「JUNON」6月号

男性アイドル誌「JUNON」の変化

長らく男性アイドル誌として出版されてきた「JUNON」が、最近は恋愛論などの特集も多くなり様変わりしているようです。数か月前にはEXILEのATSUSHIさんが表紙で、「甘え下手を卒業!」なんて特集が組まれていて気になっていたので、今回はいよいよ手に取ってみました。

表紙のJUNONのロゴの部分に黒文字で「やっぱり男は顔だ!」と書いてあったかと思えば、「コミュ力を挙げれば毎日がもっと楽しくなる!」というコピーもあり、気になるタイトルが満載です。

中を見てみると、「やっぱり男は顔だ!」という特集があるわけではないのです。でも、「ときめく横顔男子」というページがこの気分を表しているのでしょうか。「男子の横顔って、ものすごくドキドキしませんか?」ということで、小池徹平さん、福士蒼汰さん、三浦翔平さんなどの美しい横顔が。

「結婚は顔とカネの交換」ではなくなってきた

もちろん、昔からアイドル雑誌というのは、男の子の魅力を伝える内容ではあったのですが、ここまで男子の美というものがフィーチャーされるとは、時代の移り変わりを感じます。

というのも、昔は小倉千加子さんが『結婚の条件』という本の中で、「結婚は顔とカネの交換だ」と語っていたのです。でも、男女間の経済状況なども昔と現在では変わってしまいました。さきごろ発表された「家族と地域における子育てに関する意識調査」(内閣府)では、「若い世代で未婚・晩婚が増えている理由」で、「経済的に余裕がないから」との回答する未婚男性が5割以上にもなったということで、以前のように女性の「顔」と男性の「カネ」を交換できる状況でもなくなったことがうかがえます。そうなると、男性側も「顔」の美しさが、以前よりも重要になるのは当然のことかもしれません。

大特集の「コミュ力」のページは、「JUNON」らしく、男性芸能人たちが、「コミュ力」をテーマにさまざまなことを語っていて、いまどきの男性たちの考え方が見えてきます。

例えば、溝端淳平さんは、自分の話を「投げて」ばっかりの人との会話はやっぱり楽しくない、かと言って「うんうん」と返すばかりの人も聞き上手とはいえない。きちんと自分の意見を言える人がいいと語っています。

また、EXILEの弟分的なグループであるGENERATIONSは、グループの男子ならではで、3チームにわかれて、先輩、男友達、気になる女の子を相手にしたときのコミュ力について対談。GENERATIONSのメンバーもやはり、女の子が一方的に話すこと、順序だてて話すことについての言及がありました。男女の会話の組み立て方って、今や本当に乖離してきているんだなと思わざるを得ません。

究極は、ケンドーコバヤシさんのインタビューです。ケンコバさんは、「若い女の子の"聞いて聞いて感。私をもっと知って感"が苦手」と言います。また、「女の子って、話の途中で急に今まで出てきてなかった人物を説明なしに登場させたりね」とも。それに対しては、将棋のように、まずは「駒を配置して」から話すと解決するんだそうです。

男性は「美」、女性は「理路整然と話す能力」が必要に

このような男性陣の意見に対して、個人的には二つ三つの感情が絡み合って出てきます。ひとつは、女性同士で話すときには、駒をしっかり配置しなくても、だいたいのことはニュアンスで通じ合ってしまうことってありますよね。だから、それが男性にははっきり言わないとわからないことだということに、気づいていないということはあります。

もうひとつは、やはり人に話すときには、ある程度は相手がわかるように配慮して話す必要もあるから、貴重なご意見として考える価値はあるなあというものです。特にビジネスの場では、女性だけでなく、男性とももちろん仕事をしないといけないわけで、こうした話し方を見に着けるのは悪いことではなさそうです。原稿を書く身としては、非常に納得できます。

そしてもうひとつ。女性でも「駒を配置」しながら理路整然と話したり、聞き上手だったりする人もいます。でも、そういう女性のことを、男性は「キツい人だな」とか、「なんか女性っぽくないな」なんて思っていた節はあったのではないかということです。

ケンドーコバヤシさんも、このインタビューの中で「聞き上手なアラサー女性のことが好き」なのに、「おっぱいに関しては20代のほうがいい」気がすると語っています。男性側も、こういう矛盾は抱えていて、そこに対して、まだ迷いを感じている状態なのかもしれません。

でも、ケンドーコバヤシさんの発言は、非常に正直で、若いイケメンの男性陣には言えないことで興味深いものでした。

それと同時に、女性が持っていると有利とされていた「美」というものが男性にも必要になってきたことと、これまでは女性にはさほど求められていなかった、理路整然と話すという能力が必要になってきたことには、何か関係があるのではないかと思えたのでした。

<著者プロフィール>
西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。