企業の経営層は、過去にどんな苦労を重ね、失敗を繰り返してきたのだろうか。また、過去の経験は、現在の仕事にどのように活かされているのだろう。そこで本シリーズでは、様々な企業の経営層に直接インタビューを敢行。経営の哲学や考え方についても迫っていく。

第4回は、2021年に取締役に就任したテテマーチの三島悠太氏に話を聞いた。

  • テテマーチの三島悠太氏に「失敗談」「苦労話」を聞いた

    テテマーチの三島悠太氏に「失敗談」「苦労話」を聞いた

経歴、現職に至った経緯

まずは経歴について。三島氏は1993年生まれ。大学卒業後、インターネット広告代理店に新卒入社し、SNSプランナーとして企業のSNS運用やキャンペーンの企画・ディレクションに携わっていた。後に入社することになるテテマーチとは、この当時からパートナーとしての付き合いがあったという。

2018年、三島氏はテテマーチに転職。前職での経験を活かし、SNSプランナー・プロデューサーとして活躍した。SNSマーケティングを中心とした戦略・企画設計を行った企業は200社を超える。

その他、Twitterキャンペーンツール「boite(ボワット)」、ソーシャルコンテンツスタジオ「餅屋」など、SNSを軸としたブランド開発やグロースにも従事。リブランディングを行うプロデュース事業の立ち上げにも携わった。

三島氏が取締役に就任したのは2021年6月。同年には、Z世代向けの企画・クリエイティブ集団「Honey At」の吸収合併を手掛け、Z世代ビジネスの開発に注力している。

会社概要について

テテマーチの創業は2015年。三島氏は「企業に対し、SNSマーケティング支援を中心としたビジネスを展開している会社です」と紹介する。企業のSNSアカウントのコンサルティング、分析ツールの開発、クリエイター活用、ブランド開発から戦略設計など、支援サービスは多種多様。サポートを実施した社数は700以上だ。「サキダチ、ヤクダツ」をミッションに掲げ、企業のマーケティング活動を一気通貫でサポートしている。

三島氏の入社後、テテマーチはブランドプロデュース事業を立ち上げ、サービス領域の拡張を推進。先に述べたように、ブランド開発やグロース、リブランディングを実施している。

独断プレーにより、メンバーからの信頼を失った

20代にして取締役を務める三島氏が、事業責任者を任されたのは25歳のときのことだ。そのときに直面した壁が、三島氏の転機となった。

「私はもともとプレイヤー気質が強いタイプ。そのため、事業責任者になったあとも独断プレーを続け、メンバーを置き去りにするマネジメントをしていたんです」と当時を振り返る三島氏。メンバーの気持ちを理解することもできず、「なぜ自分と同じことができないのか」と失望することもあったという。

「業績目標がうまくいかないときには、一人で営業に行くこともありました。ただ、今思うと、当時の私が感じていた失望は勝手な失望でしたね。数ヵ月間、そうした独断プレーを続けた結果、メンバーからの信用をなくしてしまいました。業績も伸び悩み、責任者として大きな失敗を経験することになったんです」

相手を知り、良い関係性を結ぶことが成果につながる

この失敗を機に、三島氏は人との向き合い方を見つめ直す。事業責任者だからといって、すべてに責任を感じて一人で決めることをやめたのだ。

「ピンチだからこそ、仲間と協力して進めることが大事だと気づきました。ありきたりな言葉ですが、『一緒に考える』ことにしたんです。なぜ個人の成績が伸びないのか、なぜチームの目標を達成できないのか、なぜサービスのクオリティが上がらないのかについて、当事者に相談しながら共に答えを見つけにいく姿勢を取るようにしました」

ピンチだからこそ、仲間と協力して物事を進めていく。この気づきを得、行動を変えた結果、業績もメンバーからの信頼も回復。2021年、27歳で取締役に就任するまでにつながっていった。

三島氏は、当時のことについて、「自身のキャリアにはもちろんのこと、会社に多くのことを還元するためのターニングポイントになったと強く感じています」と語った。

また、失敗を経て「人への興味・関心を強く持つようになった」ともいう。ここでいう人とは、今、共に働く人だけではない。採用候補者、社外パートナーに対しても、性格や価値観、バックボーンなど、まずその人を知ることが三島氏にとって当たり前になった。

「人を知ることで、コミュニケーションの幅が広がります。コミュニケーションの幅が広がることで、自己開示すべきことが明確になる。適したコミュニケーションを選べるようになり、より良い関係を築けるようになるんです」

自分を知ってもらう前に、相手を知ること。知った上で、お互いにとって心地の良い環境を自分から提供できるようになること。相手から早期に信頼を得られれば、三島氏がマネジメントで重要視している「一緒に考える」ための材料も最短で得られる。その結果、「互いが成果を出しやすい状態を作れ、パフォーマンスを最大化できる」というのが三島氏の考えだ。

「私がこれまで多くの案件や社内プロジェクト、新規事業で成果を発揮できたのは、人を知って、自己開示することの重要性を理解できたからでしょう。これまでも、そしてこれからも、どうすれば一緒に働きたいと思ってもらえるのか、働く相手から信頼を得られるのかを重視していきたいですね」

  • 相手を知り、良い関係性を結ぶことが成果につながる

就活生・若手ビジネスパーソンにメッセージを

最後に、就活生・若手ビジネスパーソンに向けてメッセージをもらった。

「ビジネスパーソンが成果を出すにあたって、対人関係は切っても切り離すことができないものでしょう。自分が実現したいことを実現するには、決して独りよがりにならず、信頼できる仲間を作ることが何よりも重要だと思います。ただし、万人に通ずる絶対にうまくいく対人関係、コミュニケーションは存在しません。だからこそ、まずは相手を知り、自分を開示すること。その当たり前をどれだけ愚直にできるかが重要なスキルとなるのです」

10人いれば、10通りの適切なコミュニケーションが存在する。それらを模索し、良い関係性が築けたときに、三島氏が成し得たような成果につながるのだろう。

「失敗を恐れず人に向き合いながら、皆さんも頼れる仲間を集めて成果を出していきましょう」と締めくくった。