「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第30回のテーマは「別の考えの人と一緒にいるから面白い」です。

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  • 男らしさという「呪い」

「日本の子持ち男性の家事分担時間は、欧米諸国と比較するとワースト1位」みたいなニュースがよく流れていますよね。一方、我が家のパートナーは炊事係です。たぶん、日本人の子持ち男性の中では多く家事をしているほうだと思います。

育児負担は私のほうが多めですが、基本的には私がいなくてもなんとかなります。私は「お父さんの育児スキル」はお父さんしかいない時間の長さで計れると思っているのですが、今までで私が子どもと離れた最長記録は3泊4日です。

ひとり親家庭以外での「お父さんの育児スキル」って、上から下までかなり幅がありますよね。世の中には「ほんの1時間、買い物の間だけでも子どもを任せることができない」レベルのお父さんから、2人目出産での妻の入院を実家に頼らず乗り切ったり、仕事などでもっと長いことお母さんがいなかったりしても大丈夫なお父さんもいます。そう考えると、3泊4日は「わりと育児スキルがある」ほうかと思っています。

そういう話をすると、「いい旦那さんね~」という話をされることがあります。極端な長時間労働や単身赴任ではないのに、家事も育児も「妻にまるなげ」タイプの男性と、我がパートナーは何が違うのか……とよく考えるのですが、それはとにかく「男らしさに呪われていない」という、ただ一点だと思っています。

世の中には、「男らしさを誇示するためにあえて家事をしない」という選択をする男性がいるのだとか……。女性側も「男のプライドを傷つけちゃダメだから」と家事をさせなかったりするとのこと。家事を分担したほうが効率的だし、絶対そっちのほうがお互いの信頼関係が強固になると思っている我々夫婦からすると、「男らしさ」ってそんなに大事なの?! と不思議になってしまうのですが、世の中には多様な価値観があるんですよね……。

私とパートナーはお互いフリーランスで働いていて、2人ともたぶん社会の中で「自由なほう」だと思います。パートナーは新卒で3年半会社勤めをした後にフリーランスになり、今は一応自分の会社を持っています(とはいえ基本は1人で働いてますが)。私は一度も会社勤めをしたことがなく、短大卒業以来ずっとフリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターをしているという、それはそれで珍しいケースです。

パートナーは「同調圧力」などを全然気にしなくて、「社会的通念」とか「慣習」とかにも向いてない人です。なので、フリーランスのほうが合ってるタイプ。家族観も同様で、「子どもが欲しいから子どもを作る」「家も車も欲しかったら買えばいい、なくても困らなければいい」と、社会的な評価よりも常に「自分がどうしたいか」で決められる男なのです。

私も「自分がしたいこと」を自分で決められるタイプだと思って生きてきたのですが、なぜか「家族観」に関しては、結構無自覚に縛られていたんですよね。そして、なんで自分が「自由な生き方の選択」(会社に入らず、絵を描いてフリーランスで生きる)ができたのかとよくよく考えると、「自由なタイプというのもあるけど、私が三女だったからじゃ……?」と、30代もだいぶ過ぎてから思ったことがあります。

うちは姉達がしっかりしているので、「きょうだいで3番目の娘」は家族の中でとくに社会的な役割を求められていないポジションでした。そういう環境だったからこそ、仕事でも好きな選択ができたのかもしれない。そしてパートナーは長男

この手の価値観は親の価値観を踏襲する傾向が強いため、親の影響なしでは語れないと思うのですが、親が「好きに生きろ」という方針だとしても、「長男」「三女」ではちょっとニュアンスが違うような気がします。そう考えると、我が家よりパートナーの実家のほうが「親からの期待」とか「社会的な呪い」が少ない環境だったのかもしれないなあと思うのです。

なので「自分は自由で、社会的な呪いは少ないほう」だと思って生きてきたけど、パートナーと一緒にいると「やだ……私、まだまだ呪われてる?!」みたいな気持ちになることがあります。うちは離乳食をパートナーが作ってくれたのですが、その時「オレが炊事係なんだから、離乳食も作るよ」と提案されるまで、私は「自分が作る」と思い込んでいたのです。提案されて初めて「あっ、お父さんが離乳食作ってもいいんだ!」と気が付いたという……。

夫婦の価値観の違いは、揉めごとの理由になったりもしますが、相手の考えに影響されて楽になったりポジティブに考えられたりすることもあるわけで、そういうことも夫婦にとっては大事なことだよなあと思います。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。