「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • コロナで戸惑う新年度、いま親が気をつけるべきことは?(写真:マイナビニュース)

    コロナで戸惑う新年度、いま親が気をつけるべきことは?


新年度をお子さんはどんな気持ちで迎えているでしょうか。コロナの影響で臨時休校になるなど、子どもたちの知らないところで、いろいろなことが決まるので、戸惑っている子も多いに違いありません。今年は5月まで学校が再開されない地域も多いかと思いますが、いざ新しい学校生活が始まったとき、どのような心持ちで向き合うべきかを解説していきたいと思います。

ただでさえ新年度の時期は、新しいお友達や新しい先生、新しい教室や新しい授業(カリキュラム)など環境が変化し、わくわくする反面、不安も多いです。親としては「お兄さんお姉さんになったのだから、しっかりしてね」と期待をしてしまうと思いますが、お子さんも急に成長するわけではありませんよね。そこで今回は、「新学期を迎えるお子さんに向け、どんなことに気をつけたらいいのか」というお悩みに、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

親はドーンと構えておくことが大切

どんなに積極的なお子さんでも、新年度はやはり緊張するものです。ましてや今年は、コロナウィルスが流行していることもあり、より不安な気持ちになっているお子さんも多いと思います。

「うちの子は全然大丈夫よ」というご家庭も、「子どもがとってもナーバスになっている」というご家庭も、まずはお母さんお父さんがドーンと構えていつものように受け止めてあげられるといいですね。

大人の世界でもこの時期は、人事異動や業務内容が変わる環境の変化はもちろん、コロナの影響で在宅ワークになったのにうまく機能しないなど、戸惑うことも多いと思います。

仕事上のことを家族に話すことは少ないように、まだまだ自分の気持ちを整理してうまく表現することが苦手なお子さんは、お父さんお母さんに話をしないかもしれません。そのため、親は子どもの表面的な言動に振り回されないように気をつけましょう。

子どもの異変はさまざま方法で現れる

小さいお子さんの場合は、体に現れることもあります。お腹が痛くなったり、じんましんのようなものが出たりし、親も慌ててしまうかもしれませんが、そういうこともあるのだと事前に知っておくと、落ち着いて対処できると思います。

「何かあったの?」「治ったら、ちゃんと幼稚園(おけいこ)にいくのよ」などと決めつけたり咎めたりせずに、お子さんの心に寄り添いたいものです。

もう少し大きいお子さんになると、イライラしたり、逆にハイテンションになったりする場合があります。親も心配のあまり「何をイライラしてるの? イライラしないでちゃんと話して!」「調子に乗りすぎ! ちょっと落ち着いて」と言いたくなりますが、逆効果ですので、そのまま付き合ってあげられる方が早く解決に向かうでしょう。

家での異変は子どもがバランスを取るための安心装置

親の前でのこうした態度や言動は、新しい環境(学校・園)で一生懸命に自分らしくあろうと頑張っている証拠です。クラスで無理したり、悔しい思いや悲しい思いをしても、自分を奮い立たせて頑張ったのでしょう。そして、お父さんお母さんの前では安心して素の自分を出しているのだと思います。

親は、自分が見ている子どもの様子だけで判断し、びっくりしてなんとかしなければと慌ててしまいがちですが、見ていないところで子どもには"180度違う姿"があり、頑張ったのだと想像してください。そうすれば、子どもはこうしてバランスをとって、また明日も元気に過ごしていけるのだと思えるでしょう。

仕事やPTAではシャキッとしているお母さんが、家では髪を振り乱して頑張っているのと同様です。つまり外で頑張れるのは、家で気を緩められるからですよね。

子どもも同じなのです。親が気になる行動を無理にやめさせてしまうと、学校(園)での理想の自分とのバランスが崩れてしまい、より不安や無気力になってしまう恐れがあります。

子どものちょっとしたSOSに気づく親になろう

実は、子ども自身、自分のモヤモヤの原因がよくわかっていないためにこうした態度に出てしまっていることが多々あります。お父さんお母さんに気づいて欲しいというSOSなのだと受け止められるといいですね。

具体的には、注意してやめさせるより、「イライラすることもあるよね」と共感してあげましょう。子ども自身がイライラしている自分を嫌にならないように、「お母さんだって、仕事でイライラすることがあってね」など、親の弱さや失敗を話すこともいいと思います。

そうすれば子どもも安心して、自分の現状をポツリポツリと話し始めるかもしれません。無理に聞き出そうとするのではなく、子どもが話したいタイミングで、ちゃんと聞くことが大切です。

そして、いざ子どもが話し始めたら、お母さんお父さんは作業の手を止めしっかり向き合うようにしましょう。そんなタイミングは、人生の中で数回です。「今手が離せないから、あとでね」は無しにして、逃さず聞いてくださいね。

「いつになったら話す気になるのかわからない、ずっと話してくれないのですが」という声もありますが、無理に聞き出すのではなく、親は話す気になるような言葉をかけることが大切です。

「いつでも話を聞くよ」「どんなことがあってもあなたの味方」「あなたの幸せを願っている」「あなたの思いを応援したいと思っている」「あなたは大丈夫」など、お子さんが「お母さんお父さんに話せばちゃんと聞いてくれて、一緒に考えてくれるはずだ」と安心して話せるような雰囲気を作りましょう。

結局なぜイライラしていたのかわからなかったけど、親のこうした姿勢に救われたというお子さんのお話をたくさん聞きます。原因を追究するより、お子さんが安心して前に進めるように務めるのが親の役割ではないでしょうか。