独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。

第17回は、大阪市鶴見区でネイルサロンとスクール、WEBショップとコンサルティング、さらに親子お揃い服ブランドなど物販事業までてがける、一般社団法人ウーマンアドバンス協会の北尾優(きたおゆう)さんにお話を伺いました。

  • 北尾優(きたおゆう)さん

「仕事嫌い」がネイリストという仕事に出会って人生が激変

――多岐にわたる事業を展開されていらっしゃるのですね。まずは簡単に自己紹介をお願いします。

北尾さん:ありがとうございます、一般社団法人ウーマンアドバンス協会と株式会社YOUの代表をしております、北尾優と申します。

現在一児の母をしながら2つの会社経営をしていますが、元々は仕事が大嫌いで2日で辞めてしまうなんてこともザラにあり、ニート生活を送っていた経験もあるんです(笑)。趣味も特技も資格も何もなく、自分に自信なんてなかったのですが、「ネイリスト」という仕事に出会ったことで、私の人生が大きく変わり始めました。

2011年に自宅の一室でちいさなネイルサロンを開業しまして、予約が取れないほどの人気サロンになりましたが、2015年に出産と機にネイルのお仕事を休職。母になってはじめて、子育てと仕事の両立することの難しさを痛感しました。

「女性が働きにくい世の中をどうにかしたい」と感じ、自宅で子育てをしながらでもできるネットショップを仕事にしようと思い立ち、2016年に、親子お揃い服の通販サイト「Bellcee(ベルシー)」をオープン。さらに、女性の起業や、「もっと女性が社会で活躍できる居場所や機会を提供したい!」と思い2017年に一般社団法人ウーマンアドバンス協会を設立しました。

2021年、我が子も6歳になり子育ても少し落ち着いてきたので、ずっと夢だった店舗型のネイルサロンを大阪市鶴見区にオープンし、サロンオーナーとして運営や管理をしています。 現在2つの会社の事業内容として、「ネイル」を軸としたネイルサロン、ネイルスクール、ネットショップ開業コンサルティング、「物販事業」を軸とした親子お揃い服「Bellcee(ベルシー)」、レディースアパレル「C3(シースリー)」、シルバーアクセサリー「rim(リム)」の3ブランドをネット販売にて運営しています。

「仕事=お金」だけじゃなく、自分の居場所

――のっけからかなり濃いお話ですが(笑)、全てが順風満帆というわけではなかったかと思います。開業されるまでの経緯をお聞かせください。

北尾さん:はい、ニート仲間の友人から「夢を叶えるゾウ」という本をすすめられまして。それまで本なんて読んだこともなかったのですが「漫画のような感覚で暇つぶしに読めるよ!」と。これを読んだことから火がつきました。「ここで人生終わりたくない! あとで後悔したくない!」と。

まず、未経験でも雇ってもらえるネイルサロンを探して面接に行き、勤務しました。「この仕事だけは絶対につづけるぞ!」「憧れのネイリストになるぞ!」と意気込んでいたのですが、早朝・夜遅くまでの無給レッスン、お客様の前で怒られる、上司の機嫌が毎日コロコロかわるという(笑)……、仕事嫌いだった私がすぐに変われるわけもなく、退職を選びました。

その後は自宅で、材料費の500円程度で友人のネイルをするようになったのですが、友人からの紹介、その紹介からの紹介などで、少しずつ来てくれる方が増え、「可愛い! ありがとう」「また次もお願いします」と言ってもらえることが、すごく嬉しくて。たった500円でしたが、「こんな楽しくてやりがいのあることでお金がもらえるの?!」と、初めて仕事に対するやりがいを感じました。

仕事=お金だけではない。自分の居場所がここにある。これを本業にしたい! 自宅ネイルサロンを開業したい、と思うようになったんです。

すべて手探り、行動と失敗の連続。遠回りしながらも道を切り拓く

――挫折かと思うような出来事が、新しい道を開いたということですね。自宅ネイルサロンが人気店になるまでは、どのような道のりだったのですか。

北尾さん:試行錯誤しながら、SNSを使うことで宣伝集客費は0円、開業から4年ほどで、延べ2,500名の方の施術をさせていただきました。もちろん、その裏には話し出すとキリがないほどの失敗談もあります(笑)。初めてのことに挑戦しつつ、0から1にするわけですから、想像もしていなかったアクシデントやトラブルも起こります。

例えば、お客様からのクレーム対応はどうすれば正解なのか? その時に聞ける人や教えてくれる場所がなかったので、すべて手探りで解決法を見つけなければならなかったですし、ネットショップを始めた頃は、今では笑い話ですが、そもそも物販の経験もコネもなく勢いだけでスタートしたので、仕入先も分からず、騙されたりもしました(笑)。

―すべてご自身でアクションを起こされることで乗り越えてこられたのですね。その原動力がどこにあるのかも知りたいです。

北尾さん:本当にそうですね。学べる場所、教えてくれる人がいなかったので、思いつく限りのことは行動に移してきました。ですので、とても遠回りをして、失敗もたくさん経験してきました。

ですが、女性でも、ママでも、好きなことを仕事にするというのは本当に人生を豊かにするということを、一人でも多くの人に伝えていけたらと思っています。自分が作り上げたものが誰かの小さな幸せにつながっていたり、喜んでいただけたりすると思うと、自分のやってきたこと、現在やっていることは間違いじゃなかったんだな、と。これからのやる気にもつながりますし、一緒に働いてくれているスタッフにもとても感謝しています。

誰かの「こんなことをしたい」を応援したい

―今後の展望などあればお聞かせいただけますか。

北尾さん:やりたいことはまだまだあります! 0から1にすることが好きなので、これからは誰かの背中を押して、「こんなことしたい」を応援できるようなお仕事や企画をしていきたいと思っています。来年にはネイルサロンの2店舗目を出店しますが、将来的に5店舗まで展開したいとも考えています。

また物販事業では「働きやすい環境を提供したい」ので、事業拡大とともに在宅ワークなども取り入れたいな、と考えています。そして異業種ですが、個人的にパンがすごく好きなので、ご縁があればパン屋さんの経営もできればなぁと夢見ています。

―常にご自身のやりたいことと、発展とともに、女性の方々の活躍を視野に入れておられるのですね。最後に読者の皆様へメッセージをお願いします。

北尾さん:「何の知識もコネもない普通だった私でも、小さな一歩(本を読んだこと)を出したことから、人生が少しずつですが豊かに変わりました。何かに悩まれていたり、不安に押しつぶされそうになったりしたときは、小さくてもいいので何か行動に移すことから始めてみられると良いかと思います。とはいえ、まだまだ未熟者ですので、ご意見、アドバイスなど、どしどしお待ちしています!