こんにちは、人事・戦略コンサルタントの松本利明です。私はPwC、マーサー、アクセンチュアなどで人事分野のコンサルティングを24年以上実施。独立後は企業向けにコンサルティングに加え、キャリアや働き方のビジネス書を出版や、キャリアのアドバイスをライフワークとして行う中で大きな気付きがありました。

現状の不満からの転職、漠然としたキャリアの不安等で悩む人は多いのに、年収300→400万、400→500万という「年収の上げ幅によって変わる転職の考え方や方法」「今の仕事で力を付ける方法」といったセオリーが知られていないことです。

転職は「右肩上がりに年収を上げる、一方的に進むだけ」ではありません。

いくつかの経験を組み合わせて大逆転するパターンも、実はセオリーの一つ。年齢で遅い、速いもなく、どんな変化が起きても変幻自在に活躍し、欲しい分だけ稼ぎ続けることも可能なのです。この連載では「年収ゾーンをポンと超えるためのキャリアのセオリー」を解説します。

年収300→400万円は居場所だけで実現できる

年収を300万円から400万円にあげることは難しくはありません。居場所=環境(業界/職種/会社)を変えるだけでこの年収ゾーンはクリア可能なのです。なぜなら、年収はスキルや経験より、環境(業界/職種/会社)が9割。

一言で言うと、「利益がでやすいビジネスに関わると、出にくいビジネスより年収水準は高くなりやすい」のです。

同じ人事部長の仕事でも、介護業界なら年収400万円、外資系コンサル業界なら1,500万円と差がつくのは、本人の能力や努力でないことは分かるでしょう。「年収が低い=仕事が楽で簡単」ではありません。むしろ業界全体の年収が低いと、ハードワークなので人手不足、退職者が多く、労務問題も多々発生し激務です。

洋服が好きだからアパレルの販売員になったら、激務な割に年収は低い。店長になっても年収300~400万円。特別なインセンティブ制がない限り、どんなに多くても550万円は超えません。

まして地方なら200万円台と「生活すらままならない」のは、アパレル事業自体が利益の出にくいビジネスモデルだから。どんなに高い年収を払いたくても払えないのです。逆に言うと、儲かりやすい環境(業界/職種/会社)に移れば、同じ仕事でも年収はポンとあがる、あがりやすくなるのです。

年収相場は簡単に分かる

では、年収相場を知る早道を知るにはどうすればいいか。転職エージェントのサイトを活用することです。業界別の年収トレンドは、転職エージェントの「業種別 総合年収ランキング」コンテンツなど、定期的に発表されるのでマクロの傾向が分かります。

職種や企業等、ミクロの年収水準を知るには、転職エージェントの求人をみるといいでしょう。検索すると沢山の求人情報が出てくるので、ざっと流れるだけでも年収トレンドは分かります。

狙うは成長している業界/職種/会社か、ライバルがいない会社

業界/職種/企業の年収水準を知ることができたら、どこを選ぶかです。300→400万円はボリュームゾーンで求人数が豊富な上、未経験でも受け入れてくれることが多いです。選ぶ基準は「成長している」、もしくは、「ライバルがいない/少ない」かです。

成長している企業は、組織もどんどん大きくなるので、ポストの数も多く、転職しやすいだけでなく、昇進等のチャンスを得やすいからです。

もう一つ、ライバルがいない/少ない会社。考えてみてください。成長企業でも「営業を100人一気に採用」のように同じ職種で大量に採用している場合は、ライバルだらけで勝ち残り競争が激しいことが想定されます。

第二新卒や若手・未経験可能の場合、営業職や事務職への転職オファーが多いのでライバルだらけのリスクがあります。なので、一つ確認しておくといいでしょう。

それは、どれだけ上が詰まっているかです。成長企業はある意味、同じ能力なら早い者勝ちで入社した方が、より高いポジションにつきやすいものです。

一昨年、昨年、今年入社した社員が、どの程度、昇進しているかを聞けば、自分にもチャンスがあるか、上が詰まっているので手足となる作業員が欲しいのか、見極めることができます。もう一つは、ライバルがいない/少ない会社を選ぶことです。

これは事例で解説しましょう。

入社3年目の正社員として働くMさんは、20代後半でヨガのインストラクター兼副店長。アルバイトの人員管理、店舗運営を含め、朝から夜遅くまで働き、休みは法定休日ギリギリ。会長や店長からの突然の指示には「休日でも関係なく」対応する、簡単にいうとブラック企業で勤務していました。

時間外勤務は自ら請求しなければ「みなし残業時間」の範囲でしか払われず、年収は200万円後半でした。ところが転職すると年収は400万円に。前職の年収水準があまりにも低かったので、その会社の最低基準である年収300万円で入社するも、入社半年後に店舗経理のリーダーになって年収も400万円になったそうです。

この転職先は「儲かっているアート系の会社」の販売部門の経理担当。アート系なので、美大を卒業したアーティスト志望のような人材ばかり入社してくるので、ヨガインストラクター時代に培った現場マネジメントや店舗管理の集計経験があるので経理業務に抵抗がなく、ライバル不在。積極的に仕事をすることが認められ、大幅年収アップに成功したと言います。

このように、儲かっている企業の本流はライバルだらけですが、本流の人が苦手なことは手薄になっていることが多く、ここを狙えば「ライバルがいない、少ない」ので活躍しやすく、年収アップもしやすいのです。

基軸になる専門経験を積み、次のステージへ備える

組織が大きくなり、昇進して年収があがらない限り、年収400万円の仕事で満足していると、永遠の作業員になってしまい、大きな年収アップは臨めません。年齢を重ねるとキャリアの賞味期限が切れてしまい、転職も難しくなります。

500万円にステップアップするためには準備が必要。自分の基軸になる専門経験を積むことです。その仕事で一人前以上になることです。

この一人前以上とは、その会社の中の基準ではなく、社外の業界や職種基準です。その会社の中で一人前でも、その会社の中だけでしか通用しないリスクがあるし、客観的に自分の実力が分からなければ、転職すべきか、残るべきかの判断も怪しくなります。

社外基準で一人前かを知るには、業界団体や同業/同職種が集まるコミュニティに参加することです。業界のトップクラスの人や一緒に成長していける同クラスの仲間をみつけ、交流することで、おのずと自分の実力を客観視できるようになります。

誤解があってはいけないのは、業界や職種のトップクラスになるのではなく、一人前プラスアルファ程度。年収500万は、一人前以上であればエントリー可能だからです。

そもそも、今の会社にいることで、業界や職種トップクラスになれるかも合わせて客観視する必要があります。どんなに今の会社の居心地がよくても、人生100年時代、何が起こるか分かりません。

転職エージェントに「大企業の部長ができます」というおじさんと同類項になったらお終いです。焦って転職する必要はありませんが、いざという時に多くの選択肢を選べるように用意することが心と生活の安心材料になります。

次回は、400万→500万円にステップアップする、転職の考え方、方法、今の仕事で力を付ける方法を解説します。