「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第32回のテーマは「夫婦の特性が違うのはしょうがないけど」です。

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  • 時には「諦め」も大事

これまでさんざん「我が家は話し合いで解決しています!!」と言ってきたわけですが、話し合ったり解決のための手段を考えたりしても、どうしても漏れ出る「差違」がありますよね……。

こういう差違にストレスがない生活って、どうやったらできるんだろうと思うのですが、この辺の唯一の解決方法は「諦め」なのかな~と思ったりもしています。

ストレスがあることすべてに「諦め」をしてしまうのは問題だと思うのですが、人それぞれ変えにくい特性というのがあるというのは事実。話し合って納得して、改善できることはして、できる努力は全部したうえで「まー、しょうがないか」と考える部分があるのは健全なことかなあと思っています。

我が家の場合、パートナーが「目の前で話していても全然聞いていない」というのがあります。というか、家族3人で話してるつもりだったのに、まったく聞いてなかった……みたいなことがあるので、息子と私がびっくりさせられるのです。

「お父さん、ねえお父さん……お父さん!!!!」みたいに声を掛けないと、「話しかけられてる」と認識できないこともしばしば。私なんかは3人で食卓を囲んでいたら、息子と夫が話していて私が関係ないとしても聞いているので、聞いてないこと自体にびっくりします。

でも「なんで聞いてないの?!」と言ったところで、「自分に話しかけられてる」と認識してない会話は聞いてない性質なんだから、しょうがないのです。こればっかりは、こっちが「あなたにも話していますよ」とちゃんとやらないと無理だということがわかったので諦めています。

とはいえ、やっぱり「私なら聞いているのに」とどうしても思っちゃうんですよね。「しょうがないんだから、諦めた」と心から思えるまでには、やっぱりストレスが溜まってしまいます。

だから「諦めて、こちらがきちんとアプローチすればすれ違わない」と思っていても「今の聞いてなかったの?! なんで?!」とか思ってしまうし、「まさか聞いてないとは思わなかった」みたいなすれ違いが起こります。

真の「諦め」までは道のりが……遠い……。と感じてます。

かといって、私にも計算が苦手だったりタスクを忘れっぽかったりと、性質的に「頑張って気をつけてるけど、努力ではなかなか改善できないこと」はあります。そういうところを「なんでできないんだよ!」と言われたら傷つくだけだし、どうにもできないのでそこはお互いさまなんですよね。

むしろパートナーのほうが、「こういうところはこの人は苦手」と認識すると諦めが早いというか、「だってしょうがないよね」というモードになってくれやすい。こういうところもやっぱり「性質」なので、差があります。

我が家では、私と息子は「目の前で話してる場合は、自分に話してなくても聞いている」タイプですが、そちらのほうが数が多いからって「そっちに合わせろ」というのも無茶だよなあと思っています。家の中から多様性を重んじていかないと、社会に多様性を求めたりもできない……と、「自分はできるけど、相手ができないこと」にいらついたり、ストレスに感じたりしないように意識して努力しています。……ついついしちゃうことはありますけど!

これを長年積み重ねていけば、いつかは「お互いのことがなんでもわかっている」「なにもストレスのない関係」になれるのかもしれないと思って、積み重ねていくしかないのかなあと思っています。

ちなみに私の両親はず~~っと夫婦仲が良いのですが、以前母親に「お父さんのここがイヤだと思うところはないの?」と聞いたら「ないわねえ」と言われて衝撃を受けました。それは「子どもにパートナーの悪口を言わない」という親の美学なのか? と思いつつ、親の夫婦喧嘩も滅多に見たことないし、本当に結婚50年以上ずっと仲良しなのでイヤなところなんてないのかもしれない……。

しかしその場合「相手が本当に素晴らしい人」なのか「許容量が大きい」のか、それとも両方なのか。たしかにうちの父が声を荒らげて怒ってるところを見たことがないし、不機嫌をまき散らして周りを威圧するようなところも見たことがありません。酒は飲まず、マメでおしゃべり好き。戦中生まれの年代の男性でこういう人は希有なのでは? と、子どもから見てもうちの父は「良き夫」のような気はします。

かたや母も細かいことは気にしないおおらかな性格で、他人への依存度が低くしっかりものの「良き妻」で、2人の相性はばっちりなのだろうなあと思っています。

我が両親は周りのお友達からも「理想の夫婦」と思われているようで、「ご両親が良いお手本で良かったですね」と言われたことがあるのですが……どうしてそうはならないんでしょうね?!

残念ながら、「こうすれば相手への不満なく夫婦が仲良くできる」みたいな秘訣を両親から得ることはできていません。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。