前述したように、社内預金制度では従業員の預けたお金を会社が管理します。万が一、会社が倒産した際のリスクは意識しておく必要があるでしょう。

銀行預金ならば、破綻しても預金保険制度で元本1,000万円まで保護されるペイオフという制度がありますが、社内預金にはペイオフの制度はありません。会社が社内預金を導入するに際しては、「預金の保全措置」を設けることが法律で規定されていますが、最悪の事態を想定して預入先を分散しておくといいでしょう。

現在制度がない企業は今後に期待

貯蓄性に優れ、流動性も高い社内預金制度。従業員にとっては嬉しいメリットの一方で、預金を管理する会社にとっては煩雑な手続きや管理の負荷がかかります。これも制度の導入を抑制してきた要因の一つかもしれません。

それでも、その潮目も変わりつつあります。数年前からFinTech(フィンテック)という言葉を聞くようになりましたが、実は社内預金でもFinTechの投入が提案されてきています。FinTechを用いることで、これまで従業員の申し出を受けて会社が払い出し処理をしていたものが、従業員自身がATMで払い出しできるようになります。会社側は社内預金と人事評価を連動させるシステムを構築できるなど、双方のメリットの進化も期待されています。

今は社内預金を実施していない会社でも、FinTechによる進化に伴い、今後は導入を検討する可能性もなくはありません。「制度がないから関係ない」と思わずに、今のうちからお得な預金制度の一つとして、情報収集に努めておきたいですね。

参照: 厚生労働省「平成26年就労条件総合調査結果の概況:結果の概要」

■ 筆者プロフィール: 續恵美子

女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。