慮は必要です。夫が代わりに後片付けや洗濯物をした際に、ダメ出しなどしていませんか? 意外とへこんでいる方が多いので気をつけましょう。

妻は、まずは夫のやる気を認めて、ほめて、ダメ出しはしないよう心がけましょう。また夫も、これまで妻に任せっきりでやってこなかったのだからしかたないと割り切って、労いと尊敬をこめ、教えてもらいながらできるといいですね。

そして、夫婦の向き合い方を、「手伝う」という感覚から「一緒に家族を作る」という意識に変えることが大切です。なぜなら「手伝う」は、妻が子育てと家事をすることが前提になっているからです。

はじめは、妻自身も自分が家事と子育てをしなければと思い込んでいることが多く、うまくいきます。しかし、実はこれが一番恐ろしいことだと私は思っています。

私たちの親世代は当たり前であったことも、今は共働きの夫婦も増え、世の中の情勢など働き方も大きく変わっています。妻は大変に思い、夫が自分のこととして一緒に子育てと家事をしてくれないことに悲しみと怒りが蓄積されてしまうかもしれません。その前に、夫婦の関係性を見直してみましょう。

これからの子どもには、夫婦が対等に向き合ってコミュニケーションを取り、家事も子育ても仕事もしている姿を見せられるといいなと思います。