独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。

第19回となる今回は、大阪市で創業された株式会社wGlue Japanの代表取締役で一般社団法人日本グルーデコ協会代表理事、グルーデコ®創始者の山岡まさえさんにお話を伺いました。

  • 山岡まさえさん

――山岡さん、今回は新たなハンドメイドスタジオを作っておられるとお聞きしました。「グルーデコ」を世に広められるまでのお話もお伺いしたいのですが、まず簡単に自己紹介をお願いします。

山岡さん:私は幼稚園の時に初めて作ったリカちゃん人形の洋服をきっかけで、大のハンドメイド好きになりました。専業主婦をしていた頃もハンドメイドを楽しんでいましたが、「お稽古業界のタブー」みたいなものに触れ、次第に疑問を抱くようになったんです。

分野やジャンルに関係なく、みんなで気軽に楽しみを分かち合える環境を作りたいと考え、それが今の「一般社団法人日本グルーデコ協会(JGA:Japan gluedeco association)」につながっていったのです。これまで1万人以上の方が講師になってくださいました。書籍「人生が2度ときめく主婦社長のすすめ」も出版させていただきました。

「サロネーゼ」で輝いている人に、憧れるだけだった

**――このお仕事を始められるきっかけを、もう少し詳しくお聞かせください。

山岡さん:私は「ケイコとマナブ」世代(50代後半)なんです。私の周りにはOLをしながら会社帰りにお稽古やスクールに通い、技術や知識を習得したり資格を取得して、結婚後はその資格や技術を活かして仕事にするような、同世代の“キラキラしている人”が沢山いました。

ちょうど、女性ファッション誌が特集をした「サロネーゼ」が大流行した頃ですね。いっぽう私はといえば、そんなキラキラしている人に憧れるばかりでした。もちろん得意なハンドメイドを友人や知人に教えたり、作ってあげたりはしていましたが、それを「仕事」だと胸を張って言うことはできませんでした。

少し経って、mixiというSNSが流行りだし、勇気を出してブログを書いたりコミュニティに参加し始めました。すると私と同じように、特別な資格はなくても技術や知識は先生レベルの人や、資格を持っていても活かしきれていない人が、たくさんいることに気が付いたんです。

多くの女性の悩みを解決する手段が起業につながった

**――そのSNSで出会った同じような方々の思いが、ひとつのきっかけになったのですね。

山岡さん:そうですね、実際に「自分の得意を仕事にして“○○さんの奥さん”でも、“○○ちゃんのお母さん”でもない、自分自身を生きたい」、そう思っている方がたくさんいました。私の問題を解決したら、他の多くの方の問題も解決できて、沢山の方に喜んでもらえるじゃないだろうか……と考えるようになりました。

それからは、色々なことを思いついてはやってみて、失敗から学ぶことも多く、数年経った頃に、あの「ケイコとマナブ」を思い出したんです。やっぱり“肩書や資格”って、何か始めようとする人にとって、あると行動しやすくなるものだと。そうして「認定講師制度」を思いついたのです。

さらに私は、既にあるものではなく、“全くないハンドメイド”探しを始めました。だって既にあるものにはほとんど有名な「資格」が存在しますし、私よりもすぐれた人やすぐれた団体がありますから。

その3年後、自由に造形が出来て、接着力もあるのでいろんなものをデコレーションすることもできる粘土「wGlue」に出会いました。その「wGlue」を使ったハンドメイドを「グルーデコ®」と名前を付けて世の中に発表したのが、私の「起業」のスタートです。

ゼロから生み出した世界を広げることの難しさ

――とはいえ、それが速やかに世の中に広がるとは思えません。さまざまなご苦労もあったのではないでしょうか。

山岡さん:はい、なにせ今までにないものを作りましたので、資格や仕組みつくりはもちろんのこと、必要な材料や道具をはじめ、テキスト作りなど、本当にやることが山盛りでした。でもこれは確実に大きな波になると確信していましたので、ただただ楽しかったですね。やっぱり「好きを仕事」にすると大変なこと、苦労した事も、全部楽しいことに代わります(笑)。

また参考にできる資格や団体もあったので、そちらの企業などにコンタクトをとって「教えてください!」と門をたたいて、アドバイスいただけのも心強かったです。

――そのエネルギーと行動力に脱帽です。そんな中、協会をここまで大きくされるまで山岡さんを支えたものは何だったのでしょうか。

山岡さん:開業した当初から、私の想いは一貫して変わらず、「自分の好きを仕事にでき、社会貢献が出来ていると実感する人を増やすこと」、そして「自分が誰かの役に立っている!と思うことで、心の底から自分が好きと思える人を増やすこと」です。それはつまり「グルーデコの力で家庭と社会を幸せにする」ということにつながります。

ですから今、一般社団法人グルーデコ協会のコミュニティは、本当に素晴らしいコミュニティになっているんです。お互いがお互いを尊重し合いながら、切磋琢磨、いい意味で競争もしていて、何か協働することがあれば、誰かが誰かを助けることが当たり前のようになっています。それを日々感じていることが、私のやりがいだと思います。

思い立ったらすぐ行動! 失敗も全部見せる

――世の中の女性と社会への貢献から新たにひとつの素敵な世界が出来上がっていったのですね。それでは、今後の展望などもお聞かせください。

山岡さん:実は今、新しいことに着手し始めています。それはやはり、グルーデコ協会の講師の方々の何かのきっかけになればという思いからですね。

私が講師をしていたころから15年近く経つのですが、あの頃の環境とは大きく変わった今、自分が井の中の蛙、“浦島太郎”状態になっていると感じています。ですからグルーデコとは真逆の全く違うハンドメイドで、再度ゼロからチャレンジしてみようと考えました。そして、その私の奮闘ぶりをみんなに見てもらいながら、何か考えるきっかけにしてもらったり、一歩踏み出す勇気になったり、今の講師業のやり方を知ってもらえたりすればいいなと。

今もすでに沢山失敗をしているので、その姿もリアルタイムで各SNSで発信しています。せっかくやり始めたのだから、この新しいハンドメイドでも目立った存在になれると良いなと、日々もくろんでいます(笑)

――続々とアイデアが湧き、そして行動に移される、それが山岡さんの魅力なのだと感じました。最後に読者の皆さまにメッセージをお願いします。

山岡さん:私が起業をしたのは45歳の時です。そして今57歳でまた新しいことにチャレンジしています。それも「Z世代」以下の若い人に人気のハンドメイドで、です。若い人たちに、還暦前の私が果敢にチャレンジしているのです。

「好きを仕事」にするって、いくつになってもできることです。その年代年代で「好き」は変わるからです。「好きを仕事にする」ことに、年齢も、性別も、国籍も、環境もありません。だって「好き」は一人一人のものなのですから。誰のものでも、誰かに与えられるものでも、誰かに邪魔されるものでもありません

「好き」は最強です。みなさんも「自分の好き」をみつけてみてください。そして、「そんな自分が好きだ」と心の底から思う人生を過ごしていただきたいなと思います。