「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第31回のテーマは「思考の癖、直ることもある。」です。

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我がパートナーは大変合理的な考えだし、男らしさとかそういうのに全然気にしてないし、自分でなんでも決められるタイプ。私は彼のそういうところはすごく好きなのですが……なぜか僻みっぽいところがありました。

高級店や高級外車などを見ると「なんであんなのがいいんだろうねー」「こんな店全然いいと思わない」というようなことをわざわざ言ったり、冗談めかしてですがくさすようなことをよく言ったりしていました。私は本当に興味がないので「どうしていちいちそんなこと言うの?」と思っていました。

どうして気になるのかいろいろ聞いてみたんですけど、「そんなの冗談だよ」「別に高級外車が嫌いなわけじゃない」と言うのです。

まあ、確かに車種にかかわらずマナーの悪い人達はたくさんいるけど、エンブレムがあると相乗効果で「高級車に乗ってる」かつ「マナーが悪い」ということが印象深くなって、好ましい感情は抱けないというのはあります。私もマナーの悪い車はいやですし、違法に路上駐車しているのが高級車だと「使うべきところに金を使え!!!」とは思っちゃうのですが、私から見ると「ちょっと気にしすぎかなあ」と思うところもありました。

お店にしろ、車にしろ、家にしろ、私から見ると彼が「自分の趣味じゃない」から選択していないものを、わざわざくさす意味がわからない。なぜ……? と聞くと、「冗談だよ」と言うのです。私はあまり冗談として受けとめられないし、ネガティブなワードを言われるのは気持ちが良くないのでやめてほしいなと思っていました。

本当に僻んでいるのか、「僻みっぽく言う冗談」を口に出してるうちに癖になっているのか、どっちなのかよくわからなかった。本当に彼が高級外車が好きで、欲しいのに手に入らないから僻んでいるのならまだわかるのですが、彼は「本当に欲しいもの」のためには行動できるタイプだと思うのです。だから、高級外車は彼にとっては全然必要ないものでしかない。

私自身は、まったく高級ブランド品とか持ってないのですが、それについてコンプレックスを感じたり、持ってる人を妬ましいと思ったりすることはありません。本当に興味がないからです。本当に欲しかったらそれに見合うような生活をするように人生を選択していると思うし、私は私の人生のときめきを求めた結果が今の自分の生活だと思っているからです。

頻繁に高級店で食事できるような生活レベルじゃないけど、私は今の生活が自分の等身大の感覚に見合っていると感じているし、パートナーも自らの選択でそうなっている人だと思っているのです。

なので、私は「僻みっぽい冗談は好きじゃない」ということと、「自分が好きじゃないから選択していないものを、わざわざくさす必要はないんじゃないか」と話をしていました。すると、パートナーがだんだん僻みっぽいネガティブワードを言う機会が減ってきたのです。

本人は「自分が僻みっぽい」ということは自覚していて、それについては「そういうものだ」と思っていたらしいのです。でも、私が「そんな風に思う必要はないんじゃない?」「そもそも、それは欲しいのに手に入らないものじゃなくて、選択してないから手に入らないものだから、僻む必要ないんじゃない?」と言っていたら、相手も「そうかも」と思うようになり、意識して思考を変えるようにしたということなのです。

おおおお。すごい。人は変わるんだ。と思いました。

それにしても不思議なのは、パートナーは結婚する、家を買う、車を買うなどのライフステージの選択については自分で自由に決められるタイプなのに、「高級なもののシンボル」には過剰な反応を示していたところです。私は逆で、結婚などのライフステージについては「何歳までにアレしなきゃ」などと思い込んでいたのに、高級なものに関してはまったく何ら思い込むこともないし、自分がそれを持ってないことに引け目を感じることも僻むこともありませんでした。

夫婦って、お互いの価値観や心のパラメーターはバラバラだけど、一緒にいることで「あれ? こういう考え方をしなくていいのかも」と影響しあって楽になることもある。そういうのは、夫婦を続ける上でなんだか素敵で希望のある話だなと思っています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。