「エル・ジャポン」5月号

独身、子なし、仕事好きの「プリンセス・パン」

今月は、「ガールズ・ラブ 女が女を愛するとき」「アラサー・ディーバが歌う胸の内」「おしゃスナアイドルを探せ」など、「エル・ジャポン」に惹かれるタイトルがたくさんあったので手に取ってみました。

中でも一番気になったのは、「独身、子なし、仕事好き あなたもプリンセス・パン症候群!?」という記事です。

"プリンセス・パン"というのは、フランス版の「ELLE」で特集され反響を呼んだそうで、30半ばから40代前半の、ある程度の収入があり、自立して、独身生活を楽しむ女性のことだそうです。

フランスだけではなく、日本でも"プリンセス・パン"現象はあるのではないかということで、「エル・ジャポン」では特集が組まれていたのです。

ハリウッドのプリンセス・パンと言えば、キャメロン・ディアス(41歳)、ナオミ・キャンベル(43歳)、レニー・セルヴィガー(44歳)、シャーリーズ・セロン(38歳)など。

これらのハリウッドのプリンセス・パンたちは、性に奔放(キャメロン・ディアス)、気性の激しさが動力源(ナオミ・キャンベル)、恋多き女(レニー・セルヴィガー)、自己愛より博愛です(シャーリーズ・セロン)などと書かれています。プリンセス・パンは心はティーンエイジャーのままで自由を謳歌しているのが特徴だそうです。

誌面に載っていたわけではありませんが、日本で言えば、大久保佳代子さん(42歳)や相方の光浦靖子さん(42歳)などの女芸人や、米倉涼子さん(38歳)などが当てはまるでしょうか。

日本のプリンセス・パンも、確かに手つなぎデート(米倉さん)やお持ち帰り(大久保さん)を写真週刊誌にすっぱ抜かれたりもしていますし、好きなことに没頭している(光浦さん)イメージもあるので、アメリカと似た状態かもしれません。

婚姻率が低くなっているのは女性の「高望み」のせい?

この現象については、誌面では香山リカさんとジェーン・スーさんのふたりが考察しています。

香山さんは、20代が出産や育児と仕事を両立させる生活に早々に踏み切る姿を横目に、プリンセス・パンは「鏡よ鏡、自分を磨けば磨くほど王子さまが遠ざかっていくって、いったいどういうことなのかしら?」とつぶやく、と冷静に分析。

対して「未婚のプロ」と名乗っているジェーンさんは、「気が向いたら結婚はするかもしれないけれど、専業主婦という選択肢はナシ」と前置きし、結婚しても働き続けることを考えるならば、「自分より社会的経験値が高い女に尻込みしない教育を、男たちに施すのが先だと思う」と書いています。まったく別のコラムでありながら、香山さんの分析に答えているようで、偶然だとは思いますが面白いです。

最近、女性が主に能力や収入に対しての「高望み」をするから、また女性が「高望み」を叶えようとするあまり無駄に自分磨きをしてしまい、そのせいで婚姻率が低くなっているのではないかという説もよく見かけます。私もそうだと思っていた時期もありましたが、果たしてそれだけなのかということも感じます。

男性も女性に能力や経験値を「低望み」?

女性が「高望み」をしているのと根本的にはまったく同じ理由(男は男らしく、女は女らしくというような)から、男性のほうも女性に能力や経験値の「低望み」をしているのではないかとも思えます。ジェーン・スーさんの言っていることは、まさにそういうことなのでしょう。

女性が「高望み」をすることも、男性が「低望み」をすることも、以前はさほど問題視されていませんでした。数十年前までは、男女ともにそれぞれの「望み」を持っていても、終身雇用、年功序列型賃金、右肩上がりの経済成長などにより、結婚のマッチングが今よりもできる世の中だったからだと思います。

今のアラフォー女性が「高望み」をしていると言われるのは、その時代の名残りであり、社会が変化したことに気づいてないだけとも思えます。だから、アラフォーでも社会変化に気づいた人や、若い世代は、徐々にそういう思い込みも捨て始めていると思います。それは、男性も同様なのかもしれません。

<著者プロフィール>
西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。