「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第3回となる今回のテーマは、「先回りしてケアしない」です。
結婚願望の強い女性には、生真面目なタイプが多いような気がします。
「ちゃんとした生活をしたい」→「ちゃんと結婚したい」→「結婚したからにはちゃんとせねば」みたいな感じで自ら「正しい妻」にハマりに行ってるような人が多いような気が……。
っていうか、すみません。それは初婚の私のことです。
家事をこなし、夫のケアをして、将来のことを考え、そして仕事もする。それが現代に生きる、正しい女性の姿! みたいに思ってました。はい。
で、実際にやってみたら「なんで夫は家事から仕事から将来から人生全般にぼんやりしてて、全部私が取り仕切ってるの……」と、あまりの不均衡っぷりに絶望し、離婚に至りました。
でもそれ、別に元夫は悪くないと思うんです。勝手に「正しい人生」を歩もうとしていた私が完全に空回りしていただけで。
離婚のときに「価値観が合わないので別の道を生きましょう」とプレゼンしたらあっさりOKが出て離婚となったんですが、元夫は「正しい人生」なんか歩もうとはしてなかったわけなんですよね。ただただ、自然体だっただけで……。そこで私は反省して、再婚生活ではまず自分に対して「正しさを求めない」ことにしました。
たとえば、私は掃除や洗濯は嫌いじゃないのでやります。でも、炊事はどうでもいい。「正しい妻は栄養バランスのとれた食事を毎日手作りする」という思い込みがなくなったら「あ、私は食べるものは本当はかなりどうでもいいタイプなんだ」と気が付いてしまい、炊事が全然できなくなっちゃったのです。そしたら、現パートナーは「じゃあオレがやるよ」ってやってくれるようになりました。
そこで、「ああ、全部自分でやらなくてもよかったんじゃん」と思えるようになりました。そんなわけで、肩の力を抜きまくって、得意なことやこだわりのあることは自分がやって、パートナーができることはやらない。任せるという生活をしています。
なので「どうやってパパが協力的になってくれるの?」という質問をされたら、「私がやらないから」と答えています。
そもそも、「どうやってパパにやらせるか」と考えてる時点で「家庭にあるタスクは自分のものであり、自分に責任がある」と考えているような気がします。なので、まず「これは私がやらなくてもいいのでは」と考えてみるところから始めることをオススメしています。
「でもそんなことしたら、家庭がまわらない!」と思う人もいるかもしれません。前回も言いましたが、やっぱり女性には「もしもこうなってしまったらどうしよう」という「先回りの不安」を持つ人が多いですよね。
「私が頑張らなかったせいで、家庭にダメージがあったらどうしよう」という不安にせかされて、「ちゃんとしなくちゃ」と頑張り過ぎてしまう人が多いように思います。でもそれ、妻一人の責任じゃないですよね。夫婦の問題ですよね。
だから、相手を困らせてもいいんじゃないでしょうか。相手が困って「どうにかしてよ」と言ってきたら、「自分でどうにかしてみよう」とタスクを渡してもいいんじゃないでしょうか。そのときはじめて相手が「家庭の当事者」になるんじゃないかと思います。
頑張って我慢して抱え込んで、「なんで私ばっかり!」と怒り出しても、相手はもう全部タスクを引き受けてもらっているわけで、「あー、怒っててイヤだなあ(でもタスクは全部こなしてあるから困らない)」っていう状況になりますよね。だから「怒ってる間だけ我慢してれば、後は楽」ってことになっちゃう。
怒ったり、イヤになったりする前に「あれ、これ私がやらなくていいのかも」とやらない選択をするのはいかがでしょう。
すべてのタスクをこなしてニコニコしている、スーパー人間もこの世にはいるかもしれません。でも、いっぱいいっぱいでこなして疲れて怒ってる人になるくらいなら、私はだらしないと思われても、タスクをいくつか放棄して、ニコニコしている人のほうがいいなあと、今は思っています。
著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。