日産自動車は小型車「ノート」の上級バージョンとして「ノート オーラ」を発売した。正直、外見だけではなかなか区別がつかない2台だが、乗ると大きく違うのだろうか。ノートとオーラでは60万円ほど値段が違うが、それでもオーラを選ぶ意義とは?
2台の違いは乗ったらわかる?
ノートとオーラは骨格を共有しているが、日産はノートを先に作っておいて、上級感を演出するために何かを後付けしてオーラを作ったわけではない。最初からオーラも作るつもりで、2台同時に企画をスタートさせた。
ボディサイズを見るとオーラは車幅が40mm広い。搭載するのは日産のハイブリッドシステム「e-POWER」でどちらも同じだが、クルマのサイズや重量が異なるので各車で最適化してあり、オーラの方がパワフルになっている。2WDで比べると最高出力はノートが116PS、オーラが136PS。最大トルクはノートが280Nm、オーラが300Nmだ。これが走りの差につながる。
つながる、とはいっても、乗ればはっきりとわかるくらい格段に違うのか。実際に乗り比べてみた。
ガソリンを給油するところは普通のクルマと一緒だが、e-POWERはエンジンで発電を行い、電気の力で走るところが違う。電気でモーターを回して走るという構造は電気自動車(EV)と同じだ。電気の走りの特徴はなんといっても、アクセルペダルを踏むと遅れなく加速するレスポンスのよさだろう。ノートもオーラも踏むと俊敏に動く。例えば素早く車線変更を行いたいような場面では、スパッと狙ったところに入っていけるので気持ちがいい。
e-POWERの走りは静粛性も高い。発電のためにエンジンは回るのだが、日産はエンジンの始動頻度をなるべく抑えるための制御を施している。始動させるにしても、例えば路面の悪い道路を走っているときなど、騒音にまぎれるタイミングを狙うようになっているそうだ。
で、ノートとオーラの違いなのだが、これは素人でもわかるくらいの差がある。はっきりとした差があるとまではいわないが、やっぱりオーラの方が力強い。40mmの車幅増については、運転しづらくなるというほどの影響はない。車幅が広がったといっても1,735mmに収まっているから、持て余すようなサイズではない。
ただ、違いが感じられたのは、短期間で2台を乗り比べたからだという自覚もある。比較すればオーラの方が好きだが、オーラに乗らなければ、ノートで十分に満足できていたはずだ。だから、ノートに試乗してみて気に入った人は、オーラに試乗せず、そのままノートを買ってしまって問題ないのではないだろうか。
室内は大きく違う!
ノートとオーラの大きな違いは内装だ。写真で見比べると違いがよくわかる。
室内の違いでいうと、ノートとオーラでは静粛性の高さも違う。それもそのはず、オーラでは窓ガラスにラミネート層を挟み込んだり、ドアトリムやルーフに吸音材を追加したりして、遮音性を高めてあるのだ。オーラにはオプションでBOSE「パーソナルプラスサウンドシステム」が装着できるので、ドライブ中に音楽を楽しみたい人はオーラを選ぶ意義があるだろう。
「ノート」と「オーラ」でしか味わえない日産の技術
日産車の中で、現状ではノートとオーラにしか搭載されていない技術がある。「ナビリンク機能付き」の「プロパイロット」だ。じっくり試してみたが、この機能はすごい。
プロパイロットというのは、設定した速度で同一車線内をクルマが自動で走ってくれるシステムだ。前にクルマがいれば追従し、いなければ設定速度で走る。高速道路や自動車専用道でしか使えないが、基本的にはアクセルペダルから足を離していても大丈夫だし、きついカーブに出くわさない限りハンドル操作も支援してくれるので、運転がとても楽になる。
これに「ナビリンク」が付いた。プロパイロットがナビとリンクし、進んでいく道路にカーブがあると判断すれば、問題なく抜けられるよう車速を調整してくれる機能だ。同機能を搭載したノートで首都高をしばらく走ってみたのだが、効果はてきめん。首都高には、しっかりと減速しなければ曲がり切れそうもないカーブが結構あるのだが、ナビリンク付きプロパイロットを起動しておけば、唐突感のないジェントルなスピード調整を自動でやってくれる。おかげで、ハンドル操作に集中できた。
注意したいのは、ナビリンク機能付きプロパイロットがオプション装備となっているところ。ナビもついてくるが40万円以上という価格なので、装着すると支払い総額はぐっと増える。
最後にオーラの売れ行きだが、発売から3週間で受注台数が1万台を超えたというから出だしは好調だったようだ。少し前に日産に聞いたところによると、内訳としては上級グレード「G leather edition」が66%を占めたそう。2トーンカラーを選んだユーザーは40%、4WDの比率は28%だったという。乗り換え前のクルマは国産ハイブリッド車や輸入車が多かったというから、プレミアムコンパクト市場の開拓を狙った日産の思惑は、ある程度は図に当たったといえそうだ。