「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第177回のテーマは「意識や行動は練習で変えることができる」です。

これまでのお話はこちら

パートナーは基本的には面白くて優しい人なのですが、瞬間的にキレることが多いタイプの人でした。これは個人的な付き合いが始まる前、仕事相手だったときからそうでした。というか仕事をする前に、「俺はすぐ怒るけど、別にその時だけだから気にしないで」と本人からも言われたのです。自覚は前からある様子……。

実際に仕事を始めると、本当に私からするとどうでもいいことでキーキー怒っていました。私に関係ないことでは、「本当にどうでもいいことで怒る人なんだなあ」と思いましたが、もちろん私にも些細なことでキーキー怒っていたので、「なんだこいつ」とは思っていました。

と、この話をすると「どうしてそんな人と付き合って結婚までしたんですか? 」と言われてしまうのですが、基本的には面白くていい人であるという評価なのと、私が言い返せるタイプだから、というのが大きいと思います。

私はかなり「言いたいことをその場で言える」タイプの人間で、理不尽だなあと思ったら「理不尽なんですけど」と言ってしまいます。パートナーは自分がおかしなことを言っている自覚はないのですが、かといって逆上することはほとんどなく、「あれ? そうなんだ……」とわりとそのまま言葉を受け止めてくれることが多いです。そして冷静になってから謝罪をしてくれることがほとんどです。なので私も、「わかってくれたなら、まあいいか」となってきたので、今でも関係が続いているのだと思います(それで済まないような大きな喧嘩もたくさんしてきましたが!! )。

我々は結婚して、来年で10年になります。仕事相手だったころから「なんでそこで怒る必要あるの? 」的なツッコミは入れてきたので、かれこれ14年くらいずっと「それ怒る必要なくない? 」と伝えていることになります。

付き合い始めのころ、離婚の傷を引きずっていたパートナーは、今よりもずっと情緒不安定でした。とはいえ、こちらも離婚の傷が癒えていないのに、人のケアばっかりできない……と思っていて、電話などでキレられると、「ああ……めんどくさい」とブチッとそのまま通話を終了。何度も連絡されるのはイヤなので電源を切って放置、というようなこともしていました。

当時私よりも孤独に弱く、依存心が強かったパートナーは、「キレる」→「拒絶される」→「謝罪」というパターンを何度も繰り返していました。その度に、こちらも「なぜそこで怒るの? 」「それって必要なくない? 」という話をずっとしてきました。「そういうコミュニケーションは誰にとっても良くないよ」と伝えること10年あまり……。最近はだいぶ理解が進んだようで、前のようにキレることが減りました。

パートナーは自分の思った通りじゃないことに、いちいち腹を立てていました。自分の歩く動線に何か物があったら、「なんでここにあるんだ! 」と怒り、自分の思った場所に置いていなかったら「なんでないんだ! 」と怒っていました。私としては、「私はあなたじゃないんだから、あなたが思った通りにすることなんか無理です」以外に言えることはありませんでした。

私は一緒に暮らしている相手が別の人間なんだから、相手の都合で何か変わっていたとしても当たり前だとしか思わないタイプです。思ったところにものがなくて困ったら「あれはどこにあるの? 」と聞けばいいし、自分の動線にものがあったら避けます。リビングに本来あるべきでないパートナーの私物があれば、パートナーの部屋に移動させるし、置かれると困るものがあれば「ここに置かないでね」と言います。

なので、パートナーがいちいち「なんでこうなんだ! 」と怒っているのを見て、「むしろなんで怒るの? 」という感じでした。「怒らないで伝えて」と冷静に伝えることもあれば、冷静に言っても全然伝わらないから「いちいち怒るなって言ってるでしょ! 」とこちらも応戦することもあり、手を変え品を変えアプローチを続けてきました。

「自分の思ったとおりじゃない」→「怒り出す」というのは、思考の癖です。本人にとっては当たり前の反応なので、とくに違和感がないんですよね。その思考の癖を「自分の思ったとおりじゃない」→「冷静に対処する」と変えるのは、本人が意識しないとできません。

指摘され続け、本人も「なんで怒るんだっけ」「冷静に対処したらいいのでは」と思うようになり、意識して練習を続けていたようです。そして最近「他人は自分じゃないんだから、自分の思った通りじゃなくてもしょうがない」という考えに変わってきたようです。

本人にとっても、一緒にいる人にとっても、そっちの考え方のほうがいい。という成功体験を積んでいけば、徐々に思考の癖を変えることができる。それを、パートナーが実際にやって変わっていくのを見るのは、一緒に暮らしている身としてとても嬉しいです。困ったところがあっても、「それは困るので変えてほしい」と伝えたら「そうなんだ」と理解し、変えていけるというのは、何よりも私にとては高評価ポイントになります。そして「この人と一緒にいてよかったな」と思えます。

まだまだ問題がなくなったわけではないですが、こうやってお互い少しずつ、相手にとって快適な関係を作っていけたらいいなと思っています。

新刊『骨髄ドナーやりました!』

(少年画報社刊/1,045円)
初代骨髄バンクアンバサダーの俳優・木下ほうかさんも「『ちょっと人の命を助けて来るから!』。こんなカッコいいことを言い放つお母さん。私はこんな最強マンガを待っていました」と絶賛する書籍が発売!! 日本骨髄バンク完全監修の爆笑必至の骨髄ドナー体験マンガです!
夫婦揃って献血が好きで、骨髄ドナーに登録しているさるころとノダD。2人は事実婚・共働きで息子を育てています。夫のノダDは今までに3回骨髄ドナーにマッチングをしていて、3回目で骨髄提供をしました。そんなある日、骨髄バンクから届いた書類をよく見ると、なんと今度は妻のさるころが骨髄ドナーにマッチングしたお知らせでした……! 非血縁ドナーのマッチング確率は数百~数万分の1とも言われており、骨髄ドナーは登録してもマッチングするとは限りません。そんな中、なんと夫婦で2年連続ドナーを体験。そんな激レアなn=2のリアルガチな体験談をあますことなくお届けします! 詳しくはコチラ

著書『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』

(幻冬舎/1,100円)
全編書き下ろしエッセイマンガ!
バツイチ同士の事実婚夫婦にめでたく子ども誕生! ここから「家事と育児をどうフェアにシェアしていくか」を描いたコミックエッセイです。家事分担の具体的な方法から、揉めごとあるある、男の高下駄問題、育児はどうしても母親に負担がいってしまうのか、夫のキレにどう対処する? などなど、夫婦関係をぶつかりつつもアップデートしてきた様子を赤裸々に描きます。くわしくはコチラ

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。