国税庁による「令和2年 民間給与実態統計調査」によると、日本の平均年収433万円で、年収500~600万円の人の割合は全体の10.2%となっています。

年収500万と聞くと、高い壁のように感じますが、男性に限ると年収500万円以上の割合は43.1%、さらに年齢別では、34~39歳の男性の平均年収は500万円を超える結果が出てきています。

コツを知れば誰でも年収500万円の壁は超えられます。今回は、年収500万円をサクッと叶え、次のステップにつなげるコツを解説します。

  • 年収500万を目指す

1.年収500万円は一人前の担当者以上になること

前回の記事にも示した通り、報酬は居場所=環境(業界/職種/会社)で決まる要素が高いのですが、報酬アップを全て環境任せにするのは危険です。年功序列で昇給や昇進する時代ではなく、評価されなければ報酬も上がりません。

年収400→500万円にアップするには、仕事で一人前になることです。一人前の段階は3つあります。

(1)指示された作業を期日までちゃんとできる(作業員レベル:目安年収250→350万円)
(2)関係者とやり取りして自律的に仕事ができる(一人前担当者:目安年収350→450万円)
(3)(2)に加え、後輩を指導しながら仕事を回せる(兄貴・姉貴分:目安年収450→500万円以上)
※「賃金構造基本調査:厚生労働省」をもとに著者の知見を踏まえて算出

感覚的にも分かるでしょう。大企業であれば一人前の担当者以上となり、プロジェクトメンバーに任命されたり、後輩の育成係や、チームリーダーになったり。中小企業なら管理職になるくらいの年収水準で年収500万円に到達できます。

「賃金構造基本調査:厚生労働省」によると、大卒40代で年収約500万円です。

当然、環境(業界/職種/会社)により、報酬水準の格差は生じますが、年収が高いところに転職しようとしても、一人前以上でなければ、「入社時点は低くても、これから結果を出せばすぐ上がります」と年収は低いままかダウンは避けられません。年収500万円以上を目指すなら、キャリアの戦略が必要になってくるのです。

2.基軸になる専門経験を積み、次のステージへ備える

組織の中で昇進して年収を上げず、年収400万円の仕事で満足していると、永遠の作業員になり、大きな年収アップは望めません。また、年齢を重ねるとキャリアの賞味期限が切れ、転職もしづらいことに。

まず、戦略的にキャリアの基軸となる「柱」を2つ手にいれましょう。1つは、自分の基軸になる専門経験。繰り返しになりますが、その仕事で一人前以上の専門性と自律的に仕事を前に進めていくスキルと経験です。

注意してほしいのは、会社内の基準ではなく「社外」、つまり業界や職種基準です。会社の中で一人前でも、そこでしか通用しないリスクがあるし、客観的に自分の実力が分からなければ、転職すべきか、残るべきかの判断も怪しくなります。

自分のレベルを知るには、業界団体や同業/同職種が集まるコミュニティに参加することです。業界のトップクラスの人や一緒に成長していける同クラスの仲間をみつけ、交流することで、おのずと自分の実力を客観視できるようになります。

誤解があってはいけないのは、「一人前以上のレベル」は業界や職種のトップクラスになるのではなく、一人前プラスαという意味。年収500万は、一人前以上であればエントリー可能だからです。

そもそも、今の会社に残って、業界や職種トップクラスの人材自分がなれるかもあわせて客観視する必要があります。ただ人生100年時代、何が起こるか分かりません。転職エージェントに「私は大企業の部長ができます」と言うおじさんになったらお終いです。

焦って転職する必要はありませんが、いざという時に多くの選択肢を選べるように用意することが心と生活の安心材料になります。自分の市場価値を高く見積もったり、逆に低く見たりしないよう、自分の市場水準を正しく知るため、他人の力をうまく借りてください。

3.自分のキャリアの「柱」をつくる

もう1つは、プロフィールの中で一生売りになり、どうどうと書ける、キャリアの「柱」になる実績を早期に作りましょう。実績を積み重ねてから一気にジャンプアップしようという考えには罠があります。

中小企業の人事で10年間実務を経験し、自信が生まれてから大手企業やコンサルタントに転職を試みても、転職市場では「中小企業の人事の専門家」と判断され選択肢が狭まってしまうリスクがあるからです。

逆に、まだポジションも年収が低い時こそチャンス。年収水準が高いくなってからよりも、低い時の方が「柱」となる企業や仕事に就きやすいからです。そもそもコアとなる「柱」が低ければ、いくつ掛け算しても高いキャリアに結びつきませんが、一つ高い「柱」があれば、それをテコにして沢山のキャリアの選択肢を得ることが可能になります。

選ぶべき「柱」の条件は、「No1企業」です。世界や日本で規模の一番でも、世界初でもいいです。なぜなら、No.1とそれ以下では同業であっても見える風景、人脈、仕事術が別世界だからです。また、一度No.1を経験すると、次もNo.1を狙いやすくなります。

私自身、新卒で入社した会社は日系でNo1の大手研修会社で、そのお蔭で次の外資系大手監査法人系のNo.1(アーサーアンダーセン、崩壊後はプライス・ウォータハウス・クーパースに移籍)、外資系NO.1人事コンサルティング会社(マーサー・ジャパン)、IT系/総合系NO.1の外資系コンサルティング会社(アクセンチュア)と続いて今があります。

アーサーアンダーセンがエンロンの不正会計事件で解散した時、PwCに移るまで数ケ月、No.4の会社に在籍しましたが、同じ外資系大手監査法人系の人事コンサルティング部門でも見えた風景が全然違いました。このように、若い時、早めにNo.1に移ると有利になります。

繰り返しますが、規模でなく「分野で一番」でも大丈夫です。スタートアップは「分野」で一番の企業が沢山あるので、自分の専門性を活かせそうならお勧めします。大企業ではなかなか難しい成長期の局面を体験でき、成長期であれば仕事を任せられることも多く、昇進も早く、思い切ったチャレンジもできます。

昨今はスタートアップが倒産になっても、会社ごと、最低でもNo.1の事業部は大企業に買収されることが大半です。ベンチャーに入社したら、外資系大手の大企業に買収されて、その一部門になり、処遇まで大企業レベルになったという話はごろごろ転がっています。

いかがでしょうか。そうは言っても、まだどんなキャリアを選んだらいいか、もやもやしている。という人も多いでしょう。そのモヤモヤ時間はムダです。次回はキャリアに関するモヤモヤをスッキリする方法を紹介します。