ダイエットには激しい運動や毎日の有酸素が必須!

そう思っている人も少なくありませんが、実はそうではありません。もちろん運動することは長期的な健康作りには欠かせませんし、痩せるためにも効率が良い方法です。

心肺機能の向上や筋力アップが「太りにくい体」を作るのもまた事実なので、ダイエットが成功したからといって運動の習慣をやめるのは非常にもったいないでしょう。

とはいえ、運動は痩せるために必要な一つの要素ではあるものの、それ以外の手段もあるのです。

運動は思ったほどカロリーを消費しない

ダイエットには筋トレが最も適しているといった話を耳にしたことがある人も多いと思います。

全身の筋肉量を増やすことで、ダイエットを加速させてリバウンドしにくい体を作ります。しかし、実際に筋トレで消費するエネルギーはわずかで、筋トレから派生する副産物の方が重要。

副産物というのは、筋肉量の増加はもちろん、心肺機能の向上や関節可動域の改善など多岐にわたります。実際、筋トレで動いている時間はごくわずか。

仮にダンベルを持ち上げるトレーニングを10回行っても30秒程度。

それを4セットやってもトータルの運動時間はわずか2分。5種目行っても10分と時間にすると意外に体を動かしている時間が短いことに気付くのではないでしょうか。

身体活動の強さを表す単位でもあるMETs(メッツ)※は、安静時を1とすると普通歩行で3。自転車など軽い運動が5.5に対して、高強度の筋トレでも6.0。※厚生労働省が2006年に示した生活習慣病予防のための運動強度を示す指数

つまり、筋トレで起こる直接的なカロリー消費は小さいので、ダイエットにおいてはそれ以外の時間の過ごし方や食事も大事な要素。

もちろんジムでダンベルやバーベルを使ってさらに高強度なトレーニングを行う人は消費カロリーも増加するものの、それでも数十kcal程度でしょう。

回数・重さだけではなく総負荷を意識

筋トレの回数と聞くと、重量に関わらず10回3セットなどを思い浮かべる人も多いですが、筋肥大に重要なことは重量×回数×セット数の総負荷量。

例えば100kgのバーベルを扱っている人が10回3セットを行うと総負荷は3,000kgと、かなりの重量を扱っている割には総負荷が意外に小さい。

仮に100kgの重量が扱えなくとも6割の60kgを15回、セット数を5セット繰り返したとすると総負荷は4,500kgと先ほどの1.5倍にもなります。

もちろん何十回も軽々持てる重量で行うことは本末転倒ですが、最新の筋トレ学は総負荷を重視する傾向です。

総負荷が大きくなれば自ずと消費カロリーも増えてくるので、痩せるという側面から考えても効率的。

また、高重量が扱えない人や、怪我を未然に防ぎたい人でも、それと同等もしくはそれ以上の効果を得ることもできるので、重量ばかりを追い求めることがトレーニングではありません。

TUTで筋肉を増やす

筋トレでもう一つ大切な要素が筋肉に負荷がかかる時間。

例えばスクワットのスタートポジションと言われるとほとんどの人が仁王立ちのような状態を思い浮かべると思います。

しかし、それがスクワットの動作の中で出てくるポジションだとしても、その状態でいる時間が長くなればなるほど、筋肉は休める時間が長くなります。

つまり、筋肉にテンション(負荷)がかかっている状態でどれだけ繰り返せるかがポイント。この時間がTUT(Time Under Tension)と呼ばれるもので、TUTの増加は体内のたんぱく質の再合成の増加にもつながることが知られている※にも関わらず、ジムにいる多くの人がこの言葉をまだまだ知りません。

※アメリカ国立医学図書館(National Library of Medicine)の「Muscle time under tension during resistance exercise stimulates differential muscle protein sub-fractional synthetic responses in men」調査参照

筋肉は縮みながら収縮するポジティブ動作と、伸びながら収縮するネガティブ動作の2種類に分けられます。この動作はどちらも筋肉に負荷がかかっている状態ですが、この二つを繰り返す際の切り返しのタイミングに負荷を抜かないことがTUTを長くするポイント。

筋トレ前にROM改善

ROM(Range of Motion)とは、関節可動域のことを指す言葉。

座位中心の生活で、体が硬くなることが一因で腰痛や肩こりを引き起こしていることは分かっていても、ジムで入念にストレッチをする人や、ストレッチマシンをじっくり使う人はごく僅かです。

しかし、体が硬い人よりも柔軟な人の方が筋トレの効果がアップします。※アメリカ国立医学図書館(National Library of Medicine)の「Effect of range of motion in heavy load squatting on muscle and tendon adaptations」調査参照

物理学におけるトレーニング負荷量(総仕事量)の計算式は力(N)×距離(m)。

つまり、運動における関節可動域の向上が総仕事量に直結するため、ストレッチは筋トレと同じくらいの重要性を持っていると今ここで改めてお伝えしておきたいと思います。

もちろん柔軟であればあるほど良いと言う訳ではなく、筋肉は大きく伸ばしたり縮めたりすることでよりダメージを受けるため、回復にもその分時間がかかります。

可動域の過度な向上は筋肉や関節の怪我リスク増加にも直結するため、適度な重量で最大限の関節可動域でトレーニングをすることが重要です。

無理のない重量での総負荷(特に重量)、適度なTUT、最大限のROM。明日からこの三要素をしっかりと意識して行うだけで、体はより早く、より一層変化することでしょう!